Project/Area Number |
21H04664
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 31:Nuclear engineering, earth resources engineering, energy engineering, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新堀 雄一 東北大学, 工学研究科, 教授 (90180562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 太詩 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30415880)
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60466539)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,120,000 (Direct Cost: ¥32,400,000、Indirect Cost: ¥9,720,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,850,000 (Direct Cost: ¥4,500,000、Indirect Cost: ¥1,350,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2022: ¥14,300,000 (Direct Cost: ¥11,000,000、Indirect Cost: ¥3,300,000)
Fiscal Year 2021: ¥15,730,000 (Direct Cost: ¥12,100,000、Indirect Cost: ¥3,630,000)
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Keywords | 放射性廃棄物 / 処分システム / セメント系バリア / 核種移行抑制 / 自己修復機能 / 塩水系地下水冠水環境 / カルシウムシリケート水和物 / 共存イオン |
Outline of Research at the Start |
これまでの「地下を用いる放射性廃棄物の処分システム」の概念には、劣化や破損を修復する機能は考慮されていない。社会で最も懸念されることの一つは、「それでもなお生活圏での放射線防護がこれらの処分システムにより達成できるのか」という点にある。 本研究は、処分システムの劣化や破損を逐次的に自己修復するセメント系バリアを開発し、地下の処分システムによる放射性物質(以下、核種と呼称)の閉じ込め機能を10倍に強化する「固有安全性を持つ処分システム」を提示することにより、この社会の問いに答える。ここで、閉じ込め機能の10倍の強化とは、核種の移行速度を従来よりも10分の1以下に抑えることを意味する。
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Outline of Annual Research Achievements |
検討課題(1)地下温度および共存塩類を考慮したCSHによる核種閉じ込め機能の速度論:SrのCSHへの収着は、Ca/Siモル比0.4から1.6の範囲において、ホウ素非共存下ではほぼ100%の収着率となり、ホウ素共存下(400 mM, Na/Bモル比1.0)ではCa/Siモル比の上昇に伴い1割ほど収着率は低下した。これらの傾向はBaの場合と一致した。また、CSHの養生後にSrを加えた場合と養生時からSrを添加した場合を比較した結果、両者の収着率の違いは見られなかった。さらに、養生期間を0.5日から28日間の範囲で、Csの収着率を比較したところ、ホウ素共存下(前述の条件)において14日間以降にホウ素非共存下の収着率に達して安定化した。加えて、EuのCSHへの収着の温度依存性について323 Kにおいて293 Kに比較して蛍光減衰は顕著に遅延し、CSHとのより安定な収着を示した。これらの結果は、多様な地下処分環境においてCSHと核種との相互作用が期待できることを意味する。 検討課題(2)セメント系バリア(CSH)の地下水流動場内生成のダイナミクス:昨年度に提示した数学モデルを改良してマイクロフローセル(0.1 mm未満の花崗岩の亀裂流動場を模擬)を用いた実験結果を評価した。このモデルは、圧力上昇によるCSHの連続的な流出に加え、形成されるCSHのCa/Siモル比の不確実性をも考慮している。評価の結果、Na濃度への見かけのCSH形成速度定数およびSiの溶解速度定数の双方の依存性は一致することを改めて確認した。 検討課題(3)最適なセメント成分および細骨材の組み合わせ:淡水系のみならず塩水系においてもハイドロタルサイト(HT)はヨウ化物イオンを収着し、その収着率は液固比(固相に対する液相の質量)が10から20の範囲において、液固比が低い場合がヨウ化物イオンの収着性は高いことが明らかになった。地下亀裂内での液固比はこれらの条件より小さいことから、HTを細骨材としてセメント系材料に用いることは塩水系でも有効となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
検討課題(1)について、ホウ素共存下ではCSHの安定化に、非共存下に比較して長時間を要した。この挙動は、ホウ酸の液相中の濃度の動的挙動から、一旦ホウ酸カルシウムを形成するものの、次第にCSHにCaが取り込まれることに起因する。本知見は、今後CSH形成への種々の共存イオンの影響を整理する上でも有用となる。 他方、検討課題(2)において、前述のように亀裂内におけるゲル状のCSHのCa/Siモル比は一意には決めることができないが、セメント系材料の処分場での利用に基づき、多量のCaイオンが供給される場であること、pHは通常地下水より高く12程度に達すること、さらに天然に生成されるCSH系鉱物やセメント化学の分野におけるこれまでの知見を総合するとCa/Siモル比は0.8~2.0程度の範囲にあると予想される。提案したモデルでは亀裂内のCaの消費量からSiの溶出量を推算することから、Siの見かけの溶解速度定数の値もCa/Siモル比分だけ異なることになる。そこで、本研究ではこのモル比を補正定数とし、それを見かけの溶解速度定数に掛けた値を評価し、その対数値がNa濃度の対数値に対して線形であることを明らかにした(縦軸は対数であるため補正定数が一定であるとき、速度定数の対数値そのものとNa濃度の対数値との関係を見ることができる)。この方法を浸透率の変化から得るCSHの見かけの成長速度定数にも同様に適用すると、その値のNa濃度への依存性は前述の溶解速度定数の場合と一致した。さらに、双方の速度定数の絶対値の違いから、CSHの見かけの成長速度定数には、コロイドの間隙中の目詰まり等による局所流路の閉塞などの効果も含まれることが示唆された。 加えて検討課題(3)によるHTの細骨材の一部としての塩水系での有用性は、検討課題(2)のCSHの形成に伴う透水性の減少と併せ、ヨウ素の移行抑制にも寄与することが明らかになった。 以上の新たな知見を得ることが出来たことは予想以上の成果と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度では本研究の最終年度としてこれまでの成果に基づき以下を進める。 検討課題(1)(前述):これまで塩水系地下水の影響や廃棄物由来としてホウ素共存系におけるCSHと核種との相互作用について実験を進めてきた。本年度は、これに加え、廃棄物由来である硫酸塩および比較的浅い深度において懸念される炭酸塩の影響について実験を進める。ここで想定する核種はCsとする。また、新たにMgイオンの影響についても検討を進める。加えて、Csのみでなく、CsとEuが共存する系やCsとBa(Csの崩壊に伴い生成)が共存する系についてもCSHへの収着挙動を把握する。また、昨年度から継続しているCSHとEuとの相互作用についての長期共存試験(120日間以上)についての結果をまとめる。 検討課題(2)(前述):これまでマイクロフローセルを用いて亀裂流路でのCSHの析出実験を行い、モデルによる解析を進めた。しかしながら、流動系の圧力損失が大きいため、比較的高い圧力を掛けた流量一定の実験条件となった。そこで本年度では、珪砂充填層を用いて、圧力勾配一定の条件を模擬し、CSHの析出挙動についてX線CT像も活用し、透水性の動的な変化を追跡する。そして、珪砂からのSiの見かけの溶解速度定数およびCSHの見かけの成長速度定数を推算するモデルを提示し、Na濃度によるそれら定数の値の違いを整理する。 検討課題(4)核種収着メカニズムの学術基盤の構築と新たなセメントバリア開発:昨年度まで実施した検討課題(3)「最適なセメント成分および細骨材の組み合わせ」の結果と今年度までの実施する検討課題(1)および(2)の結果を収着メカニズムに基づいて総括し、化学的相互作用とCSHが析出することよる閉塞効果(物理的な作用)との双方の遅延効果を移流方程式(遅延係数を含む物質収支式)に基づき整理する。そして、核種移行が従来に比較して10倍の移行抑制効果を持つ新たなセメントバリアを示すとともに、今後の課題を整理する。
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