Project/Area Number |
21H04970
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Research Category |
Grant-in-Aid for Specially Promoted Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Science and Engineering
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 俊法 京都大学, 理学研究科, 教授 (10192618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 喜一 北海道医療大学, 医療技術学部, 准教授 (10415200)
山本 遥一 京都大学, 理学研究科, 助教 (70837319)
足立 俊輔 京都大学, 理学研究科, 准教授 (90431874)
THUERMER STEPHAN 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40722161)
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Project Period (FY) |
2021-05-18 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥600,210,000 (Direct Cost: ¥461,700,000、Indirect Cost: ¥138,510,000)
Fiscal Year 2024: ¥59,670,000 (Direct Cost: ¥45,900,000、Indirect Cost: ¥13,770,000)
Fiscal Year 2023: ¥67,470,000 (Direct Cost: ¥51,900,000、Indirect Cost: ¥15,570,000)
Fiscal Year 2022: ¥224,380,000 (Direct Cost: ¥172,600,000、Indirect Cost: ¥51,780,000)
Fiscal Year 2021: ¥192,920,000 (Direct Cost: ¥148,400,000、Indirect Cost: ¥44,520,000)
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Keywords | 化学反応 / 光電子分光 / 非断熱遷移 / 極端紫外光 / 超高速分光 / 時間分解光電子分光 / 液体 / マイクロ流路 / 両親媒性物質 / 気液界面 / フラン / エチレン / 高次高調波発生 / 過渡吸収分光 / 核酸塩基 / フェムト秒 / 電子緩和 / 光異性化 |
Outline of Research at the Start |
生命・環境にとって最も重要でありながら、科学的には極めて複雑な研究対象である水溶液中の化学反応について、反応途上に起こる電子状態変化と原子の波束運動をリアルタイム観測し、その詳細を解明する。あらゆる分子をあらゆる電子状態からイオン化できる極端紫外レーザーを用い、10フェムト秒という極限的な時間分解能で反応途上の分子から電子を放出させ、反応の全過程を観測する。溶媒効果の本質を解明するために、気相・液相の反応を実験的に比較すると共に、最先端の理論研究と連携して溶液化学反応のダイナミクスを解明し、多様な分野に波及する基礎科学的学理を確立する。
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Outline of Annual Research Achievements |
チタンサファイアレーザーの光パルスをマルチプレート法やガス法を用いて短パルス化し、非線形光学過程によって発生される深紫外光と極短紫外光の時間幅を各々10fs以下に圧縮した。この装置を用いて、気相のフラン、エチレン、ピラジン分子の深紫外励起・極端紫外光イオン化光電子分光を11-15fsという高い時間分解能で実現し、これらの分子の超高速内部転換の実時間観測や量子ビートの観測に成功した。 液体の時間分解光電子分光では、マイクロ流路を利用し、真空中に直径25ミクロンの液体流を2本射出衝突させ、幅数mm、厚み0.7ミクロンの膜状の液体ジェットを発生した。液膜を利用することで、従来のマイクロジェットと比べて分光効率を8倍上げるとともに、液体表面に任意の角度で光を照射することが可能となった。また、繰り返し周波数を10kHzから50 kHzにアップグレードし、高いS/N比で光電子スペクトルが観測できるようになった。核酸塩基に関しては、気相孤立分子と液相分子の時間分解光電子分光を実現し、世界で初めて両相のダイナミクスを光電子分光で比較することを可能にした。また、水溶液中での溶質から溶媒への電荷移動(CTTS)反応を、紫外光電子分光と極端紫外光電子分光の両者で研究・比較し、前者において起こる溶液内電子散乱の影響を除去するSpectral Retrieval法を世界で初めて開発した。 時間分解光電子分光と相補的な分光情報を得るため、時間分解赤外分光装置ならびに深紫外過渡吸収分光装置を開発し、核酸塩基水溶液に関する集中的な研究を行うとともに、量子化学計算による振動スペクトル解析を行った。その結果、光電子分光だけでは観測の難しい三重項状態や基底状態の過渡種の生成を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍における活動制限や新規装置の導入の遅延などによる全体的な研究の困難があったにもかかわらず、特別推進研究において計画に掲げた、10 fs光源の開発、液膜発生装置の開発、spectral retrieval法の開発、時間分解赤外分光装置の開発などが順調に進行している。また、理論研究グループとの共同研究も進行し、かつ量子化学計算を専門とする研究員を研究グループに雇用したことで、実験と理論の非常に密な研究が期待通り進行している。深紫外励起と極端紫外イオン化による時間分解光電子分光において世界的に最先端の研究を推進しており、短期間に日本化学会誌のBCSJ賞を2度受賞しているほか、化学の分野におけるtop journalである米国化学会誌に多数の論文発表を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後とも気相・液相両相における超高速非断熱化学反応を、時間分解極端紫外光電子分光と赤外分光を中心に連携した実験研究を行い、さらに先端的な量子化学計算や分子動力学計算を進めていく。一つの中核的テーマは核酸塩基である。特にウラシル・チミンなどで内部転換後に基底状態で異性化反応するという説を検証することに勢力を傾けている。光電子分光の実験面では、10 fsの極限的時間分解能による実験と100 kHzの光繰り返しレーザーによる高いS/N費の測定を両輪に進める。赤外分光については、観測されたスペクトルの理論解析が挑戦的であり、光電子分光や計算との強い連携の下に研究を発展されていく。気液界面の分子凝集構造の研究や溶質の濃縮効果(界面化学・大気科学)、水溶液中での核酸塩基水溶液の電子緩和過程(生物物理化学)、水中での水和電子の生成と緩和(放射線化学)などが重要なテーマとなる。研究手法として時間分解光電子分光、赤外分光、過渡吸収分光をすべて動員した総合的な研究は世界的にも類例がなく、技術的に高度でかつ統合された質の高い実験研究に今後とも注力していきたい。また、当初の計画にはなかった新たな取り組みとしては、時間分解能をアト秒領域に高めた光イオン化遅延時間測定の実験を液体に適用する計画であり、すでに装置は概ね完成している。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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