Project/Area Number |
21H04930
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 63:Environmental analyses and evaluation and related fields
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
牧 輝弥 近畿大学, 理工学部, 教授 (70345601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 到 近畿大学, 情報学部, 教授 (10247950)
定金 香里 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (20322381)
黒崎 泰典 鳥取大学, 国際乾燥地研究教育機構, 教授 (40420202)
石塚 正秀 香川大学, 創造工学部, 教授 (50324992)
大西 一成 聖路加国際大学, 専門職大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生大学院), 准教授 (50596278)
能田 淳 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (70551670)
松木 篤 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90505728)
市瀬 孝道 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50124334)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,600,000 (Direct Cost: ¥32,000,000、Indirect Cost: ¥9,600,000)
Fiscal Year 2024: ¥10,530,000 (Direct Cost: ¥8,100,000、Indirect Cost: ¥2,430,000)
Fiscal Year 2023: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2022: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
Fiscal Year 2021: ¥9,230,000 (Direct Cost: ¥7,100,000、Indirect Cost: ¥2,130,000)
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Keywords | バイオエアロゾル / 黄砂と煙霧 / 越境汚染 / パンデミック / 長距離輸送 / 微生物群集構造 / 環境汚染 |
Outline of Research at the Start |
黄砂や煙霧とともに微生物群(バイオエアロゾル)が,アジア大陸から日本へ越境輸送され,日本での環境・健康影響が懸念される。これまで,東アジア(日中韓蒙)での黄砂を捕集する高高度調査(気球, ヘリコプター)によって,越境輸送される微生物種組成は,日本海と太平洋の沿岸で大別でき,その生体影響も異なる可能性を突き止めた。しかし,従来の観測地点は日本海沿岸に偏り,太平洋沿岸へと沈着する微生物の詳細を講じる観測データは不足している。本申請では,日本本土での観測地を拡充し,「越境微生物の国内での拡散・沈着過程」を理解すると伴に,生理学実験・疫学的調査によって,生態・健康影響を評価する。
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Outline of Annual Research Achievements |
黄砂や煙霧とともに微生物群(バイオエアロゾル)が,アジア大陸から日本へ越境輸送され,日本各地へと拡散沈着するため,その環境・健康影響に学術的関心が集まる。申請者らは,東アジア(日中韓蒙)において,黄砂を捕集する高高度調査(気球, ヘリコプター, 山岳積雪を使用)を行い,黄砂煙霧で運ばれる微生物の種組成とその健康影響が,日本海沿岸と太平洋沿岸で大別できる可能性を突き止めた。しかし,観測は日本海側に偏り,太平洋側への国内移送や沈着程度を講じる観測が不十分であった。本申請では,日本本土(日本海ー太平洋)の観測地を拡充し,「越境微生物の国内での拡散・沈着過程」を理解すると伴に,その影響を評価する。 黄砂飛来時に日本海側(能登)と太平洋側(大阪,京都)の上空2500mにおいてヘリコプター観測を行い,高高度の大気粒子を捉えた。黄砂・煙霧発生が頻発する春から初夏(4月-6月)には,金沢,鳥取,香川,東京,大阪,北海道の観測地において,建物屋上(高さ10m)で長期観測した。大気試料のゲノムDNA(環境ゲノム)に含まれる細菌・カビの分類指標遺伝子(16SとITS)配列を解読し,遺伝子解析ソフト(R)で微生物群集構造を解析したところ,黄砂と煙霧によって日本海側には越境群(大陸から越境輸送された微世物群)が優占し,太平洋側は越境種とローカル群(日本周辺由来の微生物群)の真菌が混合しやすい傾向が見られた。感染症(非結核抗酸症など)の原因菌も検出され,潜在的に長距離拡散される可能性も見出した。またカビ毒が観られる分離株の数も増やし,アレルギー誘発も動物実験で実証された。これより,黄砂煙霧とともに都市部まで拡散する有害種の候補に目処が立ちつつある。 本成果は,環境系の有名学術誌(AE,月刊地球)に多数掲載された。また,一般からの注目も熱く,活躍する開発者を紹介するテレビ番組「探究の階段」などで放送された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年春は,規模の大きな黄砂が度々飛来し,ヘリコプターによって,日本海側(能登半島)と太平洋側(大阪,京都)の上空2500mにて純度の高い黄砂粒子試料が高濃度で得られた。また,黄砂・煙霧が発しやすい春から初夏(4月-6月)にかけて,金沢,鳥取,香川,東京,大阪,北海道において,建物屋上(高さ10m)の大気試料を長期的に採取した。大気試料から直接抽出したゲノムDNA(環境ゲノム)から16S rRNA遺伝子とrDNAのITS領域(細菌・カビの種分類指標)をPCR増幅させ,その遺伝子情報を解読した。微生物群集構造を解析したところ,2022年度に引き続き,黄砂と煙霧によって細菌は越境しやすく,本国内において真菌と混合する傾向が見られ,感染症(非結核抗酸症)の原因微生物も検出された。更に,大気試料に含まれる機能遺伝を解読した結果,大気環境ストレスに耐え生残が高まる機能を,高高度を浮遊する微生物が有していることが判った。カビ毒生成菌の株数も増え,有害種(キーストーン種)の候補であるAspergillus株のアレルギー誘発も動物実験で実証された。さらに,バイオエアロゾルの蛍光自動測定装置(WIBS-NEO)を東大阪で作動させ,マンチェスター大と共同で,有害種の環境モニタリングに向け,得られたデータを解析中である。 従って,黄砂で運ばれた有害微生物の国内拡散プロセスを理解するデータが蓄積されつつあり,一部の研究成果は,環境系の有名学術誌(AE,月刊地球)や国際会議(EGU23)で発表され,順調に成果が蓄積されていると判断できる。なお,蘭州大学と中国科学院の共同研究者が入手した大陸側のデータを使用することで,黄砂煙霧発生源の微生物情報も補充できた。令和6年度には黄砂発生源を含めた東アジアの観測を充足化させ,データの裏付けが得られると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度に続き,黄砂・煙霧時に大気試料を一斉に捕える観測(4月-6月)を継続する。今回は,発生源であるゴビ沙漠での観測を充足化し,大陸側の微生物群を詳細に解析し,大陸と国内の比較を深化させる。大気微生物群のゲノム情報を増やし,拡散沈着と潜在的な病原性を検証する。分離株も増やし,培養実験と疫学的調査による【生態・健康への影響評価】を本格化する。 バイオエアロゾルの環境分布を円滑に調べるため,キーストーン種(MycobacteriumやAspergillusに絞る)の遺伝子配列に特異的に結合するDNA断片(プライマー)を実用化し,環境試料中から有害種(キーストーン種)の遺伝子を遺伝子定量法(定量PCR法)で検出できるようにする。主要観測サイト(能登, 鳥取, 大阪, 東京)で採取した試料を使って,定量PCR法を試行し,越境微生物(まず真菌と細菌を分別)の日本国内での拡散と沈着を定量的に検証する。遺伝子レベルでの検出法に加え,バイオエアロゾルの蛍光自動測定装置を使ったキーストーン種のモニタリング手法を確立する。
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