Project/Area Number |
21H04941
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Medium-sized Section 64:Environmental conservation measure and related fields
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 隆俊 愛知学院大学, 経済学部, 教授 (00319831)
堀井 伸浩 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10450503)
藤川 清史 愛知学院大学, 経済学部, 教授 (60190013)
伴 ひかり 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
馬奈木 俊介 九州大学, 工学研究院, 教授 (70372456)
王 嘉陽 愛知学院大学, 経済学部, 講師 (80827973)
TRENCHER GREGORY 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90802108)
居 乂義 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (30870935)
稲澤 泉 立命館大学, 経済学部, 教授 (50752143)
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Project Period (FY) |
2021-04-05 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥41,860,000 (Direct Cost: ¥32,200,000、Indirect Cost: ¥9,660,000)
Fiscal Year 2024: ¥9,750,000 (Direct Cost: ¥7,500,000、Indirect Cost: ¥2,250,000)
Fiscal Year 2023: ¥11,830,000 (Direct Cost: ¥9,100,000、Indirect Cost: ¥2,730,000)
Fiscal Year 2022: ¥9,360,000 (Direct Cost: ¥7,200,000、Indirect Cost: ¥2,160,000)
Fiscal Year 2021: ¥10,920,000 (Direct Cost: ¥8,400,000、Indirect Cost: ¥2,520,000)
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Keywords | 石炭投融資撤退 / 持続可能性への移行 / 行動変容 / 付加価値分配 / アジア |
Outline of Research at the Start |
石炭投融資撤退は,気候変動対策を金融面から推進する手段として世界的に推進されている.従来の研究では,その投資行動変容やCO2排出削減への効果は限定的と評価してきた. ところが石炭火力発電を志向するアジアでは,中国の石炭火力発電投融資を増やし,温室効果ガス排出と中国への経済的従属を増やすことが想定される.同時に,ホスト国が適切な政策対応を取れば,こうした悪影響を抑制しつつ持続可能なエネルギーシステムへの転換を図る機会とできる. この中で本研究は,投資国・ホスト国の金融機関・電力関連産業の行動変容,及び付加価値分配の変化を分析し,石炭投融資撤退のアジアの持続可能性への移行への効果を検証する.
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Outline of Annual Research Achievements |
2022年度に公表した主要な研究成果は,学術誌12編(内査読付英文学術誌論文3編,査読付和文学術誌1編),学会・シンポジウム報告18編(うち国際学会・ワークショップ12編,招待講演5編),ワーキング・ペーパー8編,その他雑誌・新聞記事9編である. 研究実績の内容は,下記3点に要約される. 第1に,石炭投融資撤退及びグリーン金融の分析に関しては,G20会合での2021年末までの回避措置なし新規火力発電所への国際的な公的資金供与の終了宣言の後,中国の金融機関が石炭火力発電融資を国内回帰させていることを確認した.また推進及び阻害要因に関する先行研究のレヴュー結果を踏まえて,日本の金融機関に対してアンケート調査と聞き取り調査を実施した.さらにG20による新規火力発電所への国際的な公的資金供与の終了後に代替電源として開発が有望視され再エネ事業に対する融資に関して,その金融機関にとっての推進及び阻害要因に関する聞き取り調査をインドネシアで実施した. 第2に,電力及び関連産業の行動変容の分析に関しては,日本では主電力会社の石炭火力発電戦略を,インドネシアでは炭鉱と発電所の両方を所有するコングロマリットの石炭火力発電戦略を,インドでは石炭火力発電を主力とする発電会社の再エネ転換戦略の経済性と実現可能性をそれぞれ分析した.そして日本の分析を行った研究の成果を,学術誌に投稿した.中国に関しては、2021年の電力危機によって修正が進む脱炭素政策の動向を分析した. 第3に,中国のエネルギー転換の経済・環境効果に関しては,これまでの国際的な環境汚染物質のフットプリント分析,及び電源構成の再エネシフトと自動車のEVシフトの合成効果の推計を産業連関分析により進め,予備的結果を得た.またネットゼロ排出政策に伴う座礁資産に関する先行研究の体系的分析を行い,レヴュー論文として学術誌に公表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID19による渡航制限,研究分担者1名の離脱に見舞われたものの,研究全体の進捗の遅れを回復させてきた. 項目(A)に関しては,欧米日中の主要銀行17行の脱炭素化対応と実績,及びその融資先の行動変容に及ぼした要因に関する文献調査の結果を踏まえ,日本の金融機関の石炭投融資撤退及びグリーンファイナンス対応のウェブ調査を設計し,実施した. 項目(B)に関しては,中国の火力発電プラントメーカー及び風力・太陽光発電メーカーの脱炭素化政策対応とその電力システム転換への影響の調査を開始した.また日本の電力会社の石炭火力関連の活動に関しても, Li, Trencher, Asuka (2022) と同様の手法を用いて「石炭への固定化」の状況に関する比較分析を行った. 項目(C)に関しては,まず,中国の火力発電所等のアジア諸国への直接投資が国およびアジア諸国のCO2排出構造と経済への影響分析のため,発電の電源構成も考慮した応用一般均衡分析の準備を進めた.また,無償版のEORAデータベースを用いて,CO2をはじめとする環境汚染物質のフットプリント分析および付加価値の帰着分析を試算した.さらに,中国で電源構成が再生可能エネルギーにシフトした場合および電気自動車が(生産及び消費の両面で)普及した場合のアジア諸国のCO2排出の相互依存構造や付加価値帰着構造の変化分析の資産を開始した.そして長期的には「座礁資産」になる可能性があるアジア地域の石炭火力発電所を対象に,GCAMモデルを用いた座礁資産額の将来推計を試算した. 項目(D)に関しては,中国・インド・インドネシアの2060・70年炭素中立宣言とロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー地政学の変化を組み込んだうえで,インドネシアで再エネがGrid parityを達成するための政策要件とエネルギー安全保障に及ぼす影響の初歩的分析を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
以上の進捗を踏まえ,2023年度は4つの活動を進展させる. 第1に,COVID19による渡航制限により現地調査が不可欠であるにもかかわらず困難であった研究課題について,現地での聞き取り調査や資料収集を進め,これまで行ってきた予備的検討等結果と統合して分析を進め,学会報告や学術誌等での公表を目指す. 第2に,2022年度に実施することができた研究課題に関しては,分析結果を論文にまとめ,学会報告を行い,フィードバックを踏まえて論文を学術誌に投稿する. 第3に,石炭投融資撤退及び石炭火力発電の縮小の地政学・地経学上の含意に関する分析を進展させる.G20会合での2021年末までの回避措置なし新規火力発電所への国際的な公的資金供与の終了宣言の後,中国は国内の石炭火力発電への投資を増加し,ウクライナ戦争は中国・インドにロシアからの安価な化石燃料の輸入を増加している.その半面,自動車のEVシフトは,ニッケルやリチウム等の鉱山開発と精錬,精錬に必要な電力を供給する石炭火力発電の建設を促し,地元での環境負荷を増加させている.こうした変化の分析を通じて,アジアでの制度・政策上の含意を検討する. 第4に,学術誌投稿論文とは別途英文書籍で公表する研究課題の編成と各章に掲載する研究課題の分析を進める.学術誌論文では,個別の国の文脈の中での分析が中心であったことから,英文書籍ではそれらを金融機関や電力・石炭産業別に統合した,国横断型の比較分析を目指す.比較分析を実現するには,各国固有の文脈を超えた分析視座の確立が不可欠であり,国内外の研究分担者・協力者との対面での議論が生産的である.そこで,インド,インドネシアで対面での研究会を開催する.
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