Project/Area Number |
21H02760
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松村 寛行 東京大学, 医科学研究所, 特任講師 (70581700)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,940,000 (Direct Cost: ¥3,800,000、Indirect Cost: ¥1,140,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,980,000 (Direct Cost: ¥4,600,000、Indirect Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2021: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
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Keywords | 幹細胞競合 / 17型コラーゲン / 扁平上皮癌 / 皮膚癌 / 細胞競合 / 癌 / RAS変異 / COL17A1 / 17型コラーゲン |
Outline of Research at the Start |
細胞競合は、適応度の異なる同種細胞が近接した際に適応度の高い細胞が低い細胞を排除する現象である。我々は、ヘミデスモソーム構成因子であるCOL17A1を介した幹細胞競合が皮膚の恒常性維持と老化を司ることを世界に先駆けて明らかにした。しかしながら、皮膚癌の初期段階において、細胞競合の破綻が皮膚癌の惹起に関与するのか否かという最も重要な課題については、全く明らかにできていない。そこで、本研究では、表皮基底細胞がどのようにして細胞競合を引き起こしながら、最終的に排除されずに癌発生に至るのか、癌化における幹細胞競合の役割を解明し、細胞競合を軸とした癌抑制の新規治療法開発に繋げることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合は、適応度の高い細胞と低い細胞が共存した際に、異なる細胞の境界で生じる作用によって、適応度の高い細胞が勝者として生き残り、適応度の低い細胞が敗者として組織から排除されるという機構のことである。最近では、哺乳類の胸腺や腸管などの上皮組織においても、細胞競合による組織恒常性維持機構に抗腫瘍作用があることが明らかにされつつある。そのため、細胞競合には、『免疫細胞を介さない抗腫瘍効果を持つ組織恒常性維持機構』としての役割があり、新たな癌根治療法開発への期待から、世界中から注目を集めており、その機構解明が求められつつある。我々は、ヘミデスモソーム構成因子であるCOL17A1を介した幹細胞競合が皮膚の恒常性維持と老化を司ることを世界に先駆けて明らかにした(Liu#, Matsumura#* et al., Nature 2019, #*共筆頭責任著者)。しかしながら、皮膚癌の初期段階において、細胞競合の破綻が皮膚癌の惹起に関与するのか否かという最も重要な課題については、全く明らかにできていない。そこで、本研究では、表皮基底細胞がどのようにして細胞競合を引き起こしながら、最終的に排除されずに癌発生に至るのか、癌化における幹細胞競合の役割を解明し、細胞競合を軸とした癌抑制の新規治療法開発に繋げることを目的とした。昨年度までに、ヒト角化細胞の3D培養モデルを用いて、細胞競合が起こるか否か実験系の構築と様々な遺伝子改変細胞株を用いて細胞競合の検証を行い、細胞競合の実験系の構築に成功してきた。また、本年度では、3D培養モデルに癌ドライバー遺伝子変異であるRAS変異細胞を導入すると周りの野生型細胞により細胞競合により排除されること、その細胞にCOL17A1を過剰発現させるとその排除が抑制されること、すなわち、COL17A1がRAS変異細胞の排除に関わる可能性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、3次元培養実験系の構築を行った.まず,ヒト角化細胞にテトラサイクリン依存性にGFPを発現し,shRNAによりCOL17A1をノックダウンできるレンチウィルスベクターの構築を行い,細胞に一過的にトランスフェクションさせると免疫染色によりGFPが導入された細胞のみ,COL17A1発現の減少が確認された.レンチウィルスを作製後,ケラチノサイト細胞に感染後,薬剤選択により目的のテトラサイクリン(Dox)依存性にGFPを発現し,shRNAによりCOL17A1をノックダウンできる細胞株を樹立し,テトラサイクリン依存性にGFP発現誘導とCOL17A1の発現低下が観察された.さらに,この細胞株と野生型ケラチノサイト細胞を混合したのち,薬剤誘導後,培養カップ上で,高密度で表面を空気にさらしながら3D共培養させることにより,角層へ分化誘導し,重層化させたところ,COL17A1の発現が低下した細胞のみが,細胞競合により基底層から特異的に排除されることが分かった.これらのことから昨年度までに3次元培養実験系による細胞競合実験系の構築に成功している。また本年度は、この実験系を応用し、癌ドライバー遺伝子変異であるHRASG12V変異細胞を導入すると周りの野生型細胞により細胞競合により排除されることを見出した。さらに、この細胞にCOL17A1を過剰発現させると、この細胞の排除が阻害され、COL17A1がRAS変異細胞の排除に関わる可能性があることがわかった。これらのことから、3次元培養実験系用いて癌ドライバー遺伝子変異細胞の挙動を検出できたことから、概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで,3D培養細胞競合実験系を構築し,ラベル細胞の挙動をトレースした結果,COL17A1の発現低下が起こると,野生型細胞により排除されることが明らかになった。 また、癌ドライバー遺伝子変異であるRAS変異細胞を導入すると周りの野生型細胞により細胞競合により排除されること、さらに、この細胞にCOL17A1を過剰発現させると、この細胞の排除が阻害され、COL17A1がRAS変異細胞の排除に関わる可能性があることがわかった。今後は、これらのin vitro培養細胞での結果を、in vivoマウスを用いた生体組織で表皮幹細胞の細胞競合実験系を新たに構築し、RAS変異とCOL17A1発現変化との関係性をさらに探っていきたいと考えている。
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