Research Abstract |
研究の目的は,生徒が学んだ事柄をふりかえりながら学習の深まりを実感し,さらなる学習への洞察や探求が生まれるような代数教材と学習プリントを開発し,授業実践とその分析をもとに,開発した教材や学習プリントの効果を考察することである。研究の方法は,中学校数学から高等学校数学への接続を促す単元「平方根」の学習に着目し,この単元に関わる教材や学習プリントを開発すると共に、単元「平方根」での生徒の数学的活動の特性の分析から,開発した教材や学習プリントの効果を考察する。なお,単元「平方根」での生徒の数学的活動の特性を分析するために,数学的活動の目的に関わる3観点「理解を深める,関連性を深める,扱いを拡げる」と,Kieranによる代数的活動の特徴に係る3観点「生成の活動,変形の活動,内省の活動」を組み合わせた「数学的活動を捉える枠組み」を設定し,この枠組みに基づく考察を進めた。単元「平方根」の学習は23授業時間で行われ,その展開の概要は次の通りである。(1)有理数から√50に接近していく活動,(2)平方根を含む式の計算を有理数における計算との類似や相違に着目して行い,その意味を理解する活動,(3)平方根を数として認識する行為を深める活動,(4)平方根に関する探求を通して,使われている数学を意識したり,関連する数学の内容を洞察する活動。単元「平方根」での教材と学習プリントは,折り紙や葉書などの具体物を用いた行為の意味を考える活動や,数式処理電卓を積極的に活用して実数としての平方根の数理を探究する活動などの数学的活動を促すように開発された。単元「平方根」での数学的活動を通して,生徒は数の拡張に関する学習を促したり,これまで学んだ事柄を関連づけたり,深めたりしていた。また,学習プリントの積極的な活用により,生徒と学習の中に,これまでをふりかえったり,これからを展望したりする姿勢の高まりと家庭学習と授業との往還の促進が見られた。
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