Project/Area Number |
21H04510
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 17:Earth and planetary science and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
望月 公廣 東京大学, 地震研究所, 教授 (80292861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 裕亮 京都大学, 防災研究所, 助教 (80725052)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,340,000 (Direct Cost: ¥31,800,000、Indirect Cost: ¥9,540,000)
Fiscal Year 2024: ¥8,710,000 (Direct Cost: ¥6,700,000、Indirect Cost: ¥2,010,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,710,000 (Direct Cost: ¥6,700,000、Indirect Cost: ¥2,010,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,710,000 (Direct Cost: ¥6,700,000、Indirect Cost: ¥2,010,000)
Fiscal Year 2021: ¥10,140,000 (Direct Cost: ¥7,800,000、Indirect Cost: ¥2,340,000)
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Keywords | 地震の巨大化 / 断層境界 / 海洋地殻 / ヒクランギ沈み込み帯 / 流体の挙動 |
Outline of Research at the Start |
将来発生が予想される南海トラフ沿いの大地震では,断層すべりが四国西方沖にある断層境界を超えて九州東方沖にまで達する巨大化の可能性も示唆されている.プレート間固着強度の分布が西南日本によく似ているNZ北島沖のヒクランギ沈み込み帯では,沈み込み帯の構造がほぼ均質で単純なため,プレート間固着強度の決定要因や断層すべりのメカニズムを調査する目的として世界的に最適な研究対象域である.国際共同による海陸統合大規模観測によって,海洋地殻で生成された流体の分布,および断層すべりと流体の挙動を直接捉え,断層境界周辺における断層すべりのメカニズムを明らかにし,地震が巨大化する条件の理解に資する.
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Outline of Annual Research Achievements |
ヒクランギ沈み込み帯中央部におけるプレート間固着強度遷移域において,ニュージーランドの共同研究機関であるGNS Scienceおよびビクトリア大学ウェリントン校と共同で,海陸統合の地震・地殻変動観測網を展開し,2021年5月に海域観測網直下で発生した大規模SSEを直接観測することに初めて成功した.また,海底地震計観測データの解析から,本海域においてテクトニック微動の活動を初めて確認するとともに,その時空間分布について,SSE発生の3か月前から1か月前にかけて,SSE発生域北部からヒクランギ・トラフ軸に沿って固着強度境界まで南下し,最も活発な活動を示した後に一度活動が停止し,さらにSSE発生に伴って固着強度遷移域周辺のみで活動の活発化が見られた.陸域地殻変動観測記録に海底圧力計の記録を加えてSSEのすべり分布について解析したところ,SSEの断層すべりとテクトニック微動の活動域が大きく重ならず,すべり領域が相補的である可能性が示された.さらに,テクトニック微動と通常の地震活動の時空間分布を比較することを目的として,海陸統合地震観測データに深層学習法を適用する準備を進めてきた.特に海底地震計の観測波形に対して手法を適用することを考慮し,海域下を含めた地震波速度構造の検討や,学習データの選択も含めて手法開発を進めている. このプレート間固着強度遷移域でのSSE直接観測の成功を受け,多様な断層すべりプレート境界物性との関係を詳細に調べるため,2021年10月よりSSEが約2年周期で発生するヒクランギ沈み込み帯北部において,地球物理観測網を展開して観測を続けている.2022年10月からはアメリカも共同観測に参加し,海底圧力観測記録から海洋の影響を除くことによってSSEの断層すべりを精度よく決めるための海底流速計も含めた観測を始めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,国際共同による海陸統合大規模観測によって断層すべりと流体の挙動を直接捉え,断層境界周辺における断層すべりのメカニズムを明らかにし,地震が巨大化する条件の理解に資することにある.これまでの研究から,ヒクランギ沈み込み帯の中部におけるプレート間固着強度の大きな変化は,海洋地殻内の流体生成量の不均質に起因し,断層すべりも流体の挙動に依存していると考えられる.本研究では,ニュージーランドの研究機関と共同でプレート間固着強度遷移域周辺において海陸統合地球物理観測網を展開し,約5年周期で発生しているSSEおよびそれに付随するテクトニック微動や通常の地震活動を観測網直下での直接観測し,断層すべりと流体の共同を明らかにすることを目指している. 2021年5月には実際に大規模SSEが海陸統合地球物理観観測網直下で発生し,本海域におけるSSEの直接観測に初めて成功,観測データも無事回収して,重要な成果を上げることができた.現在,この観測データの解析を進めているところであるが,陸域地殻変動観測網に海底圧力計のデータを加え,SSEの断層すべり分布やテクトニック微動の分布を詳細に把握できることが確かめられた.また,海底地震計観測波形を学習データに加え,3次元地下構造を考慮した深層学習による通常の地震活動の把握も進めている. この観測の成功を受け,SSE発生サイクルに伴う多様な断層すべりの事象を観測し,詳細な断層すべり運動の把握,および流体移動との関係を解明するため,ヒクランギ沈み込み帯北部において,アメリカも含めた大規模な海域地震・地殻変動観を展開しており,より高い精度で断層すべりの時空間分布を推定することを目的としている. 以上より,当初計画していた観測,およびデータ解析よりも,さらに進展していると認められる.
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Strategy for Future Research Activity |
約5年周期で大規模なスロースリップの発生が見られるヒクランギ沈み込み帯中部に位置するプレート間固着強度遷移域において,スロースリップや,それに伴うテクトニック微動,および通常の地震における断層すべりの全体像を把握するため,ニュージーランドの研究機関と共同で海陸統合地震・地殻変動観測網展開した.この観測網による2021年5月に発生したイベントの直接観測の成功を受け,スロースリップにおける断層すべり,テクトニック微動の時空間発展,さらに通常の地震活動の震源分布などに関して,ニュージーランドの研究機関と共同で解析を進めていく.特に,海底地震計記録に対する深層学習の手法開発を進める. また,スロースリップの発生サイクルにおける断層すべり現象の全体像把握のために,2021年10月からヒクランギ沈み込み帯北部に,ニュージーランドとの国際共同による海底地震・地殻変動観測網を展開しており,2022年10月からはアメリカを加えた大規模な海域地球物理観測網を展開している. 2023年10月に設置した海底観測機器を2024年9月に回収し,解析を始める.さらに国際共同観測を継続することとし,SSEの発生状況およびこれまでに明らかになったテクトニック微動の活動分布を考慮して今後の観測網を策定した上で,2024年10月に観測網を設置する. 海域下で発生した微動,および繰り返し地震の活動に関する解析手法や,海域下プレート境界における流体の挙動の直接把握を目的とした,海底における環境雑音の自己相関解析によるプレート境界周辺構造の時空間変化の解明に向けた手法の開発を進める.また,海底圧力計による高サンプリング圧力記録について,地震波到達時刻の検測に用いることを目的として,その時刻精度の検証を進める.過去の地震・テクトニック微動の活動を把握するため,これまでに陸域地震観測網で取得された観測波形記録の整備を進める.
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