Project/Area Number |
21H04671
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 32:Physical chemistry, functional solid state chemistry, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤井 朱鳥 東北大学, 理学研究科, 教授 (50218963)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥37,570,000 (Direct Cost: ¥28,900,000、Indirect Cost: ¥8,670,000)
Fiscal Year 2024: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2023: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2022: ¥6,500,000 (Direct Cost: ¥5,000,000、Indirect Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2021: ¥18,070,000 (Direct Cost: ¥13,900,000、Indirect Cost: ¥4,170,000)
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Keywords | 半結合 / クラスター / 電子スペクトル / 電荷共鳴状態 / 電子遷移 / 水 / 水素結合 / 電子分光 / 2c3e結合 / 赤外分光 / ラジカル / カチオン / 2中心3電子結合 / 解離分光 / 非調和振動 / 分子分光 / イオン化 |
Outline of Research at the Start |
ラジカルカチオンが形成する半結合(2中心3電子結合)の生体系における役割には近年強い関心が集まってが、その実験的証拠はきわめて薄弱である。また、水の半結合形成は、実験的証拠が未だ全く得られておらず、水の化学における大きな未解決課題のひとつとなっている。本研究では、気相における半結合モデルクラスターの分光研究により、生体(関連)分子や水における半結合形成の可能性とその形成条件の厳密な検証を行う。また、理論計算と直接比較可能である気相クラスターの利点を生かし、半結合の理論計算に対してベンチマークとなる実測データーを確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要課題である半結合クラスターのsigma-sigma*電子遷移((s,s*)遷移)観測に取り組み、赤外分光で半結合構造が確定された(N2O-H2O)+ラジカルクラスターカチオンにおいて、紫外ー可視域に跨がるブロードな吸収として半結合の(s,s*)遷移の観測に成功した。 更にこれまで水素結合型構造しか生成が確認されていなかった(H2O-Arn)+ラジカルクラスターカチオンにおいても紫外ー可視域の遷移を測定した。観測されるスペクトルの検出解離フラグメント依存性から2種の異性体構造がスペクトルに寄与していることを見いだし、水素結合型構造に加えて、半結合型構造が少数成分として存在していると解釈した。この系については更に、東北大学美齊津文典教授との共同研究により可視光解離のフラグメントイオンのイメージング測定を行い、解離光の偏光(遷移モーメント方向)と解離フラグメントの速度分布との相関からも2種の構造の共存を確認することが出来、半結合型構造の生成を決定づけることに成功した。 また南カリフォルニア大学Andrei Vilesov教授、理化学研究所久間進博士、北里大学水瀬賢太講師らとの共同研究により、極低温のヘリウム液滴中に生成した(H2O)2+ラジカルカチオンクラスターの赤外分光結果を解析した。その結果、長年に渡って実際の生成が確認できなかった水ー水分子間の半結合に対する初めての実験的確証を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる実験手法であるブロードバンド発振OPOを用いた半結合電子遷移の観測には(N2O-H2O)+系で初観測に成功し、この系をベンチマークとして、様々な系における未確認の半結合を探る目処を付けることが出来た。新規の系の最大の目標は水のダイマーラジカルカチオン(H2O)2+であったが、この系ではどうしても可視ー紫外領域に吸収が観測されず、我々のイオン源では冷却効果の限界により、半結合型イオンを生成できていないと結論づけた。しかし、南カリフォルニア大学Andrei Vilesov教授、理化学研究所久間進博士との共同研究が始まり、ヘリウム液滴中という予想外の条件下で、目的であった水ー水間の半結合生成の確認を行う事が出来た。また、紫外ー可視分光は(H2O-Arn)+に対しては順調に進展し、理論的予想しかなかった半結合構造の寄与を確認することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度に観測に成功した半結合系[H2O-(N2O)n]+の(s,s*)遷移を標準として利用し、親イオン強度と観測される(s,s*)遷移(フラグメント信号強度)との相関関係を調べ、密度汎関数法から計算される遷移強度を利用して、遷移強度と実測信号強度との対応関係 を確立する。 続いて半結合形成が確認されている(H2O-N2O)+系において、新たな水分子間の水素結合ネットワーク形成の半結合への影響を調べるため、[(H2O)n-N2O]+ラジカルクラスターカチオンの電子遷移測定を行う。ここでは併せて赤外分光も行い、その結果とも比較を行うことで(s,s*)遷移観測による半結合研究の有効性を検証する。 また理化学研究所の久間進博士と共同して、ヘリウム液滴中に生成させた水ラジカルクラスターカチオンの可視・紫外分光を行い、昨年度に赤外分光で観測に成功した半結合(H2O)2+クラスターにおける(s,s*)遷移の観測を目指す。この実験では、東北大から理化学研究所に可視・紫外OPOを一時的に移設して測定を行う。 加えて、水和OHラジカルが氷表面の可視吸収に関与しているという仮説の検証のため、比較的大きなプロトン移動型水ラジカルクラスターカチオンの可視分光を試み、OHラジカルの電子遷移に対する水和効果を明らかにする。
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