Why can microorganisms withstand drying? Elucidation of drying adaptation mechanism by glass transition of microbial cells
Project/Area Number |
21H04710
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 38:Agricultural chemistry and related fields
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小関 成樹 北海道大学, 農学研究院, 教授 (70414498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川井 清司 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (00454140)
中川 洋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (20379598)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥42,770,000 (Direct Cost: ¥32,900,000、Indirect Cost: ¥9,870,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,270,000 (Direct Cost: ¥7,900,000、Indirect Cost: ¥2,370,000)
Fiscal Year 2022: ¥11,700,000 (Direct Cost: ¥9,000,000、Indirect Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2021: ¥20,800,000 (Direct Cost: ¥16,000,000、Indirect Cost: ¥4,800,000)
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Keywords | ガラス転移 / 水分活性 / 含水率 / 適合溶質 / 中性子散乱法 / 乾燥耐性 / 熱分析 / 乾燥 / 水分 / 微生物 |
Outline of Research at the Start |
乾燥食品(環境)において微生物が長期間にわたり生残するための乾燥ストレス耐性を獲得するメカニズムを,微生物細胞のガラス転移現象に焦点を絞り,その物理的状態の変化の観点から明らかにする。食中毒細菌の制御から有用細菌の安定保存までを可能とする科学的な基盤を構築することを目的とする。具体的には以下の3つの研究課題について取り組む。 ①各種微生物の乾燥ストレス応答に関する統一的解釈を可能とする微生物細胞のガラス化理論を構築する。 ②微生物のガラス化に至る過程が乾燥微生物のガラス転移温度に与える影響を解明する。 ③乾燥食品中の有害微生物の制御あるいは有用微生物の安定保存のための新たな技術戦略を構築する。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでに検討されていないグラム陽性病原菌の一つであるBacillus cereusを対象として、ガラス転移現象と乾燥耐性との関係性の普遍性を検討するとともに、乾燥過程の違いが細菌細胞のTgや生存挙動に与える影響を明らかにすることを目的とした。その結果、B.cereus細胞のガラス転移温度は、乾燥方法や保存aw、乾燥温度の影響があった。さらにTgと菌体を保存した温度の差を用いることで、乾燥条件や乾燥後の保存条件の違いによらず、乾燥環境下におかれたB.cereus細胞の生存挙動を判断できることが分かった。 凍結乾燥した細菌(Cronobacter sakazakii)を様々な水分活性(aw)に調製し、25℃での応力緩和挙動を調べた。低aw領域では殆ど応力緩和しなかったが、高awでは応力緩和が見られた。応力緩和の度合いとawとの関係から、細菌が軟化(力学応答として捉えたガラス-ラバー転移)を開始するawを決定した。一方、重水を用いて様々なawの細菌試料を調製し、中性子弾性散乱から原子(主に水素)の平均二乗変位(mean square displacement, MSD)を温度の関数として評価した。MSDの温度依存性が変化する温度を動力学転移温度(dynamical transition temperature, Td)として決定し、最も高温で認められたTdはawの増加と共に直線的に低下し、Tdが25℃になるときのaw は、力学的ガラス-ラバー転移が起こるawと一致した。細菌を親水性の非晶質高分子と仮定すると、静菌した細菌が活動再開するには緩和時間10^-5秒程度の分子ダイナミクスが必要であると見積もられた。高分子科学分野では非晶質材料に硬化剤や可塑剤を配合することでガラス-ラバー転移温度を変化させて品質を制御している。これと同じように微生物の静菌挙動も制御できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画どおりに研究が進捗しており、対外的な発表(研究論文、学会発表)も着実に実施できている。研究内容的にも、新たな知見が複数えられているだけでなく、研究グループ内での連携も着実に実行されている。特に、中性子非弾性散乱手法の高度化に関わる装置の試料環境の高度化や機器開発を行った。具体的には、中性子準弾性散乱により食品蛋白質の水分活性に対する塩の影響を解明や、同位体コントラスト法による食品中の水の動態を解明し、水分活性と水の物理化学的特性の関係性を解明した。さらに、中性子非弾性散乱とテラヘルツ分光の相補性や共通性に着目した総説を出版した。それぞれの手法についての総説は多数あるなか、両者の手法の関係性やそれに着目したサイエンスに関する総説は初めての成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は,微生物のガラス転移挙動を解明した上で,ガラス転移温度(Tg)を 基軸とした新たな微生物生態の包括的な理解を可能とする基盤理論を構築することである。これまでに細菌のガラス化を証明することはできたが,同時にそれだけでは 説明できない幾つかの結果が得られたことを先に説明した。これに対して,微生物のTgは環 境に応じて変化し得 ること(課題2),菌体の内部と界面とで異なるガラスを形成した二重 ガラス構造を有しているであろうこと(課題3)を新たな仮説とし,過去に提唱したガラス化概念と何ら論理矛盾なく,独自性をさらに高めるのが本研究の目標である。 本研究の目的を達成するためには,1微生物種によるTgの相違(普遍性の検証),2ガラス化履歴によるTgの相違(環境適応能力の定量化), 3乾燥 微生物の二重ガラス構造仮説の証明と利用,の各課題を遂行する必要がある。小関成樹は、前年までの研究で明らかにした適合溶質を試料として用い,awがTgに及ぼす影響を 示差走査熱量計(DSC)によって用いて明らかにする。また,全ての研究成果を総括する。分担研究者 中川洋は 適合溶質を試料として用い,awがMSDおよび赤外スペクトルに及ぼす影響を明らかにする。また,可塑剤並びに硬化剤の添加に伴う変化を検討 する。この 試料条件は,小関・川井らの研究成果にしたがって決定する。分担研究者 川井清司は小関が明らかにした適合溶質を試料として用い,可塑剤および硬化剤が適合溶質の Tgに及ぼす影響を示差熱・熱重量同時測定 および昇温レオロジー測定によって明らかにする。 また,可塑剤(ポリオールなど)ならびに硬化剤(水溶性多糖など)の添加に伴う適合溶質のT g変化を検討する。小関とは情報共有並びにデータ補完しながら効率的に研究を進める。
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Report
(3 results)
Research Products
(8 results)