感性的質感知覚の適応的意義への比較認知発達科学からのアプローチ
Project/Area Number |
21H03784
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 90030:Cognitive science-related
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
伊村 知子 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (00552423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 述 立教大学, 現代心理学部, 教授 (50554367)
山田 祐樹 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (60637700)
小林 恵 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70781227)
佐々木 恭志郎 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (70831600)
足立 幾磨 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 准教授 (80543214)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥16,770,000 (Direct Cost: ¥12,900,000、Indirect Cost: ¥3,870,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2022: ¥5,720,000 (Direct Cost: ¥4,400,000、Indirect Cost: ¥1,320,000)
Fiscal Year 2021: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
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Keywords | 質感知覚 / 集合体恐怖 / 比較認知発達 / 児童期 / チンパンジー / 質感 / 光沢 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、物体の表面の光沢感やなめらかさのような質感を見分ける能力や、特定の質感に対して感じる快・不快の感情が、生後どのように発達するのかについて、乳幼児や成人を対象に検討することにより質感知覚の発達について明らかにする。また、質感を見分ける能力の中でも、食物選択や配偶者選択、感染症回避のような生物の生存や繁殖と関連するものに着目し、質感により喚起される快・不快の感情について、ヒトとヒトに最も近縁な種であるチンパンジーを対象とすることにより、質感知覚の進化的な基盤について明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、質感知覚の感性的側面やその発達および進化的基盤を解明することを目的としている。具体的には、質感知覚が生存や繁殖においてどのような機能を持つかを明らかにするため、ヒトに最も近縁な種であるチンパンジーを対象に実験を行った。今年度は特に、感染症を想起させる質感への忌避反応(集合体恐怖)や繁殖に関連する質感への選好について検討した。 まず、感染症や皮膚病を想起させる円や穴の集合体に対するチンパンジーの注視反応をアイトラッカーを用いて検討した。京都大学ヒト行動進化研究センターのチンパンジー8個体(オス3個体、メス5個体)を対象に、円や穴の集合体を含む画像と単一の円や穴を含む中性画像を各20種類用意し、1枚ずつディスプレイ上に3秒間呈示して注視時間を比較した。しかし、画像の種類による注視時間の違いは見られなかった。 次に、性皮腫脹の画像に対する注視反応に影響を及ぼす視覚的要因についても検討した。京都大学ヒト行動進化研究センターのチンパンジー8個体(オス3個体、メス5個体)を対象に、メスの最大腫脹時と最小腫脹時の性皮画像を左右に1枚ずつ3秒間呈示し、大きさや色、光沢の有無を操作して注視時間を分析した。その結果、チンパンジーは性皮腫脹時の光沢や色に対して視覚的な選好を示す可能性が示された。これは、ヒト以外の霊長類も光沢の質感に惹きつけられることを示す初めての結果である。 以上の結果から、質感知覚が繁殖に関連する重要な要素である可能性が示唆された。今後の研究では、より多くの個体や異なる条件での実験を通じて、質感知覚の進化的な意義をさらに明らかにしていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示すような成果が着実に得られている。 (1) 感性的質感知覚の発達:4歳から9歳の子どもを対象とした集合体恐怖の発達に関する研究成果が、学術雑誌に掲載された。 (2) 感性的質感知覚の進化的基盤:チンパンジーにおいて質感知覚が繁殖に関連する重要な要素である可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究期間内に、質感知覚の繁殖の関わりを示す成果が得られた。今後はこれらの成果をまとめるとともに、集合体恐怖の進化的基盤について異なる手法を用いてさらに検討する。 京都大学ヒト行動進化研究センターのチンパンジー8個体(オス3個体、メス5個体)を対象に、集合体画像および中性画像が注意を捕捉するか否かについて調べる。具体的には、先行手がかり法(Posner, 1980)を用いた実験を行う。実験では、画面の左右いずれかに呈示されるターゲットに先立ち、手がかり刺激として集合体画像あるいは中性画像が左右いずれかに200ms呈示される。この課題において、チンパンジーは、手がかり刺激を無視してターゲットに触れることが求められる。もし、集合体画像が中性画像に比べてより注意を捕捉しやすいのであれば、手がかり刺激がターゲットと同じ位置に呈示される一致試行では、集合体画像が呈示された条件で、ターゲットによりすばやく反応することが予想される。一方、手がかり刺激がターゲットと反対の位置に呈示される不一致試行では、集合体画像が呈示された条件でターゲットへの反応が遅くなることが予想される。集合体画像と中性画像の視覚特性を統制するため、刺激の種類を変更して検討する予定である。 ヒトの子どもを対象とした研究では、新潟大学と立教大学の心理学研究室と連携しながら学会発表や投稿論文の執筆準備を進める。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)