Project/Area Number |
21H04379
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅 浩伸 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (20294390)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 和久 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10376543)
藤田 和彦 琉球大学, 理学部, 教授 (00343377)
横山 祐典 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10359648)
渡部 真史 中央大学, 研究開発機構, 機構准教授 (30847190)
後藤 秀昭 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 教授 (40323183)
島津 弘 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (90251909)
清野 聡子 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80251320)
長谷川 均 国士舘大学, 文学部, 教授 (80208496)
堀 信行 奈良大学, その他部局等, 特別研究員 (40087143)
今里 悟之 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90324730)
小野 林太郎 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (40462204)
高橋 そよ 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (60772829)
伊藤 幸司 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (30364128)
鈴木 淳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60344199)
井上 麻夕里 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (20451891)
藤田 喜久 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (20771463)
平林 頌子 東京大学, 大気海洋研究所, 講師 (40835641)
木村 淳 東海大学, 人文学部, 准教授 (80758003)
中西 裕見子 九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (10845754)
片桐 千亜紀 九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (70804730)
山舩 晃太郎 九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (60899516)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,250,000 (Direct Cost: ¥32,500,000、Indirect Cost: ¥9,750,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,670,000 (Direct Cost: ¥5,900,000、Indirect Cost: ¥1,770,000)
Fiscal Year 2023: ¥9,490,000 (Direct Cost: ¥7,300,000、Indirect Cost: ¥2,190,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,360,000 (Direct Cost: ¥7,200,000、Indirect Cost: ¥2,160,000)
Fiscal Year 2021: ¥15,730,000 (Direct Cost: ¥12,100,000、Indirect Cost: ¥3,630,000)
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Keywords | 海底地形 / 沿岸海域 / 水中文化遺産 / マルチビーム測深 / 海洋空間計画 / 海洋探査 / 地形 / サンゴ礁 / 可視化 / 環境 / フォトグラメトリー |
Outline of Research at the Start |
本研究ではマルチビーム測深やフォトグラメトリーなどの技術を用いて、沿岸浅海域の大縮尺(高解像度)海底地形図を作成し、地理学の新たな分野「浅海底地形学」をつくり出す。さらに海底景観の可視化によって、海底に残された人類の歴史などを広く一般に知らせ、沿岸海域に対する社会の理解を深め広げることを目的とする。大縮尺海底地形図は沿岸海域のあらゆる科学や経済社会活動の基礎となる。本研究で沿岸浅海域の地理学研究を推進することによって、将来、海域を有効かつ適切に利用するための基盤づくりを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
