Project/Area Number |
21H04983
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section A
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
谷口 康浩 國學院大學, 文学部, 教授 (00197526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 信太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (20143357)
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
工藤 雄一郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (30456636)
近藤 修 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (40244347)
戸坂 明日香 京都芸術大学, 文明哲学研究所, 准教授 (40894548)
水野 文月 東邦大学, 医学部, 講師 (50735496)
那須 浩郎 岡山理科大学, 基盤教育センター, 准教授 (60390704)
大橋 順 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80301141)
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
石谷 孔司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40826062)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥189,930,000 (Direct Cost: ¥146,100,000、Indirect Cost: ¥43,830,000)
Fiscal Year 2024: ¥35,360,000 (Direct Cost: ¥27,200,000、Indirect Cost: ¥8,160,000)
Fiscal Year 2023: ¥34,840,000 (Direct Cost: ¥26,800,000、Indirect Cost: ¥8,040,000)
Fiscal Year 2022: ¥31,850,000 (Direct Cost: ¥24,500,000、Indirect Cost: ¥7,350,000)
Fiscal Year 2021: ¥58,890,000 (Direct Cost: ¥45,300,000、Indirect Cost: ¥13,590,000)
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Keywords | 半定住狩猟採集民 / 縄文人骨 / 骨考古学 / 社会組織 / 葬制 |
Outline of Research at the Start |
群馬県居家以(いやい)岩陰遺跡出土の縄文時代早期の人骨群を、骨考古学先端技術との連携により分析し、個体間の血縁関係、性別・年齢の集団構成、個体の生活史と健康状態を解明し、縄文文化の形成期における半定住狩猟採集民の社会組織と生活史、葬制を復元する。居家以岩陰遺跡に残された埋葬人骨・考古遺物・動植物遺存体の総合的研究に基づいて、居家以集団の社会組織、資源利用と生業活動、葬制と物質文化を実証的に復元する。
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Outline of Annual Research Achievements |
群馬県居家以岩陰遺跡の発掘調査を行い、縄文早期人骨(約8000~8500年前)を発掘した。これまでに出土した個体数は29個体以上となった。人骨の形態分析から、早期縄文人の形態的特徴と個体間変異、健康状態が集団レベルで明確となった。20個体についてDNA分析を実施し、ミトコンドリアゲノムの全長塩基配列から各個体のハプロタイプを確認した。N9bとM7aの二つのハプログループが含まれ、N9bが多数を占めること、同一配列の個体(同一母系血縁をもつ親族)が多数含まれることを明らかにした。また、性染色体ゲノム解析から各個体の性別を明らかにした。縄文早期の社会が母系的な血縁集団であることを推定させる画期的な研究成果である。出土人骨の炭素・窒素同位体分析から陸上動物とC3植物を主とする食性が明確となった。人骨出土状況の3D計測と人骨の形態分析から、腰部で遺体を切断する特徴的な埋葬様式が明らかとなった。ミイラ化した遺体を切断した可能性が高く、早期縄文人の死生観に関する新知見が得られた。縄文早期の集団墓と葬制の様相を埋葬人骨から実証的に明らかにした。 また、縄文早期押型文期(約10000年前)の人為的灰層から回収された遺物と動植物遺存体の分析から、早期縄文人の資源利用、生業活動、行動領域を明らかにした。クリ・コナラ属の堅果やオニグルミの利用とともに、イヌビエ・ダイズ・アズキ・シソ属の野生種など、後の栽培化につながる種の利用が始まっていた事実を明らかにした。動物遺存体の分析では、在地性のニホンジカ、イノシシ、キジ類、中小型陸生動物を中心とした動物資源利用が明らかとなった。蛍光X線分析による黒曜石産地推定からは、直線距離で60km以上離れた信州霧ヶ峰・和田峠産を主体とした利用が確認され、遠隔地間の移動を伴った行動領域が明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
20個体の縄文人骨のDNA分析を成功裏に進めている。ミトコンドリアゲノムの全長塩基配列から各個体のハプロタイプが確認され、既報にない新たなハプロタイプが確認されたことは、縄文人の遺伝学的系統の解明につながる重要な研究成果である。また、ミトコンドリアゲノムの全長塩基配列が完全に一致する個体が多数含まれ、それらの個体間に同一の母系血縁関係が確認されたことは、縄文早期の社会が母系的な親族集団であったことを推定させる画期的な研究成果である。さらに、約30億塩基に及ぶ膨大な遺伝情報からなる核ゲノムの解析も推進しており、性染色体のゲノム解析から個体の性別や父系血縁を確認する分析手法も開発した。その応用により、縄文早期の居家以集団の婚姻関係や家族の形態を復元することが可能となる。8000年以上前にさかのぼる早期縄文人のゲノム情報が個別集団レベルで解明された前例はない。これほど高精度の遺伝学的情報に基づく先史時代社会の復元研究は、日本国内ではまったく前例がなく、国際的に最先端の本研究の成果は極めて重要な学術的意義がある。 出土人骨のDNA分析の研究成果については、国際学術誌への論文投稿を順次進めている。2022年度には、日本人類学会および日本第四紀学会での二度の公開シンポジウムを開催し、本プロジェクトの研究成果を公表した。出土人骨の研究成果を公表する研究報告書の第一冊として『居家以人骨の研究Ⅰ』(2023年3月)を刊行した。 新型コロナウイルス感染の急拡大により、初年度の2021年9月に計画していた研究分担者・研究協力者による居家以岩陰遺跡発掘現場での合同調査および周辺地域でのサンプリング調査を、現地長野原町の関係者の事情によりやむを得ず中止した。このため、2021年度の研究費の一部(主に旅費・謝金)を繰り越し、初年度に予定していたサンプリングおよび分析を2022年に繰り下げて実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画(5ヵ年計画)に従って、考古学・人類学・DNAの3チームにより役割を分担しながら研究を推進する。 居家以岩陰遺跡において縄文時代早期の埋葬人骨を40~50体程度発掘し、骨考古学先端技術を応用して各個体の年代・性別・推定年齢・出身地、個体間の血縁関係、健康状態と食生活を解明する。これらの人類学的情報と埋葬順序などの考古学的情報を総合して、居家以集団の社会構成と婚姻関係を復元することを重点課題とする。また、遺体の切断・集積を伴う埋葬様式を復元し、葬制の初期様相と死生観を明らかにする。 人骨研究と併行して、縄文早期押型文期(約10000年前)の人為的灰層から土壌水洗選別法によって人工遺物と動植物遺存体を徹底的に回収分析し、定住化の過程にあった早期縄文人の資源利用技術、生業活動、食生活をさらに詳しく解明していく計画である。 研究成果の公表として、国際・国内学術誌への論文発表、学会発表、研究成果をまとめた書籍の刊行、縄文早期の居家以人の復顔模型制作と展示、國學院大學博物館での企画展示などを計画している。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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