Project/Area Number |
21H04696
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 36:Inorganic materials chemistry, energy-related chemistry, and related fields
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本間 格 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90181560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高石 慎也 東北大学, 理学研究科, 准教授 (10396418)
永村 直佳 国立研究開発法人物質・材料研究機構, マテリアル基盤研究センター, 主任研究員 (40708799)
小林 弘明 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (90804427)
井口 弘章 東北大学, 理学研究科, 助教 (30709100)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,730,000 (Direct Cost: ¥32,100,000、Indirect Cost: ¥9,630,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,670,000 (Direct Cost: ¥5,900,000、Indirect Cost: ¥1,770,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,580,000 (Direct Cost: ¥6,600,000、Indirect Cost: ¥1,980,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,970,000 (Direct Cost: ¥6,900,000、Indirect Cost: ¥2,070,000)
Fiscal Year 2021: ¥10,400,000 (Direct Cost: ¥8,000,000、Indirect Cost: ¥2,400,000)
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Keywords | リチウムイオン電池 / 有機レドックス分子 / 界面電荷移動 / ナトリウムイオン電池 / 有機電極材料 / 蓄電池 / 有機二次電池 / レアメタルフリー電池 / 有機電極 / 有機ナノ結晶 / 有機電極活物質 / 二次電池 / ナノ結晶 |
Outline of Research at the Start |
電気自動車などの世界的な市場拡大に伴いコバルトなどの希少金属資源の逼迫が懸念されている。この課題の有望な解決策はレアメタルフリーな有機電極材料の開発である。理論上は有機分子官能基の多電子レドックス反応を利用すれば現在リチウムイオン電池に使用されている無機系電極材料を凌駕する高い蓄電エネルギー密度が可能である。本研究は有機分子材料の多電子レドックス反応を利用した高容量電極材料開発を目的に、ヘテロ界面の電荷移動現象を利用して絶縁性の有機分子結晶を導電体に改変する新原理に基づく導電性有機材料を創製する。未開拓の有機材料からレアメタルフリー・安価・高容量電極材料を開発し蓄電池の産業競争力強化に貢献する
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Outline of Annual Research Achievements |
有機レドックス分子は高い電位と可逆的な多電子レドックス反応の制御が可能なことから高容量・高出力型のナトリウムイオン電池の候補電極材料である。令和5年度は有機レドックス分子であるクロコン酸の多電子レドックス反応容量が利用できるナノ界面技術を開発した。劣化要因の一つである有機分子の電解液への溶出抑制を目的にアセトニトリル系濃厚電解液を適用して起電反応の安定化を図った。初回充電時に2電子レドックス容量323mAh/gが得られ、放電は1電子レドックス容量の184 mAh/gであった。放電容量が184 mAh/gに留まった原因としては2つ目のNaイオンとのファラディック反応を阻害する例えば2量体形成などが想定される。アセトニトリル系濃厚電解液でのサイクル特性評価の結果は10サイクル後の放電容量維持率が80%となり、令和4年度まで検討してきた飽和NaPF6 PC電解液の結果よりも高い維持率を示すことが判明した。