磁性ナノ粒子-生体分子間相互作用による磁気緩和の変調と高感度バイオセンシング
Project/Area Number |
21H01760
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 28030:Nanomaterials-related
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
北本 仁孝 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (10272676)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,590,000 (Direct Cost: ¥4,300,000、Indirect Cost: ¥1,290,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,070,000 (Direct Cost: ¥3,900,000、Indirect Cost: ¥1,170,000)
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Keywords | 磁気バイオセンシング / 磁性ナノ粒子 / 磁気緩和 / 分子間相互作用 / データ分析 / 緩和時間分布解析 |
Outline of Research at the Start |
体液や生体組織のような生体分子環境中での磁性ナノ粒子-生体分子間相互作用がナノ粒子の磁気緩和現象に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにし、その変調を磁気的に検出する手法に基づくバイオセンシングの原理を確立する。そのためのセンシングラベル(標識)の設計指針、センシングラベルと生体分子との相互作用による磁気緩和変調を交流磁化計測するための信号・データ処理法を開拓する。磁性ナノ粒子の表面修飾分子と生体分子、水和水分子との間の相互作用が、ミクロな視点で磁気緩和現象に影響を与える支配要因であることに着目し、生体分子環境センシング、イメージングのためのラベル(標識)や造影剤を創製する。
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Outline of Annual Research Achievements |
核酸、タンパク質、糖鎖等の生体高分子を標的として相互作用できるように表面機能化を行った酸化鉄ナノ粒子と各種生体高分子との相互作用を、交流磁場下での磁気緩和により評価する研究を遂行した。その中で、磁性ナノ粒子の表面機能化を行った磁性粒子ラベルの作製、交流磁化計測装置開発、データ科学的手法を用いた交流磁化の周波数スペクトル解析を行った。 前年度より行っている22塩基の単鎖DNAの検出においては、DNAのハイブリダイゼーションが効率的かつ特異的に起こる溶液条件の探索を入念に行った。その結果、溶液中の塩濃度によって、その効率と特異性が変化し、塩濃度の調整がセンシングにとって重要であることを見出した。具体的には塩濃度が増加するとハイブリダイゼーションの効率は上がるが、特異性が低下した。つまり、1塩基違いのDNAを見分けるには塩濃度を適切な濃度まで低下させることが必要であることがわかった。 また、これまでにセンシングを行っていた反応溶液は主に水を用いていたが、ハイブリダイゼーションの効率の点から、特異性が失われない程度に塩濃度を高めた溶液中での磁性粒子ラベルの分散安定性向上が新たな課題となった。 交流磁化計測装置開発においては、生体分子と磁性ナノ粒子プローブとの間の複雑かつ不均一な生化学反応を交流磁化状態から計測するために、低周波数領域での精密な計測が必要であることから、従来の周波数特性分析器に代わり、より高い信号対雑音比の得られるロックインアンプを導入した。その結果、低周波数領域では10Hzまでしか計測できなかったものが、4Hzまで計測できるようになった。それに伴い、低周波数側でスペクトルをより広く計測できることとなった。 交流磁化の周波数スペクトル解析においては、他の分野でも行われている緩和時間分布解析の手法を取り入れ、より高い分解能でタンパク質濃度測定ができる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性粒子ラベルと生体高分子とを相互作用させるのに適した溶液環境の調査が進み、塩濃度の調整が重要であることがセンシングにおいて重要であるという知見を得たと考えている。一方で、現在確立している磁性粒子ラベルの溶液中での分散安定性という観点から、塩濃度をこれまでよりも高めた中でも分散安定性に優れる磁性粒子ラベル創製のために、新しい表面状態の改質手法の開発が次に向けた課題となっている。 交流磁化計測装置開発においては、低周波数領域の拡張ができたことでより広範囲の周波数スペクトルの取得ができる状況が整ったと考えている。 計測したデータを解析する手法として、緩和時間分布解析の手法を取り入れ、タンパク質検出の中でもシンプルなアビジン-ビオチン反応の系で、その有効性を示した。また、機械学習を取り入れるための手法についても検討を開始した状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
生体分子間の相互作用や反応が起こる溶液条件において、特に塩濃度の影響が大きいことが明らかになってきている。その現象を踏まえると、磁性ナノ粒子ラベルが体液と同等程度の塩濃度の溶液においても安定に分散することができるようにナノ粒子表面の分子設計や修飾方法を検討することが急務の課題である。この課題は最終年度に向けてもまだ残っているが、作製効率は低いものの、PBS中で分散できる磁性粒子がどのような表面を有しているかの検討は進んでおり、その表面機能化により単鎖DNA、抗体などのタンパク質、糖鎖で表面修飾ができるようにする必要である。 また、従来はより小さな流体力学的径を有する磁性粒子をラベルとすることが望ましいと考えていたが、生体高分子をクロスリンカーとして大きな磁性粒子のクラスターを形成させる反応系のほうがより低濃度でのセンシングに適していることがわかってきており、磁性粒子ラベル設計に調整を加えていくことを検討する。 それにともなって、低周波数領域での周波数スペクトル取得の重要性が増しており、より低濃度での計測ができるように装置の改良と信号検出条件の最適化を進める。 これにより、生体高分子との相互作用が効率よく起こる溶液環境で、より高感度な計測を実現できる見込みがある。 加えて、周波数スペクトル解析における緩和時間分布解析と機械学習の導入により、より詳細な分布状態の把握ができれば夾雑分子が混在するような複雑な溶液環境でも標的となる生体高分子の情報を特異的に弁別することができると考えて研究に取り組む。
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Report
(2 results)
Research Products
(18 results)