Physical processes involved in the formation and fluctuation of the baiu front
Project/Area Number |
21H00626
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 04010:Geography-related
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
植田 宏昭 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70344869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 明治 新潟大学, 自然科学系, 教授 (20371742)
高谷 康太郎 京都産業大学, 理学部, 教授 (60392966)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,810,000 (Direct Cost: ¥3,700,000、Indirect Cost: ¥1,110,000)
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Keywords | Baiu front / Pacific High / ITCZ / Monsoon / Cold vortex / 令和3年8月大雨 / インド洋 / 太平洋高気圧 / 梅雨前線 / 水蒸気フラックス / テレコネクション / 寒冷渦 / アジアモンスーン / 対流ジャンプ / 令和2年7月豪雨 / ラニーニャ / 大気海洋相互作用 |
Outline of Research at the Start |
梅雨前線がなぜ日本付近に6月から7月に出現し、それら がどのようにグローバルな気候諸現象(モンスーン、オホーツク海高気圧、太平洋高気圧、 偏西風など)の影響を受けて消滅するのかという梅雨前線のライフサイクルに関する知見を整理・統合する。本研究では梅雨前線の形成に小笠原気団とオホーツク海気団がどのように影響するのか、熱帯、 中緯度、高緯度の気候・気象を専門とするアプローチ横断型の研究チームを結成し、モンス ーン、偏西風、高緯度寒気の寄与を包括的に論じることで、気団形成の要因解明と概念の空 間的拡張を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
2020/21年の冬の前半と後半で東アジアの気温偏差が負から正へと転じた要因について、熱帯対流活動の観点から調査した。低温であった冬前半はインド洋東部から南シナ海を中心に熱帯の対流活動が活発であった。これに対する熱源応答としてチベット高原南部から中国南部に高気圧偏差が形成され、定常ロスビー波の伝播によって北日本上空に低気圧偏差が生じた。冬後半には、活発な対流活動の中心はフィリピン海へと移動し、高気圧偏差は日本の南へと位置を変えた。この結果、寒気の流れが変化し、東アジアは暖かくなった。線形傾圧モデル(LBM)を用いて南シナ海のみとフィリピン海のみに熱源を与えた結果、それぞれ冬前半と後半に対応する循環応答が得られた。研究成果は、京都大学防災研究所一般研究集会2022K-05 「大気海洋結合系の変動・変化と広域・持続的な異常天候」異常気象研究会2022にて報告した。 また、梅雨前線の気団として重要なオホーツク海の大気海洋相互作用について、診断的に明らかにした。具体的には、オホーツク海全域の海氷面積が多い年(多氷年)/少ない年(少氷年)をそれぞれ抽出し、海氷密接度(海氷に覆われている海面の割合)や大気・海洋の様子を比較した。地上の気圧配置を比較すると、多氷年にアリューシャン低気圧が強まっていることが明らかになった。同時に、シベリアからオホーツク海上にかけて、寒気の蓄積が多くなっていることも計算により明らかにした。こうした高緯度からの寒気流の強化は、オホーツク海での海氷の生成・維持に有利に働くと考えられることを示した。研究成果は、Ueda et al.(2023)として論文化するとともに、筑波大学と北海道大学での共同プレスリリース「高緯度と熱帯からの遠隔影響がオホーツク海氷の年々変動を引き起こす~環オホーツク気候システムの端緒を開く~」を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「令和3年8月の大雨」の要因の特定をさらに進めている。具体的には、高渦位の注入に伴う対流圏下層付近の循環変化について、PV-inversion法を開発中である。この手法を援用することにより、中高緯度と熱帯の間での双方向フィードバック過程を明らかにしている。 梅雨前線の北上を引き起こす現象として知られているConvection Jump(Ueda et al. 1995)については、熱帯域での大気海洋相互作用の視点で進められてきたが、中高緯度からの影響を論じた研究は少ない。そこで本課題では、偏西風帯でのロスビー波の砕波に伴うhigh-PVの貫入など中高緯度の現象の熱帯・亜熱帯への影響を想定し、high-PV貫入と関係のある太平洋中央トラフの構造解明と寒冷渦との関連に着目して診断的解析を実施している。 冬に向かう季節の移行期に日本付近に長雨をもたらす現象として、秋雨前線帯があげられる。梅雨前線帯を規定する環境場については既往研究により、幾つかのメカニズムが示唆されているが、秋雨前線帯に関しては議論が不十分である。そこで本研究課題では、秋雨前線帯を規定する環境場について、梅雨前線帯との比較から調査を行なっている。現在のところ、大気循環場の合成解析を行い、梅雨前線帯と秋雨前線帯の環境場に関する多くの差異を特定している。秋雨前線帯を規定する要因としては、(1)北太平洋高気圧の北東シフトと中国東部の高気圧の発達、(2)大陸と海洋の温度コントラストの顕在化、(3)温度移流場の変調、の3点を想定して研究を実施している。とりわけ今年度の成果として、日本付近における暖気移流と朝鮮半島付近における寒気移流が日本付近の秋雨期の降雨に影響を与えることが示唆されており、継続的に調査を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年8月豪雨については、熱帯からの遠隔強制と高緯度寒気の流入の相乗効果に着目し、時系列としての相互補完関係を明らかにする。また、開発したHigh-PV法、共同研究者が開発した寒冷渦指標を用いて定量的な解析を行う予定である。 Convection jumpについては、診断解析の確度を高めるため、Qベクトル解析により、砕波に伴って亜熱帯へ貫入したhigh-PVによる循環の変化と対流ジャンプ領域における力学的な上昇流の間の関係性を調査する。 秋雨前線については、海洋からのフィードバックを明らかにするために、数値モデルを用いた海面水温固定実験など、新たなアプローチを検討する。 梅雨前線の出現と維持においては、①大規模な大陸と海洋間の温度コントラストに駆動される大陸性アジアモンスーンの役割、 ②西太平洋上の海洋性モンスーンに伴う水蒸気供給(Ueda and Yasunari 1996)、さらに③偏西風の南北分流やブロッキング現象に関係するチベット高原の寄与(Yoshikane et al. 2001;Kitoh 2004)などの観点から様々な研究が提出されているが、個々のプロセスがどのように影響を及ぼしあいながら季節進行していくのかという連鎖的相互作用は明らかになっていない。この関係を実験的に明らかにするために、MRI-ESM(全球大気海洋結合モデル)を用いた地形改変実験を実施する予定であり、そのための計算を開始している。
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Report
(2 results)
Research Products
(11 results)