浅海底地形学の構築および沿岸域の海洋空間計画立案につながる基礎研究のため、福岡県糸島市沿岸域にてマルチビーム測深を実施することができた。その成果は姫島沿岸域の漁業資源調査などに利用し研究を継続している。糸島市芥屋の玄武岩海食崖沖の海食台地形については、日本地理学連合の学術誌「地形」に成果を掲載した。岩石海岸沖の海底地形については記載や研究が全くなかったため、地形学に新たな知見を加えることができた。 また、奄美大島南部の大島海峡でもマルチビーム測深調査を実施した。大島海峡は、造礁サンゴや甲殻類などの貴重種が多く報告されている。一方、大島海峡のような海峡部や内湾のサンゴ礁地形やサンゴ群集に関する科学的知見は極めて限られており、新たな発見があることが多い(Kan et al. 2015)。本研究では大島海峡の5海域で測深を実施した。測深データ取得中の総航行距離は349.73km、測深面積は合計 18.77km2である。本研究によって可視化された大島海峡中央部の海底地形には、沿岸で急激に水深を増す溺れ谷地形とともに、海峡部では潮流によって形成されたとみられる高まりや海釜状地形が認められた。 また、内湾部には緩傾斜で起伏の少ない海底が存在することが明らかになった。さらに、山陰沖にて1927年に沈んだ日本海軍の駆逐艦「蕨(わらび)」の船体をマルチビーム測深と水中ドローン調査などを駆使して発見した。 このほか、久米島ハテノハマの洲島・浅海域のドローン測量調査や与那国島・石垣島の既測深海域での潜水調査などを実施した。また、海底景観の可視化と啓発へ向けた普及講演会を5回以上実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年8月に福岡県糸島市沿岸域にてマルチビーム測深調査を実施した。糸島市芥屋の測深結果は「玄武岩海食崖沖の海食台(地形,42, 69-81)」などとして公表した。岩石海岸の海底地形に関する記載は、山陰・浦富海岸で海食洞や海食甌穴の地形を観察した豊島(1965)以降なされていない。芥屋大門では鉛直方向の柱状節理をもつ玄武岩よりなる海食崖沖側にて、マルチビーム測深による海底地形測量および潜水調査による観察を行い、現成海食台が形成される水深を明らかにした。また、糸島市姫島周辺で作成した高解像度海底地形図と、それを基に潜水調査をほぼ毎月実施した結果、海藻類の種組成および各種の消長と藻場の成立する立地条件を明らかにすることができ、磯焼け問題を抱える地域の水産業に対して貢献できそうである。また、奄美大島の測深調査は繰越研究費にて実施し、成功させることができた。さらに、山陰沖にてマルチビーム測深と水中ドローン調査によって発見した「蕨(わらび)」は、1927年に夜間演習中の衝突事故で沈んだが、その船首側を水深約90mの海底で、船尾側を水深約180mの海底で発見した。美保関事件として語り継がれる戦跡水中文化遺産を可視化し、慰霊活動に貢献することができた。 このほか、久米島ハテノハマの洲島・浅海域のドローン測量調査や与那国島・石垣島の既測深海域での潜水調査などを実施することができ、与那国島における大サンゴ礁の発見など報道につながる成果も出すことができた。また、海底景観の可視化と啓発へ向けた普及講演会として、大刀洗平和記念館講演会(エモンズ)、うみまなびオンライン講座(沿岸域の測深調査)、水中(みずなか)会議講演会(海底可視化)、石垣島市民講演会(サンゴ礁・水中遺跡の可視化と保全)、世界湿地の日講演会(石垣島名蔵湾のサンゴ礁保全)などを実施した。以上、当初の計画以上の活動を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も新たな海域でマルチビーム測深を実施する。1)沈水カルスト地形:沈水カルスト地形の代表的事例である小笠原諸島南島周辺海域においてマルチビーム測深調査を実施し、高解像度の海底地形図を基に沈水カルスト地形の全容を把握する。2)氷期の河谷地形:花崗岩山地に刻まれた氷期の河谷地形と現成の海食地形を明らかにするため鹿児島県屋久島にて測深調査を実施する。屋久島では急峻な河川が海岸に達し河谷内に巨礫が分布する。氷期の河谷地形とその周囲に分布する径2~3mの巨礫の分布を可視化することによって、気候変化に伴う河川の流量や営力の変化などを明らかにし、花崗岩山地の侵食・崩壊過程とそのタイムスケールに関する考察を行う。3)戦跡水中文化遺産:第二次世界大戦時の日本の輸送船団が沈む小笠原諸島の兄島滝之浦湾および父島二見湾にて測深調査を実施する。小笠原諸島は太平洋戦争当時の日本が絶対防衛権の最先端としたサイパン島、本土防衛の要とした硫黄島などへの重要な中継地点で、多くの輸送船団がここを経由していた。そのため米軍の攻撃目標ともなり、多くの輸送船や護衛艦がここで沈没した。本土周辺の海底の戦跡はすでに屑鉄回収のサルベージで多くの戦没船が引き上げられてしまい、当時の実態をとどめている場所はほとんどないが、小笠原諸島の海底には多くの沈船が残っている。太平洋戦争末期の戦況を伝える貴重な戦跡を可視化し、後世に伝えるための調査を行う。4)海洋空間計画:地域の漁業の保全・振興を目指した利用計画を考えるため、九州北部の漁業協同組合と協力して沿岸海域の一部にて測深を実施し、海底地形図を作成する。これを基に、地先の海の利用について自治体や漁協と協議する。 以上の調査とこれまでの調査結果をあわせて、学会発表や論文執筆を進めるとともに、社会に向けての発信(講演会やメディアへの発表など)を実施する。
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