Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
骨細胞による造血制御機構を解明すべく、骨細胞特異的にジフテリアトキシンレセプターを発現させたDMP1-DTR Tgマウスを用いて実験を行った。15週齢の野生型とDMP1-DTR Tgマウスにジフテリア毒を投与し骨細胞除去を行い、三週間後に骨髄ならびに末梢血を採取して血球の推移を観察した。フローサイトメトリー、CFU-Cアッセイ並びにLong term bone marrow cultureの結果から、骨髄と末梢血のリンパ球に変化が見られた。CFU-Cアッセイと競合的移植実験の結果から、リンパ球の変化は骨髄内の造血幹細胞に起因するものではなかった。リンパ球の変化におけるCXCL12の関与を調べるため、ELISA法にてタンパク測定したが、変化は見られなかった。骨組織切片を作製しメイギムザ染色、HE染色により観察したところ、骨細胞除去により骨髄内の脂肪増加が確認された。骨髄外液を用いたオステオカルシンの測定では骨芽細胞の機能低下は見られなかった。これらの現象が、骨細胞除去によるFGF23の低下に伴う全身性の代謝異常によるものなのかを明らかにすべく血中FGF23、リンおよびカルシウムを測定したところFGF23は低下していたが、リンとカルシウムの変化は見られなかった。これらの結果から、骨細胞を含めた骨代謝の異常が免疫細胞に影響を与えることが分かりつつあり、今後そのメカニズムを詳細に解析していく予定である。骨と造血による免疫制御機構の解明は、骨疾患ならびに血液疾患における新たな予防や治療法の確立につながる、臨床的にも意義の大きなものである。