Research Project
Grant-in-Aid for Research Activity Start-up
睡眠覚醒調節機構の解明は、睡眠障害対策に応用可能であり、学術的価値ばかりでなく社会的価値も高い。申請者の研究グループは内因性睡眠物質プロスタグランジン(PG)D_2による睡眠調節機構を約25年間にわたって証明してきたが、睡眠を積極的に誘発する神経機構は未だ明らかでない。本申請研究ではPGD_2の下流シグナルから、睡眠誘発に関わる神経核を同定することを目的とした。PGD_2はアデノシンおよびアデノシンA_<2A>受容体を介して睡眠を増加させることが報告されている。そこでA_<2A>受容体作動薬をラットに投与し、増加した睡眠のプロファイルを調べたところ、1回あたりのノンレム睡眠量の増加に加え、覚醒時間の断片化およびノンレム睡眠回数の増加が観察され、A_<2A>受容体の活性化が睡眠の誘発および促進を生じることが示唆された。続いてPGD_2およびA_<2A>受容体作動薬によって活性化される神経核の一つであるbed nucleus of the stria terminalis(BST;分界条床核)を神経毒であるイボテン酸により破壊し、脳波および筋電図の測定により睡眠量の変化を調べた。その結果、破壊後14日後において、BST破壊ラットは対照群と比較して1日のノンレム睡眠量が64%、ノンレム睡眠回数が55%まで有意に減少し、1回あたりのノンレム睡眠量は変化しなかった。同様の傾向は破壊後28日後のラットにおいても観察された。これらの結果は、BSTが生理的な睡眠の誘発において重要である可能性を示唆している。