Project/Area Number |
21H02053
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 36020:Energy-related chemistry
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
水木 純一郎 関西学院大学, 学長室, 教授 (90354977)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 大樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30425566)
石井 賢司 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光量子科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員 (40343933)
魚住 孝幸 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80295724)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥18,070,000 (Direct Cost: ¥13,900,000、Indirect Cost: ¥4,170,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2021: ¥13,520,000 (Direct Cost: ¥10,400,000、Indirect Cost: ¥3,120,000)
|
Keywords | 非弾性X線散乱 / 電気化学 / 放射光分光法 / 電池正極材料 / 配位子 / 放射光X線発光分光 / 電極材料 / 共鳴X線非弾性散乱 / 酸化還元反応 / アニオン |
Outline of Research at the Start |
本研究では、応募者のこれまでの研究「放射光X線散乱・分光法の利用技術の開発とそれを利用した強相関電子系、電池電極界面、触媒に関する機能発現・物性研究」で得られた知見を基に、新規に電気化学反応の放射光X線オペランド分光計測法・解析法を開発することで、高蓄電容量電池デバイスにおいて新しい制御可能な自由度と期待される「正極活物質の金属原子と結合するアニオンの酸化還元反応」に直接関わる電子状態を解明する。これにより、これまで未踏であった電気化学反応におけるアニオンの酸化還元活性を支えている学理を構築する。本研究は、放射光X線の分光計測法を柱として電気化学と固体物理を融合した学際領域を形成する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
22年度は、新規に電気化学反応の放射光X線オペランド分光計測法・解析法を開発することをメインに研究を進めた。具体的には、電池動作下(オペランド)で遷移金属の内殻電子励起により散乱されるKβ1,3, Kβ', Kβ", Kβ 2/5蛍光X線を計測した。テスト試料として電極材料と類似結晶構造を持つLaMnO3単結晶、LaCoO3単結晶で上記蛍光X線が計測可能であることを確認したのちに、実際の二次電池正極物質として研究ターゲットとしているLi2MnO3、LiCoO2を電極とした蓄電池の完全充電、完全放電状態でのex-situでのそれぞれの上記蛍光X線の観測に成功した。電極膜厚100nmの薄膜であっても解析可能なs/n(シグナル/ノイズ比)で観測できることを確認した。さらに年度末の実験で、Li2MnO3薄膜を電極とした全固体二次イオン電池を作製し充放電中のMnからの上記蛍光X線の観測に成功し、各電圧でのスペクトルの系統的な変化を観測した。21年度に製作した微小角入射非弾性散乱装置(GI-RIXS)のオフビームでの動作テストを完了し、23年度に実施を予定しているGI-RIXS実験の準備が整った。 また、実験で得られたスペクトルの電子論的解釈のために必要な理論計算の成果は、Kβ 2/5解析のために,計算環境の整備・高度化に向けて去年度から引き続き取り組んだ。第一原理計算と不純物アンダーソン模型を融合した計算環境を構築し、ベンチマークテストとしてLiCoO2などの典型物質について2pXPS、2pXAS解析を行い,日本物理学会にて報告した。また,ベイズ推定、および第一原理計算との融合において効率的アルゴリズムをそれぞれで新規に考案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本科研費で製作した微小角X線入射による非弾性X線散乱法(GI-RIXS)を可能とする分光器は、ビームラインに設置されている他の実験装置との関係で立ち上げを23年度初期に行うが、分光器動作試験は終わっており23年度から本格的に利用できる状態である。また、研究の目的である実材料での電池電極のオペランドでのKβ1,3, Kβ', Kβ", Kβ 2/5、それぞれの蛍光X線の観測に成功した。23年度は、100nmの薄膜電極材料のオペランド計測に有利なGI-RIXSでの実験を実施する計画であり、よりs/n比が改良されたデータが取得されることが期待される。 また、実験で得られるスペクトルの理論計算からのアプローチも順調に進んでおり、特にベイズ推定、および第一原理計算との融合において効率的アルゴリズムをそれぞれで新規に考案することができており順調に研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、まず2021年度末に納入した微小角入射非弾性X線散乱装置の立ち上げを行う。去年度に電池オペランドでの目的とする蛍光線の観測に成功しており、本装置により薄膜や界面近傍の情報をs/nを高めて観測することが期待される。さらにX線屈折レンズの導入により入射X線の縦方向の集光を可能にすることにより、入射X線輝度を高めて実験を行う。試料は、Li-二次イオン電池の代表的な正極材料であり層状物質であるLi2MnO3, LiCoO2である。前者は電池充放電において酸素の酸化還元反応が寄与しており、後者は酸素の酸化還元反応がないと考えられている材料である。オペランド用電池システムは、全固体Li-二次イオン電池を作成する。電解液を利用した電池に比べ取り扱いが簡便であるだけでなく、電解液-正極材料の界面で発生する反応、電解液の分解を考える必要がなく、さらに正極材料からの酸素発生を抑えることが報告されており充放電での真性の正極の姿を観測できる特長がある。これらを材料とした二次イオン電池を製作し、充放電中の各電圧でのKβ1,3, Kβ', Kβ", Kβ 2/5の蛍光X線を測定する。 理論計算法の開発では、21,22年度で考案したアルゴリズムを実装したKβ2/5解析環境を構築する。さらに,Kβ2/5発光分光の実験データ解析に具体的に適用することで電池動作時における正極材料の電子状態・挙動を微視的視点で明らかにする。
|