Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
近年、アフリカではコメの消費量が著しく増加しており、その増産が求められている。しかしながら、ケニアを含む東アフリカの高原地帯では、出穂時の低温障害により収量が低く抑えられている。これに関して我々は 、栄養生長期に軽微な乾燥ストレスを与えることにより、出穂期が2週間以上遅延するイネ系統を自ら見出すことに成功した。そこで本研究では、まず、1)どの時期の、またどの程度の乾燥ストレスに最も良く反応してその出穂遅延能力を発揮するのか、また、2)その能力を決定する原因遺伝子は何かを明らかにし、さらに、3)本原因遺伝子の発現・機能解析により、本系統の出穂期遅延メカニズムの解明とその育種利用を目指す。
本研究では、Nested association mapping population (NAM)集団を解析材料に用いた。通常は、注目形質に関わるQTLを同定する際、2品種間のF2やRecombinant inbred lines (RILs、組換え自殖系統群)を材料とした解析が主流である。しかし、親品種の遺伝的背景によっては目的のQTLを検出できない場合も少なくない。一方、近年の技術進歩によりDNA変異をゲノムワイドに調べることが容易になり、多くの品種を対象に注目形質QTLを検出することが可能になった。しかし、イネでは潜在的な集団構造の特徴により偽陽性等が生じやすく、その成功例は限られている。これに関して、この問題はNAM集団、即ち複数の既存品種と一つの共通親との交雑から得られた複数組み合わせのRILsを解析に用いることで回避できると期待される。そこで本研究では、7組合せのRILsからなるNAM集団(計約1000系統)を用い、圃場条件下にて異なる土壌水分環境下にて栽培し、次年度の解析に必要な出穂期データを取得した。最終的に、異なる水管理により誘導される出穂遅延遺伝子座を計10個以上検出することに成功した。次に、これらがこれらが組み合わさることで得られる影響を解析した結果、より大きく出穂期を変動できることを見出した。このことは、これらの遺伝子座を効果的に組み合わせることにより、異なる水管理を通して出穂期を調節しうること、ならびに本手法により冷害回避を可能にする品種育成の可能性を示すものであり、今後の展開が大いに期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
All 2022 2021
All Journal Article (1 results) (of which Int'l Joint Research: 1 results, Peer Reviewed: 1 results, Open Access: 1 results) Presentation (1 results)
Journal of Agronomy and Crop Science
Volume: 00 Issue: 6 Pages: 00-00
10.1111/jac.12524