Research Abstract |
MRSA感染症治療薬のリネゾリドは副作用として、血小板減少が好発することが示されている。我々は以前、リネゾリドにより誘発された血小板減少と腎機能障害の程度との間に相関があることを明らかにし、クレアチニンクリアランス(Ccr)が60mL/min以下もしくは尿中尿素窒素(BUN)が23mg/dL以上のときに、高頻度で血小板減少が起きることを示し、腎機能障害患者は腎機能正常患者に比べ、リネゾリド投与により、有意に血小板減少が起こりやすいことを報告した。しかし、その発現要因については未だ明らかになっていない。そこで、本研究では、リネゾリドを投与した患者の血中濃度を測定し、腎機能と薬物動態パラメータの関係を評価し、さらに、血小板減少の発現要因について検討した、 まず、リネゾリドのクリアランスに影響を与える因子について検討した。その結果,Ccrの低下に伴って,リネゾリドのクリアランスは低下し,両者の間に有意な相関関係(r=0.933、p<0.01)が認められた。また,BUNも,有意差はなかったものの相関関係(r=-0.567)が示された。一方,年齢、体重、肝機能(ASTおよびALT)とリネゾリドのクリアランスは相関しなかった。次に、リネゾリドの血中トラフ濃度または血中濃度時間曲線下面積(AUC_<24h>)と血小板減少の発現について調査した。トラフ濃度が6.9~7.2μg/mL、AUC_<24h>が294.3~323.6μg・h/mLの場合には血小板減少は起きなかった。しかし,トラフ濃度が14.4~39.1μg/mL,AUC_<24h>が513.1~994.6μg・h/mLの場合には血小板減少が起き、リネゾリドによる血小板減少は濃度依存的に発現することが分かった。以上の結果より、腎機能障害患者においては、リネゾリドの排泄遅延により、血中濃度が上昇し、それに伴って血小板減少が起きている可能性が考えられた。
|