Project/Area Number |
21H04921
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 63:Environmental analyses and evaluation and related fields
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安田 一郎 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (80270792)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 顕 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70396943)
松村 義正 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70631399)
田中 雄大 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(横浜), 研究員 (10750391)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥42,510,000 (Direct Cost: ¥32,700,000、Indirect Cost: ¥9,810,000)
Fiscal Year 2024: ¥7,020,000 (Direct Cost: ¥5,400,000、Indirect Cost: ¥1,620,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,660,000 (Direct Cost: ¥8,200,000、Indirect Cost: ¥2,460,000)
Fiscal Year 2022: ¥7,800,000 (Direct Cost: ¥6,000,000、Indirect Cost: ¥1,800,000)
Fiscal Year 2021: ¥17,030,000 (Direct Cost: ¥13,100,000、Indirect Cost: ¥3,930,000)
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Keywords | 二重拡散対流 / 乱流 / 海洋循環 / 海洋生態系 / 気候 / 鉛直混合 / 海洋モデリング / 直接数値計算 / 気候影響 |
Outline of Research at the Start |
西部北太平洋亜寒帯海域や南極周辺海域において、申請者によって発見された、大きな水温拡散に、拡散型二重拡散がどう関与しているか、また、鉛直方向の熱輸送に寄与する成分はどれほどか?、表層水温を通じて気候に影響しているのか、 東北沖で発見されたソルトフィンガーに伴う大きな塩分拡散が、いつどこで、どのような条件で発生し、どのように塩分構造や栄養塩輸送を変えて、東北沖の高い生物生産に寄与しているのか?これらの問いについて、観測、直接数値計算(DNS)、海洋・気候モデリングの手法を統合的に用いて、明らかにすることを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年9月に水産研究・教育機構・水産資源研究所の若鷹丸航海において、北海道南沿岸域海底斜面に沿って亜表層に分布するオホーツク起源と考えられる等密度面間の厚みが大きい親潮水を対象に、同じ水深を曳航する水平乱流観測と水平高解像度鉛直乱流観測を組み合わせた連続観測を行うことができた。みらいMR2203航海において2021年7月に47N,160Eに投入した微細構造センサを搭載したフロートの回収に成功した。フロート乱流観測によって、800-1500mの中深層において、冬季に乱流強度が他の季節に比較して数倍大きくなることが発見された。この中深層での乱流強化は、密度データから得られるストレインには現れておらず、海面で励起された近慣性内部波の到来によって、流速鉛直シアが強化されたことに対応していたことが推測された。また、亜寒帯での3日間連続観測から、水温が上ほど低くなる拡散型二重拡散の水温塩分構造に対応して、エネルギー散逸率は低いが水温消散率が大きくなり、階段構造が出現することが明らかとなった。これまで北太平洋西部海域で見過ごされてきたソルトフィンガー活発域が、3月に塩分前線である亜寒帯境界(北緯40度)に沿う緯度方向の密度比=1-2の海水が亜表層に貫入することで出現し、4-8月に不安定を解消しながら減少すること、また、この海域でのソルトフィンガー活発域での密度が低下傾向にあり、それが海面付近での密度比=1-2の海水の水温上昇・低密度化傾向に対応していること、を見出した論文をJournal of Physical Oceanographyに投稿した。みらい航海、凌風丸6航海啓風丸6航海、白鳳丸2航海における高速水温計観測を実施し、二重拡散の消長に関わる基礎データを収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年7月に47N,160Eに投入した微細構造センサを搭載したフロートの回収が成功し、冬季を挟んだ約1ヶ月間隔の西部亜寒帯海域の構造変化を微細構造・乱流構造も含めた世界初の観測データを取得することができ、冬季に800-1500mでの乱流が強化されていることが発見されたことは、大きな成果として特筆される。併せて、亜寒帯海域での水温極小から極大にかけての拡散型二重拡散可能域での水塊変質と微細構造・乱流構造を同時に捉えることができるフロート観測データ(2021/7-9月)および2022年5月に3日間の定点連続観測を実行できたことは、亜寒帯海域で拡散型二重拡散が熱の鉛直輸送をどの程度強化するのか、定量的な観測データを与える成果として、評価できる。2021年度に繰越を行なっていた、高速電気伝導度センサを用いた微細構造観測を、2022年5-6月のみらい航海で亜寒帯から亜熱帯、ならびに、9月の若鷹丸航海行うことができ、ソルトフィンガーおよび拡散型二重拡散の発生可能海域において、観測データを取得することができた。さらに、ソルトフィンガー型二重拡散活発域を西部北太平洋の北緯40度に沿った海域で新たに見出し、その季節・経年変動からソルトフィンガー形成域の水温が上昇傾向にあることを記述し、その形成過程を論じた、Journal of Physical Oceanography誌に投稿した論文は、査読で高い評価を受けており、間も無く受理される見通しである。これらの観測にもとに、モデリングを進める準備ができつつあり、研究は順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研費の主要なテーマの一つである、上ほど低温低塩分となる海域での分子拡散の水温塩分の差に基づく理論によって説明できない階段構造形成について、最近、浮力レイノルズ数100以下の弱い乱流で特徴つけられる成層乱流下での、拡散型二重拡散について、モデルと理論を合わせた研究が出版された。この研究によると、水温渦拡散係数が塩分渦拡散係数より大きくなり、浮力レイノルズ数の減少に従い、その差が拡大し、分子拡散に至る、というもので、より広範に拡散型二重拡散による階段構造が発生しうる可能性が示唆された。2023年度は、モデル理論研究をさらに深化させ、特に鉛直熱輸送について影響を明らかにし、研究観測から得られた観測データとの比較を行う。また、大規模なモデルを用いて、この現象が亜寒帯海域での鉛直熱輸送などに果たす役割の解明につなげる。ソルトフィンガー活発域が、3月に塩分前線である西部北太平洋亜寒帯境界(北緯40度)に沿う水平方向の密度比=1-2の海水が亜表層に貫入することで出現し、近年高温化低密度化し存在水深が浅化する、という温暖化に対応している顕著な変動についての論文は現在改訂中である。これらの結果を元に、ソルトフィンガーによって強化される塩分・栄養塩鉛直拡散係数を見積もり、海洋循環・生態系モデルに導入することにより、40Nに沿った高い生物生産による栄養塩・炭素の季節的減少をどの程度説明できるか、明らかにする。凌風丸・啓風丸・白鳳丸・新青丸のCTDに取り付けた高速水温計観測を行い、二重拡散出現海域の鉛直拡散の構造と水温・塩分・栄養塩輸送の実態を明らかにする観測を継続する。
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