堆積物コアDNAを用いた海跡湖の近過去魚類群集と環境変遷との関係解明
Project/Area Number |
21H03649
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64040:Social-ecological systems-related
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
高原 輝彦 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (10536048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土居 秀幸 京都大学, 情報学研究科, 教授 (80608505)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,420,000 (Direct Cost: ¥13,400,000、Indirect Cost: ¥4,020,000)
Fiscal Year 2023: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,410,000 (Direct Cost: ¥5,700,000、Indirect Cost: ¥1,710,000)
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Keywords | 環境DNA / 海跡湖 / 魚類メタバーコーディング / 山陰 / 環境DNAメタバーコーディング / 堆積物コア / 汽水湖 / 魚類相 / 環境復元 / 種特異的検出 / 堆積物コアDNA / 宍道湖 / 魚介類 / 水草 / メタバーコーディング / 魚類群集 |
Outline of Research at the Start |
海跡湖の湖底に堆積したコアには、自然変動や社会・経済的な影響による環境変遷の履歴が保存されている。この堆積物コアの情報を読み解くことで、過去の環境変遷に伴って海跡湖がどのような影響を受けてきたのかが明らかになる。本研究では、環境DNA分析(環境中のDNA断片から生物の生息情報を簡便に推定できる技術)を用いて、堆積物コアDNAから高次消費者及び水産有用種を含む魚類群集の復元を行い、復元された魚類群集と環境変遷の関係を解明する。その際、異なる地域性をもつ山陰の海跡湖5つをモデルケースにしてすることで、海跡湖の近過去魚類群集と環境変遷の関係の一般則と地域固有性の両側面を明らかにすることが期待できる。
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Outline of Annual Research Achievements |
海跡湖の湖底に堆積したコアには、自然災害や社会・経済的な影響による環境変遷の履歴が保存されている。この堆積物コアの情報を読み解くことで、過去の環境変遷にともなって海跡湖がどのような影響を受けてきたのかを明らかにできる。そこで本研究では、環境DNA分析(環境中のDNA断片から生物の生息情報を簡便に推定できる技術)を用いて、堆積物コアDNAから生産者や高次消費者、および、水産有用種を含む生物群集の復元を行い、復元された環境DNA情報と環境変遷の関係を解明することを目的として進める。その際、異なる地域性をもつ山陰の海跡湖をモデルケースにすることで、海跡湖の近過去魚類群集と環境変遷の関係の一般則と地域固有性の両側面を明らかにすることを試みる。 これまでに、2020年・2022年に採取した宍道湖の堆積物コアサンプル複数本、および、2022年に採取した中海の堆積物コアサンプル1本を用意することができた。現在、これらのサンプルを1-2cmの層ごとに分けた後、DNAの抽出処理と測定を随時進めている。宍道湖のいくつかのサンプルを用いて環境DNAメタバーコーディング解析を実施した結果、コノシロを中心とした魚類DNAを検出することができた。さらに、種特異的な環境DNA分析の結果、二枚貝ヤマトシジミや水草ツツイトモ・リュウノヒゲモ、その他、複数の魚種などの環境DNAを推定約50年前の堆積物中からも検出可能であることが示唆された。さらに、環境DNAメタバーコーディングによるコノシロの検出DNAリード数とコノシロ特異的プライマーを用いて測定した環境DNA濃度には正の相関が示唆された。汽水湖の堆積物コアに含まれる環境DNAを解析することによって、マクロ水棲生物の生息状況を推定することが可能であり、加えて、種特異的分析による対象種の環境DNA濃度の変化から、過去の個体群変動を推定できる可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでに、2020年・2022年に採取した宍道湖の堆積物コアサンプル複数本(S5:40cm(n=3)、S6:40cm(n=3)、240:20cm、241:38cm、242:18cm、243:30cm、244:26cm、245:30cmなど)、および、2022年に採取した中海の堆積物コアサンプル1本(175cm)を用意することができた。とくに2020年9月に採取した宍道湖の堆積物コアサンプル(S5、S6)については種特異的プライマーを用いて測定済みであり、そのうちいくつかの生物種でDNA検出がみられた(S5:ヤマトシジミ、スズキ、ツツイトモ、リュウノヒゲモ、S6:コノシロ、ヤマトシジミ、スズキ、ツツイトモなど)。現在、各生物種のDNAが検出されたコア層の年代測定を急ぎ進めている。一方で、これまで、堆積物コアサンプルを用いた環境DNAメタバーコーデイングの前処理で思うような結果をなかなか得ることができず、トライアンドエラーにかなりの時間を要してしまっていた。また、宍道湖における堆積物コアサンプルを用いた詳細な解析が必要になり、宍道湖のサンプル数が増加したため、それらのサンプル処理を優先したことによって、当初予定していたよりも研究計画が遅れている状況である。しかしながら、徐々に実験手順も確立しつつあり、ユニバーサルプライマーのMiBirdやMiFishを用いた環境DNAメタバーコーディングによって、カモ類などの水鳥やコノシロ・サッパなどの魚種のDNAを検出することにも成功している。とくにコノシロの環境DNAメタバーコーディングによる検出DNAリード数とコノシロ特異的プライマーを用いた環境DNA濃度には正の相関が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、まずは中海で採取したサンプルの処理・DNA分析を進めるとともに、できるだけ早い時期に、神西湖、東郷湖、湖山池における堆積物コアサンプルの採取を行う。採取した堆積物コアサンプルは、適宜、DNA抽出処理を行い、環境DNAメタバーコーディングと種特異的解析を実施する。これまで、環境DNAメタバーコーデイングの前処理で思うような結果をなかなか得られなかったが、PCR実験時のサイクル数を増やす、PCR時のDNAサンプル量を増やす、また、ユニバーサルプライマーはMiFishと MiBirdの両方を同時に使用してきたのに対して、MiFishのみで分析するなどの対応によって、結果の改善が見られてきた。今年度は、これらの改善を反映させながら研究計画を迅速に進める予定である。そして、海跡湖の堆積物コアサンプルから得られた近過去魚類群集データと環境変遷の地域固有性と一般則について明らかにすることを試みる。
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Report
(2 results)
Research Products
(29 results)