太陽系外から飛来する未知の天体の探査に向けた中性粒子・イオン質量分析器の開発
Project/Area Number |
21H04509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠原 慧 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (00550500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 勝一郎 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40435798)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥43,160,000 (Direct Cost: ¥33,200,000、Indirect Cost: ¥9,960,000)
Fiscal Year 2023: ¥5,330,000 (Direct Cost: ¥4,100,000、Indirect Cost: ¥1,230,000)
Fiscal Year 2022: ¥11,830,000 (Direct Cost: ¥9,100,000、Indirect Cost: ¥2,730,000)
Fiscal Year 2021: ¥26,000,000 (Direct Cost: ¥20,000,000、Indirect Cost: ¥6,000,000)
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Keywords | その場質量分析 / イオン計測 / 深宇宙探査 / 中性粒子計測 / 恒星間天体 |
Outline of Research at the Start |
太陽系の起源と進化の普遍性・特異性を知るべく,これまで4,000個を超える系外惑星が地上・宇宙望遠鏡によって検出・解析されているが,系外惑星に探査機で近づいて詳細観測できる目途は立っていない.一方で近年,太陽系の外から地球周辺に飛来する小天体である「恒星間天体」が検出されるようになったことで,これらの小天体に対する探査機による至近距離観測の実現性が急速に高まってきた.小天体の放出ガスに突入しながらガス粒子を計測する観測器さえ準備できれば,太陽系外の天体組成の分析が実現できる状況が整いつつある.そこで本研究では,太陽系外小天体の組成分析に必要な中性粒子およびイオンの質量分析器を開発する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題の先にある最終的なゴールは,太陽系外から地球近傍に飛来する恒星間天体を人類として初めて直接探査し,系外惑星系の組成を詳細に解析して「太陽系はどれくらい特別な(あるいはありふれた)世界なのか?」という問いに答えることである.東京大学およびJAXAの工学系研究者との議論では,恒星間天体を超小型探査機でフライバイ観測する現実的な探査シナリオが得られている.しかしながら,最大の問題は,天体の組成分析を行う上で肝心かなめの質量分析器の準備が出来ていないことである.本研究では,これまで地球,月,水星,火星の探査に向けて開発してきた宇宙機搭載用のイオン・電子分析器のヘリテージを生かして,小天体近傍の主成分である中性ガス分子・原子をフライバイ探査で分析できる新たな質量分析器の開発を目的としている. 当該年度は,研究実施計画に沿って,(1)中性粒子分析器に用いる電離部,および(2)イオン質量分析器での分子イオンの計測を実施した. (1)については,酸化イットリアをイリジウム線に塗布したタイプのフィラメントを用いることで,当初の目標通り,1e-3 Paにおいて1 nAのイオン電流が得られた.消費電力についても,目標であった3W程度に抑えることに成功した. (2)については,質量分析器を設計・製造し,イオン質量スペクトルの取得に成功した.そして,この分析器において,フライト実績のある非晶質カーボンフォイルを用いた場合,分子イオンが解離せずに検出されることは極めて少ない(ノイズレベル以下)であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計画は以下の通りであった. 課題1:中性粒子分析器 電離部を製作し,その性能を実験室で評価する.試験では,設計通りのビーム強度でイオンビームが引き出されることを確認する.1e-3 Paにおいて1 nAのイオン電流が得られれば良い.ただし,宇宙機搭載を見据え,消費電力を5W以下に抑えることも目標とする. 課題2:イオン質量分析器 探査機は10-100 km/s程度の高速で天体の大気に突入するため,入射イオンの猛烈なフラックスを抑制するための,コリメータ開発が必要である.このコリメータにはダストに対するシールドとしての役割も課せられる.ダスト環境を精査のうえ,シールドとしての部材の厚みなどを最適化する設計を実施する.また,質量分析の際には,装置内に配置した炭素超薄膜(50Å程度)をイオンが貫通することで信号を出す設計になっているが,このときに分子イオンの多くは原子に解離させられると考えられる.しかし,ここで 1 %でも分子イオンのまま残っていると,観測データの解釈が大きく変わりうるため,薄膜通過時の分子イオンの挙動を正確に調べておくことは極めて重要である.本課題では,質量分析器を試作し,分子イオンのビームを照射させ,そのスペクトルを取得することで,分子イオンの解離について定量的なデータを取得する. 課題1については,設計・製造した電離機構を真空中で稼働させ,目標を達成する性能を確認することができた.課題2の彗星のダスト環境については文献調査を行い,設計のベースとすべきモデルを定めた.また,イオン質量分析器を設計・製造し,分子イオンの検出率を評価することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の進捗を踏まえ,翌年度は以下のような計画としている. 課題1:中性粒子分析器 中性粒子分析器は,装置内で粒子を電離するユニット(電離部)と,電離(=イオン化)された粒子を質量分析するユニット(質量分析部)からなる.本課題では,近年,地上実験室において実用化の進んでいるフーリエ変換型質量分析を採用する.この原理では,試料粒子は分析器内を数千-数万周と往復運動するため,分析器自体のサイズを大きくする必要が無い.この部分でイオンは周回運動し,その際の誘導電流の信号をフーリエ変換することで(周回周期が質量に依存するため)マススペクトルが得られる.この開発の成功は,宇宙機搭載用として世界最高質量分解能を手のひらサイズのセンサで実現する革新的な質量分析器の技術獲得を意味する.本課題では試料ガスとして窒素や二酸化炭素などを用い,分析器のテストモデルを用いて実験室でマススペクトルを取得する.具体的には,質量分析部の誘導電荷計測電極2か所を差動アンプに接続し,その電位差の時系列データをオシロスコープでロギングして,取得データをフーリエ変換する. 課題2:イオン質量分析器 彗星のダストモデルを参照しつつ,ダスト衝突によるシールド材の破砕のシミュレーションを実施しながら,コリメータ設計を進める.また,コリメータの形状を最適化するために,彗星イオン環境のモデリングも実施して観測されるフラックスを見積る.
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)
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[Presentation] Challenges for ion measurements in a comet mission2021
Author(s)
Kasahara, S., S. Yokota, K. Asamura, Y. Saito, M. Hirahara, A. Matsuoka, N. Murata, T. Amano, K. Keika, Y. Ohira, and K. Yoshioka
Organizer
地球惑星科学連合2021年大会
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