有機ナトリウム電池に関して出力特性を調べた結果、1Cレートまでは容量低下が見られず無機系電極に劣らない出力性能であった。このような有機ナトリウム電池として世界最高レベルの蓄電池性能が得られたのは濃厚系電解液を適用した結果だと考えられる。PC 電解液中での支持塩NaPF6濃度を0.5Mから2.0Mまで変化させながら充放電サイクル特性を評価した結果、2.0Mが最も良いサイクル容量維持率を有していた。高濃度系電解液ではフリーのPC溶媒が少なくなりクロコン酸の溶解度が低下した結果だと考えられる。さらに負極にハードカーボン、正極にクロコン酸ナトリウム(C5O5Na2)を用いてフルセルを作製して電池特性を評価した結果、初回充電は3.7V付近の平坦電位で323mAh/g、初回放電は3.5V付近で184 mAh/gの電極容量が得られた。3.5V級の実用的なナトリウムイオン電池を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資源的制約の少ない有機ナトリウムイオン二次電池の材料・デバイス開発を進捗させた。令和5年度はクロコン酸ナトリウム(C5O5Na2,理論容量288 mAh/g)を正極に用いてハードカーボン負極と組み合わせたフルセルで3.5 V級の高電位Na電池の実証に成功した。特に有機分子の溶出抑制及びサイクル特性向上を目的としてナトリウムビスフルオロスルホニルイミド(NaFSI)とアセトニトリル(AN)から構成される濃厚電解液を適用した結果、良好な充放電サイクル特性を得ることが出来た。濃厚電解液はNaFSIとANをモル比で1:2で調整し、正極はクロコン酸ナトリウム、カルボキシ基修飾多層カーボンナノチューブ、PTFEを重量比で23.5 : 71.5 : 5.0 wt%で混合して作製した。負極はハードカーボンとPVDFが90:10 wt%となるよう調製して電池コインセルを作製した。充放電レート0.2 C、カットオフ電位2.5-4.0 Vとし25°Cで定電流充放電測定を行った。初回充電容量は323mAh/gを示しクロコン酸ナトリウムの2電子酸化反応が進行していることを確認した。初回放電容量は184mAh/gを示し約3.5Vに放電プラトーが確認されたことからAN系濃厚電解液においても有機二次電池が充放電動作することが確認された。サイクル特性評価の結果は10サイクル後の放電容量維持率が80%となり、令和4年度まで検討してきた飽和NaPF6 PC電解液の結果よりも高い維持率を示すことが判明した。濃厚電解液のラマン分光測定を行ったところ5 M以上の高濃度においては未配位のANピークが減少していることが判明した。Na支持塩の高濃度化によりフリーに存在する溶媒分子が減少した結果、有機分子の溶出が抑制され、クロコン酸を活物質とした有機ナトリウム電池の充放電サイクル特性が向上したことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は有機レドックス分子の活物質利用技術を発展させて4電子レドックス反応を利用する大容量化と3.5V以上の高電位化を実現するナノ界面技術の研究開発を進捗させる。さらに高いCレートでも充放電できる高出力化、100回以上の充放電サイクルでも容量劣化の見られない実用レベルの電池特性を実証する。令和5年度の実験結果では放電過程で1電子レドックス反応に留まってしまう結果になったが、これを解決するために有機分子2量体形成の阻害、クロコン酸分子の官能基修飾、カーボン表面・ナノ細孔への担持固定化など電極容量と充放電サイクル向上に効果的なナノ界面技術を開発する。具体的な目標としてクロコン酸の理論容量288mAh/gを平均電位4Vで充放電出来れば1152mWh/gの高い蓄電エネルギー密度となるが、これは実用化されている無機系電極LiCoO2やLiFePO4と比較して約2倍の蓄電エネルギー密度になる。令和6年度はクロコン酸の理論容量を最大限利用するために有機分子への官能基修飾、六員環や四員環分子とのハイブリッド、カーボンナノチューブへの強結合担持など新しいナノ界面技術の開発を進めることにする。 さらに高電位化・高容量化を目的に、より小さな分子である四角酸リチウム(Li4C4O4)の4電子レドックス容量766mAh/gの利用技術も検討する。この活物質容量を4.0Vで利用出来れば3063mWh/gと5倍以上の蓄電エネルギー密度が期待できる。令和5年度の研究成果でレアメタルフリーのナトリウムイオンを用いてクロコン酸の電極特性を評価した結果、3.5V領域に約184mAh/gの世界トップ級の高容量特性を見出した。これは有機電池の蓄電エネルギー密度として世界最高値であり、令和6年度はさらに四角酸などの研究報告例のない有機レドックス分子を用いて容量アップを図り有機電池としての世界最高性能を更新する。
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