Project/Area Number |
21H02764
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 50010:Tumor biology-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
諸石 寿朗 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30647722)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,200,000 (Direct Cost: ¥4,000,000、Indirect Cost: ¥1,200,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2021: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
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Keywords | 鉄代謝 / がん / 免疫 / 腫瘍微小環境 / 代謝競合 / 炎症 / シグナル / 免疫応答 |
Outline of Research at the Start |
近年、腫瘍微小環境において、がん細胞や免疫細胞など多細胞間での代謝の競合が腫瘍運命を決定する重要な要素の一つであることが明らかになりつつある。鉄は生体に必須の栄養素であり様々な生命機能を制御するが、腫瘍微小環境における鉄の役割は十分に解明されていない。本研究では腫瘍微小環境に存在する様々な細胞で鉄代謝を変容させることで、腫瘍運命の決定における鉄代謝の役割を調べる。本研究の遂行により鉄が制御する新たな生命機能や病態を明らかにするとともに、鉄動態の変容によるがんや炎症性疾患等の新たな予防・治療法の創薬シーズ開発を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き腫瘍微小環境における鉄代謝動態の俯瞰、がん細胞および免疫細胞における鉄代謝の変容と腫瘍進展の関連解析について、それぞれ研究を進めた。 歯周病の原因菌として知られるフソバクテリウム・ヌクレアタムという細菌が腸内に感染した大腸がん患者では、全身の鉄量が多いと生存率が低下することを見出し、がん組織に蓄積した鉄が免疫細胞による炎症応答を増悪させ、がんの進行を早めることを明らかにした。このような患者では、大腸がん組織に存在するマクロファージに鉄の蓄積を認め、これにより炎症性サイトカインの産生が促進されることをin vitroの実験系にて明らかにした。さらに、このメカニズムとして、フソバクテリウム・ヌクレアタムの菌体表面に存在するリポ多糖に応答した転写因子NFkBの活性化が、鉄欠乏条件下では減弱することを明らかにした。 また、がん細胞における鉄代謝の変容と腫瘍進展の関係についても解析を進めた。肺がん細胞において、2価鉄の過剰はがん細胞の増殖を抑制するのに対し、3価鉄の過剰はがん細胞の増殖に影響を与えないことを見出し、蓄積する鉄の価数が細胞増殖への影響を理解する上で重要であることを明らかにした。さらに、肺がん細胞における2価鉄の過剰は、細胞周期のG1期からS期への進行が遅延させることを明らかにした。また、マウスに移植した肺がん細胞も同様に鉄代謝の変容により腫瘍増殖が抑制されることがわかった。 以上の研究成果をふまえ、鉄代謝と炎症応答および腫瘍進展の関係性について学会発表、論文発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では腫瘍微小環境における鉄代謝と腫瘍進展の関係性を解明することをめざし、「A.腫瘍微小環境における鉄代謝動態の俯瞰」、「B. 正常細胞における鉄代謝の変容が腫瘍進展に及ぼす影響の解明」、「C. がん細胞における鉄代謝の変容が腫瘍進展に及ぼす影響の解明」、「D. 免疫細胞における鉄代謝の変容が腫瘍進展に及ぼす影響の解明」に取り組んでいる。 A.については、大腸がんにおいて腫瘍微小環境の間質における鉄の蓄積が腫瘍進展を促進することを明らかにした。特に、間質に存在するマクロファージにおける鉄の蓄積は大腸がんの予後悪化と相関することを明らかにした。また、このメカニズムとして、下記Dにおいてマクロファージにおける鉄の蓄積がもたらす影響を検討した。 B.については、当初計画していた大腸がんの肝移植モデルは手技的な問題で結果が安定しなかったため、系を細胞培養の実験系に切り替え、正常細胞の悪性形質転換における鉄代謝の意義を調べた。 C.については、肺がん細胞株において鉄代謝の変容によりin vitroおよびin vivoでのがん細胞の増殖が変化することを見出した。さらに、2価鉄の蓄積はp27の発現上昇を介して細胞周期のG1期からS期への移行が遅延させることを明らかにした。 D.については、上述のようにマクロファージにおける鉄代謝の重要性が示唆されたため、サイトカイン産生能と鉄代謝の関係性を調べた。その結果、鉄欠乏条件下ではマクロファージのサイトカイン産生能が減弱することが分かり、これは転写因子NFkBの低下によるものであることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である次年度は、本課題の問いである「腫瘍微小環境における鉄代謝の役割は何か?」に対して、1. がん細胞、2. 免疫細胞、3. 正常細胞、それぞれの視点から一つの答えを見出したい。また、分子生物学・生化学実験によってそれぞれの細胞に鉄代謝の変容がもたらす影響を分子レベルで明らかにする。 1.に関しては、肺がんおよび膵がんにおける鉄代謝の変容と腫瘍進展の関係を調べる。肺がんについては2価鉄の蓄積が細胞周期遅延をもたらすメカニズムを解明する。膵がんについては、がん進展と関連のある鉄代謝関連分子の変化について調べ、その意義を検討する。 2. については、ヒト大腸がんにおいてマクロファージへの鉄蓄積と腫瘍進展の関係を明らかにした。引き続き他の免疫細胞、特にT細胞やB細胞などにおける鉄代謝が腫瘍進展に及ぼす影響を調べる。 3. については、正常細胞にがん遺伝子を発現させて悪性形質転換を誘導する実験系を確立し、悪性形質転換の誘導において鉄代謝の変容が存在するか、存在する場合にはその意義は何か、について検討する。 以上の解析を複数のがん種において比較検討することにより、共通する性質と特異的な性質を見出し、腫瘍進展と鉄代謝変容の関係性を解明する。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Iron accelerates Fusobacterium nucleatum-induced CCL8 expression in macrophages and is associated with colorectal cancer progression.2022
Author(s)
Yamane T, Kanamori Y, Sawayama H, Yano H, Nita A, Ohta Y, Hinokuma H, Maeda A, Iwai A, Matsumoto T, Shimoda M, Niimura M, Usuki S, Yasuda-Yoshihara N, Niwa M, Baba Y, Ishimoto T, Komohara Y, Sawa T, Hirayama T, Baba H, Moroishi T.
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Journal Title
JCI Insight.
Volume: 7(21)
Issue: 21
Pages: 156802-156802
DOI
Related Report
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] The relationship between Fusobacterium nucleatum and iron in colorectal cancer2021
Author(s)
Taishi Yamane, Hiroshi Sawayama, Kosuke Mima, Masaaki Iwatsuki, Yoshifumi Baba, Takatusgu Ishimoto, Shiro Iwagami, Yuji Miyamoto, Naoya Yoshida, Toshiro Moroishi, Hideo Baba
Organizer
第80回日本癌学会学術総会
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