Project/Area Number |
21H04707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 37:Biomolecular chemistry and related fields
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村田 道雄 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任教授 (40183652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花島 慎弥 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (50373353)
土川 博史 大分大学, 医学部, 特任講師 (30460992)
梅川 雄一 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (20587779)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥38,350,000 (Direct Cost: ¥29,500,000、Indirect Cost: ¥8,850,000)
Fiscal Year 2024: ¥5,460,000 (Direct Cost: ¥4,200,000、Indirect Cost: ¥1,260,000)
Fiscal Year 2023: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
Fiscal Year 2022: ¥8,320,000 (Direct Cost: ¥6,400,000、Indirect Cost: ¥1,920,000)
Fiscal Year 2021: ¥16,250,000 (Direct Cost: ¥12,500,000、Indirect Cost: ¥3,750,000)
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Keywords | 脂質ラフト / 生体モデル膜 / 糖脂質 / 非対称脂質二重膜 / 脂肪鎖の指組構造 / 同位体標識脂質 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、生体膜の機能を再現できる新しい脂質二重膜のモデルを創出する。そのためには、二重膜の外側と内側、およびそれらの界面の脂質分子の相互作用を解明し、その共通性・法則性を知ることが最も重要である。しかし、生体膜は脂質以外の多様な成分を含む非常に複雑な分子集合体であるので、共通性・法則性を調べるには適していない。そこで本研究では、脂質の形と動きを調べるために標識を付けた膜脂質を化学合成し、それらを組み込むことによって、生体膜の特徴を再現できる新しいモデル脂質膜を作り出す。それらを各種の分析法に供することによって、生体膜特有の機能を司る分子構造および相互作用を解明して生体膜の理解を深める。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、前年度に作製した非対称性を備えた脂質二重膜モデルにおける同位体標識脂質の動きを分光学的に測定することに重点を置いて研究を進めた。今後の非対称膜実験の基礎知見となる脂質の膜葉間の移動(フリップ・フロップ速度)を定量的に解析することが重要と考え、重水素標識脂質と固体NMRを用いる独自の手法を開発して、各条件における移動速度を測定した。その結果、先行研究での推定速度のうち比較的遅い値に一致すること、また、細胞膜で見られるような脂質組成の非対称性が膜脂質の葉間移動に与える影響は比較的軽微であることが分かった。 各膜葉のインターディジテーション(指組構造)を精査するために、葉間境界部分における脂質末端部の動態を選択的に観測する蛍光プローブの開発が望まれていた。そこで我々は、既存の蛍光プローブの鎖長を伸ばした化合物tetracosa-16,18,20,22-tetraenoic acid を化学合成し、その脂質オーダーの検出能を深度依存的に調べた。その結果、より深い部分における脂肪鎖を動き(オーダー)を本プロ―ブを用いて観測することに成功した。 さらに、膜貫通タンパク質との相互作用において、脂質二重膜の動き(オーダー)の変化を精査した。すなわち、モデル膜タンパク質として用いたバクテリオロドプシンの存在下、脂質分子の動態変化をヘッドグループと脂肪鎖を異にする飽和リン脂質の固体NMR測定によって精査した。その結果、ヘッドグループ、グリセロール部分、アシル鎖がそれぞれ膜タンパク質の生物機能を支える立体構造の保持に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、安定同位体で標識を付した膜脂質プローブを用いて、脂質の形と動きを調べるために水和二重膜の分光学的解析(主に固体NMR)を行った。その結果、研究実績の概要に示した様に膜脂質のフリップ・フロップ速度の測定、膜深部における脂肪鎖の挙動の観測、膜貫通タンパク質と周辺脂質との部位特異的相互作用の生物機能への寄与などについて具体的な測定値を得ることができた。特に、非対称モデル膜における基礎的知見を得られたことは、現在なお議論が続いている細胞膜におけるコレステロールなど膜脂質の内外葉分布に明確な答えを与えるヒントとなるものと期待している。これら研究成果を総合的に考察することによって、生体膜構成脂質の生物機能の理解が深まるものと期待している。 以上により、本研究の三年度目を終了した現時点で、当初の目的に照らして十分な進捗が認められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度・最終年度において、以下の3つのテーマを推進することで研究全体のまとめを行い、当初の目標を達成したい。非対称二重膜をベースとする各種モデル膜の作製を通じて、生体膜類似モデル膜の創出を目指す。以下に項目毎の推進方策を具体的に述べる。 a) 内葉脂質および外葉脂質のコンフォメーション解析: 本年度に続き、非対称膜において内葉に局在する脂質ホスファチジルイノシトール(PI)のドメイン形成能を調べる。また、細胞膜の機能モデルとして重要なスフィンゴミエリン・コレステロールによって形成されるナノサブドメインとPIなどの内葉脂質との葉間相互作用の解析を進める。 b) 内葉と外葉の疎水層の構造相関による葉間脂質相互作用のメカニズムの解明: 対称膜および非対称膜を用いて、通常の細胞膜の相状態であるLd相における不飽和リン脂質のインターディジテーション(指組み構造)の観測およびその相状態への影響を評価する。また、平行してLo相/Ld相からなる非対称膜における外葉と内葉のコレステロール分布比を決定し、そのドメイン構造に与える影響を精査する。 c) 膜ドメイン形成における生体内微量脂質の役割の解明: 引き続きコレステリルグルコシドやその機能アナログ(サポニンを想定)などのステロール配糖体、および特定の環境条件下で消長する膜脂質のドメイン形成効果を調べることで、これらの少量の膜ステロールおよびリン脂質の生体膜における機能を評価する。
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