弱毒生インフルエンザワクチンの国産開発に資する低温増殖型組換えウイルスの性状解析
Project/Area Number |
21H03188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 58020:Hygiene and public health-related: including laboratory approach
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
内藤 忠相 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50455937)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,160,000 (Direct Cost: ¥13,200,000、Indirect Cost: ¥3,960,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,370,000 (Direct Cost: ¥4,900,000、Indirect Cost: ¥1,470,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,760,000 (Direct Cost: ¥5,200,000、Indirect Cost: ¥1,560,000)
Fiscal Year 2021: ¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
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Keywords | インフルエンザウイルス / 弱毒生ワクチン / 組換えウイルスワクチン / 低温増殖馴化ウイルス / プレパンデミックワクチン開発 |
Outline of Research at the Start |
インフルエンザワクチンは、その形態によって不活化スプリットワクチンと弱毒生ワクチンに分類できるが、本邦では不活化スプリットワクチンのみが承認されている。一方、接種経路が自然感染経路と同じである弱毒生ワクチン(製品名FluMist)は、感染予防および発症阻止効果がより高いとされているが、国内未承認である。将来承認されたとしても、米国・欧州の流行株を反映したFluMistの抗原性が国内流行株と一致する保証はない。 そこで本研究では、申請者が単離した新規インフルエンザ低温増殖馴化株を用いて、本邦の流行株に柔軟に対応でき、かつ乳幼児と高齢者にも接種可能な日本独自の弱毒生ワクチンの開発と臨床応用を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者は、A型インフルエンザウイルス実験室株の1つであるPR8株(A/Puerto Rico/8/34)を用いて、ポリメラーゼサブユニットの1つであるPB1蛋白質の471番目のLys残基をHis残基に置換した単一アミノ酸変異株(PR8-PB1-K471H変異株)が、健常者体温である36℃から37℃の温度条件下では増殖できない低温増殖馴化性を獲得することを明らかにした。そこで、低温増殖馴化型PR8-PB1-K471H変異株が新規弱毒生ワクチンとして機能するかどうかを調べるため、PB1-K471H株をマウスに経鼻接種した後、4週間後に致死量の野生型PR8株を接種するチャレンジ感染実験を行った。その結果、ワクチン株未接種のマウス群は感染6日後までに全てのマウスが死亡したが、PB1-K471H株を予め接種したマウス群では全てのマウスが生存した。PR8株に既存の弱毒生インフルエンザワクチンFluMistのウイルス性状を付与した組換えFluMist型PR8株を用いたワクチン有効性の評価解析から、PB1-K471H株はFluMistと同等の感染予防効果を持つことを明らかにした。 さらにPB1-K471H株の特性として、PB1-K471H株は野生型PR8株と同程度の子孫粒子数を産生するが、その粒子集団において「増殖性が著しく低下したウイルス粒子」の存在割合が非常に高いことを明らかにした。動物培養細胞にPB1-K471H株と野生型PR8株を共感染させる実験の結果、PB1-K471H株は野生型PR8株の子孫粒子産生を阻害する「ウイルス干渉効果」を示した。このようなPB1-K471H株のウイルス性状は、低温増殖馴化性に加えて安全性の高い弱毒生ワクチン開発に活用できる有用な特性であると考え、今後は動物感染実験等によりワクチン安全性試験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、新規の弱毒生インフルエンザワクチンとしてPR8-PB1-K471H変異株の感染予防効果を動物感染実験により検証し、ワクチンとしての有効性を見出すことに成功した。PB1-K471H変異株は弱毒生ワクチンとしての免疫付与能力が高く、かつ安全性が高い可能性が示唆され、さらに既存の弱毒生インフルエンザワクチンであるFluMistと同等の感染予防効果を示した。PB1ポリメラーゼ蛋白質のLys471残基は、ヒトに感染するインフルエンザウイルスの各亜型間で高度に保存されていることから、今後は、臨床分離株にPB1-K471H変異を導入することでインフルエンザウイルス実験室株と同様に低温増殖馴化性が誘導されるかどうか検討し、市中流行株の感染予防に資する弱毒生ワクチン開発として本課題を展開する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ウイルス中和抗体の定性および定量解析 インフルエンザウイルス野生株およびPB1-K471H弱毒生ワクチンを接種したマウスを用いて、誘導されたウイルス中和抗体の定性および定量解析を行う。野生株および弱毒生ワクチンを接種したマウスから鼻腔内洗浄液と血清を回収し、分泌型IgA、粘膜性IgGおよび血清中IgG抗体の産生量について、酵素免疫測定法とウイルス中和試験により定量する。その結果から、各種抗ウイルス抗体の誘導レベルを比較し、新規弱毒生ワクチンの感染予防効果を検証する。 2. 生物統計学的解析による病原性復帰株の出現頻度の評価 PB1-K471H弱毒生ワクチン接種マウスから子孫粒子を回収後に全ウイルスゲノムRNAを抽出し、次世代シーケンサー等によって「子孫粒子中の全ウイルス遺伝子」を解読する。そして、接種前のPB1-K471H弱毒生ワクチン元株のウイルス遺伝子配列をリファレンスとして、子孫粒子中のウイルス蛋白質に生じたアミノ酸置換の特徴と出現頻度について統計解析を行う。一連の実験結果から、PB1-K471H弱毒生ワクチン接種者の体内において病原性復帰変異株が出現する可能性は極めて低いことを検証し、新規ワクチンの安全性を評価する。 3. 弱毒生ワクチンの安定性および安全性試験 実際の製剤製造工程に従ってPB1-K471H弱毒生ワクチンを調製し、冷蔵条件において長期保管した後、プラークアッセイにより生ワクチンの感染能力を測定する。その結果から、FluMistの使用期限(製造後18週以内)を上回るワクチン安定性が得られるかどうかを調べる。また、マウス用いた弱毒生ワクチンの反復投与毒性試験、および正常ヒト気管上皮細胞株を用いた弱毒生ワクチン感染実験により安全性の評価を行う。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)