Project/Area Number |
21H04469
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 15:Particle-, nuclear-, astro-physics, and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高柳 匡 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (10432353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西岡 辰磨 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (90747445)
疋田 泰章 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定准教授 (80567462)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,470,000 (Direct Cost: ¥31,900,000、Indirect Cost: ¥9,570,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,190,000 (Direct Cost: ¥6,300,000、Indirect Cost: ¥1,890,000)
Fiscal Year 2023: ¥13,000,000 (Direct Cost: ¥10,000,000、Indirect Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2022: ¥13,000,000 (Direct Cost: ¥10,000,000、Indirect Cost: ¥3,000,000)
Fiscal Year 2021: ¥7,280,000 (Direct Cost: ¥5,600,000、Indirect Cost: ¥1,680,000)
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Keywords | ゲージ重力対応 / 素粒子論 / 量子エンタングルメント / 量子誤り訂正符号 / 超弦理論 / ホログラフィー原理 / 量子重力 / 高階スピン重力理論 / 宇宙論 / ブラックホール / 量子情報 / 場の量子論 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、ミクロな情報を扱う「量子情報理論」の視点を使用して、ミクロな重力理論を表すと期待されている「超弦理論」に新たな発展を与えることである。素粒子理論では「重力理論の宇宙は量子情報の集まりである」という新しい考え方が生まれ、ここ数年大きな進展を遂げている。この考え方の発端となったのが、研究代表者らが発見した「笠-高柳公式」であり、重力理論の時空の幾何学量を量子情報量に直接結びつける。本研究では、この新しい考え方やその後の発展を用いて、超弦理論の新しい定式化や計算法を開発し、理論物理学の最大の未解決問題の一つである「量子重力理論」の解明を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ゲージ重力対応(AdS/CFT対応)を共形場理論が境界を持つ空間上で定義されている場合に拡張したAdS/BCFT対応を用いた多方面の研究業績が得られた。AdS/BCFT対応は、境界を持つ空間に置かれた共形場理論が反ドジッター宇宙に世界の果てブレインを導入した重力理論と等価になるという対応である。まず、ブラックホール情報問題へのAdS/BCFTの応用に関して二つの成果が得られた。その一つがブラックホール情報問題において重要なページ曲線を導出する際に用いられたアイランド公式を3次元反ドジッター宇宙の場合にAdS/BCFT対応から導いた研究成果である。関連して、高次元の場合のAdS/BCFT対応についても同様の解析を行った。この時に高次元ではダイナミカルな重力場が伝播するので複雑な解析が必要となるが、宇宙論の専門家と共同研究することで、技術的な問題を解消し、この問題をうまく解析することができた。もう一つが、Hrowitz-Maldacenaによるfinal state projectionのアイデアでブラックホール情報問題を解決しようとする試みにおいて、擬エントロピーを用いるとページ曲線がうまく説明できることを導出した成果である。
またそのほかのAdS/BCFTを用いた成果として、ブラックホール蒸発過程をモデルする「動く鏡模型」に対して、その一般的な分類を時空の構造を観点から与えることができた。またAdS/BCFTの極限として得られるウェッジホログラフィーを平坦な時空の重力理論に適用することで、celestialホログラフィーと呼ばれる最近平坦な時空のホログラフィーとして提案された対応を解析し、その中心電荷が虚数無限大になることを見出した。さらにAdS/BCFT対応の世界の果てブレインに局在するスカラー場を導入することで、興味深い相転移が起こることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究代表者の高柳が11本(うち2本はPRL誌に掲載)、研究分担者の西岡が3本の論文を出版し、また高柳は国際集会で12回の招待講演を行うという顕著な業績を挙げている。特に、AdS/BCFTからアイランド公式を導いた論文は、すでに50回以上引用されており、国際的に大きなインパクトを与えているといえる。AdS/BCFTを用いた研究成果は多方面に広がり、宇宙論や物性理論との境界領域にも広がっている。例えば、高次元のAdS/BCFT対応の研究成果は宇宙論の研究者と共同で得られたもので、宇宙論のブレインワールドの知見や技術を多用して初めて得られた成果であり、今後、宇宙論への応用も視野に入る。AdS/BCFT対応を世界の果てブレインにスカラー場が局在する場合に拡張した研究では、大変興味深い量子相転移が発見され、その実時間の解析接続は物性物理で最近話題のエンタングルメント相転移に類似していることを見出された。高柳は、プリンストン大学の物理学科のコロキウムに招待され、この発見を含めて、AdS/BCFT対応の最新成果をプレゼンしたところ、プリンストン大学の物性理論の研究者から大きな反響を得た。そのほかにもAdS/BCFTを局所励起のダイナミクスの解析に応用する研究成果、動く鏡模型の記述に利用し、それを一般的に分類した成果、ブラックホール情報問題の解析に利用した成果など、幅広いテーマに応用した研究業績が多数得られた。また、celestialホログラフィーという平坦な時空のホログラフィーに新しい視点を与える研究成果も上げており、従来のゲージ重力対応を超えた対応関係に貢献することもできた。研究分担者の西岡も、ディフェクト共形場理論の鏡像法の開発や、ディフェクト共形場理論をO(N)模型で解析した成果など顕著な業績を挙げている。このように今年度は当初の計画以上の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に見出した、AdS/BCFTに局在したスカラー場を加えた模型における量子相転移のダイナミクスを具体的に実時間ダイナミクスを解析し、エンタングルメント・エントロピーの時間発展を決定したい。それによって、エンタングルメント相転移(測定誘起相転移)との関係を明らかにしたい。また世界の果てブレインに局在しているのではなく、反ドジッター宇宙全体に広がるスカラー場でも同様な相転移が起こるか解析したい。また前年度の研究で見出されたAdS/BCFT対応とアイランド公式の関係をドジッター宇宙のホログラフィー原理に対して拡張したい。その準備研究として、まずドジッター宇宙を半分に切って時間的な境界を持つような背景で、ホログラフィー原理を解析したい。具体的にはホログラフィック・エンタングルメント・エントロピーをこの背景へ拡張し、その計算規則を明確にする。このような半分のドジッター宇宙を張り合わせることで、ドジッター宇宙の重力理論が得られ、その解析が最終目標であるが、その解析の前に、反ドジッター宇宙を二つ張り合わせる解析を行い、ホログラフィー原理に基づく物理量の対応を明らかにしておきたい。AdS/BCFTのもう一つの応用の方向性として局所クエンチがあるが、この量子エンタングルメントダイナミクスを多体相関の観点から調べたい。具体的には2020年に高柳らが導入した擬エントロピーという量とエンタングルメント・エントロピーの差を計算することを多体相関を解析したい。
また、量子誤り訂正符号の素粒子論における応用も開拓したい。量子誤り訂正符号を用いて、二次元共形場理論の新たな構成法を与えたい。またそれを用いて新たな超対称共形場理論の発見を試みたい。
以上のようにAdS/BCFT対応と量子誤り訂正符号の双方の観点で今後は本研究を発展させたい。
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