無機ヒ素暴露によるNrf2活性化の低下が引き起こす認知機能障害の解明
Project/Area Number |
21H03185
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58020:Hygiene and public health-related: including laboratory approach
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
高田 礼子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (30321897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (90081661)
人見 敏明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (90405275)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
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Keywords | 無機ヒ素 / 血液脳関門機能障害 / ヒ素のメチル化 / Nrf2活性化 / 認知機能障害 / ヒ素 / メチル化ヒ素 / 血液脳関門 / タイトジャンクション / Nrf2 / HO-1 |
Outline of Research at the Start |
慢性ヒ素中毒はアジアや中南米にて大規模に発生し、WHOは胎児期や乳児期での無機ヒ素(iAs)暴露からの認知発達障害に警鐘をならしている。一方、一般社会でも食事から大量のヒ素化合物を摂取しており、小児の認知発達障害や成人の認知機能障害などへの影響が危惧されている。 本研究の概要は、動物実験に替わる血液脳関門構造をモデル化したin vitro実験法での脳神経細胞障害の短期評価システムを活用し、iAs暴露から生じる可能性がある認知発達障害や認知機能障害について、酸化ストレス制御タンパクであるNF-E2-related factor 2(Nrf2)の役割を主体に解明する研究である。
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Outline of Annual Research Achievements |
飲料水からの高濃度無機ヒ素(iAs)暴露者(推計1億人以上)において小児の認知能力の障害や成人の認知機能障害が懸念され、欧州食品安全機構では米に蓄積されたiAs暴露による乳幼児や小児における認知能力の障害の予防対策として、米及び加工品の摂取の法規制が準備されている。しかし、iAs暴露と認知機能障害に関する実験的検証は技術的に困難な問題が山積している。我々はヒトや動物のblood brain barrier (BBB)を模範したrat in vitro-BBB modelを用い、ヒ素暴露とBBBのタイトジャンクション(TJ)傷害の関係について解明を試みた。研究対象のヒ素は、急性や慢性ヒ素中毒の原因ヒ素である3価iAs(iAs(III))とその代謝物であるmonomethylarsonous acid (MMA(III))とした。 rat in vitro- BBB model にiAs(III)やMMA(III)を暴露した結果、iAs(III)やMMA(III)はBBB内においてメチル化や酸化反応を受け、24時間目までに代謝された割合はiAs(III)が15%、MMA(III)が65%で、この代謝は減毒の作用と推測した。しかし、未変換のMMA(III)(35%)はiAs(III)より強いBBBのTJ傷害を発現し、改めてMMA(III)の強毒性が確認された。BBBのTJ傷害の評価はtransepithelial electrical resistance値やTJタンパクであるClaudin-5の測定が有効であった。一方、酸化ストレス制御タンパクであるNrf2やHO-1はTJ傷害の抑制に寄与する機序も確認された。 本研究から、iAs暴露による小児の認知能力の障害や成人での認知機能障害におけるiAs(III)やMMA(III)のBBB内での代謝に関する研究の重要性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度の研究計画では、実験-1と2を基軸に実施した。 我々は、iAs暴露による認知能力への影響や認知機能障害は、最初にBBBのTJ傷害が発生し、BBBを透過したiAsやその代謝物によりグリア細胞そして神経細胞が段階的に傷害される作用機序を考えている。本研究では、rat-in vitro BBB modelを用いて、BBBにおけるiAs(III)やMMA(III)の代謝とBBBのTJ傷害との関係を主体に検討した。 実験-1では、BBBにおけるiAs(III)やMMA(III)の代謝と透過性についての解明を行った。iAs(III)はメチル化や酸化されるが、その割合は少なく、すなわち、BBB内では強い毒性が持続する可能性が示唆された。一方、MMA(III)は65%がメチル化や酸化されたが、未変換のMMA(III)(35%)はiAs(III)より強いBBBのTJ傷害を発現し、改めてMMA(III)の毒性に注視する必要性が明らかになった。iAs(III)やMMA(III)のBBBにおける透過率は暴露量に対して40-60%であり、これらの値とTJ傷害の発現には明確な関連性が成り立つことを明らかにした。 実験-2では、ヒ素暴露によるBBBのTJ傷害に対する酸化ストレス応答についても検討した。TJ傷害は血管内皮細胞とペリサイトの構造領域に発現する。この研究から、TJ傷害に対してはアストロサイトも含め一体化してNrf2やHO-1による酸化ストレス応答の発現が確認され、TJ傷害の軽減に対してNrf2活性化の重要性が推測された。 以上から、2022年度に予定していた研究成果は順調に獲得できたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
疫学研究から示唆されているiAs暴露による小児の認知能力の障害や成人での認知機能障害については、これまで2カ年の実験的な検証の結果、iAs(III)およびその代謝物であるMMA(III)には強いBBBのTJ傷害を発現する作用が存在し、すなわち、実験的検証結果は疫学研究から提起されている問題について解答できる初期段階を達成したと考えている。 今後の研究では、iAs(III)やMMA(III)暴露からのBBBのTJ傷害に係わるメチル化や酸化ストレス応答について、それぞれの促進や抑制に関する実験的な検証を継続する予定である。 これらの研究成果の集積は、現在、1億人以上と言われる飲料水からの高濃度iAs暴露者や米からのiAs暴露による小児の認知能力の障害や成人の認知機能障害の問題において、予防医療の構築や法規制に関する情報の提供として寄与するものと考える。
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Report
(2 results)
Research Products
(1 results)