Project/Area Number |
21H01463
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 22060:Environmental systems for civil engineering-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
越後 信哉 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (70359777)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥14,950,000 (Direct Cost: ¥11,500,000、Indirect Cost: ¥3,450,000)
Fiscal Year 2023: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,890,000 (Direct Cost: ¥5,300,000、Indirect Cost: ¥1,590,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
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Keywords | 消毒副生成物 / 分岐反応 / 多段反応 / 溶存有機物 / 分画 / 反応論 / ハロ酢酸 |
Outline of Research at the Start |
フェノールがと塩素との反応について,多段かつ分岐する反応を中間体を含め体系的に明らかにし(「全分解」),消毒生成物の生成に関する反応の文法を示す。2021年度は,反応の各段階で塩素処理→分画を繰り返す「反応-分画-反応」法を確立し,並行する反応を物理的に分離する。さらに,生成物の網羅的解析を行う。2022年度は,「反応-分画-反応」法を分取スケールにスケールアップし,中間体の精密質量分析による同定を行う。あわせて,複数の13C標識化フェノールと塩素の反応から,各反応生成物と炭素の位置の関係を明らかにする。2023年度は,中間体濃度の定量と構造の確定を経て,フェノールと塩素の反応の全貌を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
フェノールは水道中の塩素処理により、トリクロロ酢酸(TCAA)が生成することが知られている。しかし、浄水処理中の溶存有機物(Dissolved Organic Matters, DOM)の中でも比較的単純な化合物であるフェノールに関しても塩素との反応でどのような中間体が生成され、TCAAに至るのか十分に理解がなされていない。これは反応が多段かつ分岐する為である。そこで、フェノールと塩素との反応においてどのような中間体が生成するのかを分離する手法を探索した。 まず、標識化していないフェノールと 13C で標識化したフェノールを用いて塩素処理におけるフェノール分子間の反応について確認した。その後、フェノール濃度 3-300mgC/L に関して TCAA 生成能試験及び 2 段階塩素処理の際の TCAA 生成濃度への影響評価を行ったのちフェノールと塩素の反応における中間体生成に最適な塩素注入率を探索した。アセトニトリルとメタノールで TCAA 生成反応及び保存への影響を比較し HPLC 分画の際の移動相をアセトニトリルに決定した。 次にフェノール濃度 300 mgC/L を対フェノール濃度で塩素注入率 1:4、1:5、1:6 で塩素処理し 15-24 時間後に HPLC を用いて分画を行った。その後得られた各画分に関して再度最終生成物に至る大過剰の塩素濃度を添加し各画分に関して生成 TCAA 濃度を調べた。更に HPLCによる UV スペクトル及び精密質量分析によるクロマトグラムを各画分と対応付けることにより TCAA の生成には関与しない物質の一部を分離することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
反応ー分画ー反応法により,中間体を分離する方法を確立することができた。分画時にpHを変化させることで中間体が消失する減少や,分画時に使用する有機溶媒の種類によっては,中間体が分解あるは変質する等,分画における注意事項を整理することができた。 また,十分な中間体濃度を得るために,反応を高濃度条件で行うことを検討したが,実際の浄水処理における中間体や副生成物と概ね同様のピークパタンが確認され,高濃度条件で実験を行って差し支えないことを確認した。 また,分取スケールでの分画のためのシステム構築を行った。 これらの成果から,フェノールの中間体を推定する技術的基盤はほぼ整理できたといえ,概ね慎重に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立した反応-分画-反応法と精密質量分析法の組み合わせにより,中間体の同定を進める。一部の中間体にはついては異性体が存在する可能性等確度の高い推定に至らないものがあることが想定される。そのような物質について,分取クロマトグラフィーを繰り返し,当該画分を十分量得る。その後,窒素吹き付けにより乾固した後重水に再溶解し,プロトンNMRにより中間体の構造を推定する。なお,13CNMRについては感度の問題から,積極的利用は考えていないが,やむを得ない場合には13C6-フェノール(すべての炭素が標識化されたもの)を用いて,感度の向上(100倍の向上が期待できる)を図る。 同定した中間体と最終生成物について,経時的な濃度変化を測定し,得られた反応メカニズムの情報に速度論・両論的情報を付加する。標準品が得られるものについては,LC-MS/MSやGC/MSを用いて,標準品が得られない中間体・最終生成物については,荷電化粒子検出器(新設を希望)により濃度を推定することとする。 最後にこれまでの検討で得られた情報を統合し,フェノールの塩素処理による分解過程を体系化する。体系化にあたっては,開始物質(フェノール)分子中の炭素と最終生成物の炭素の位置関係(例:ortho位の炭素が何のどこに変換されるか)を明示した上で,各最終生成物に至る中間体を示す(定量的情報を含む)。あわせて,それぞれの両論関係を付記した上で,各反応ステップでの反応メカニズムを記述する。
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