Project/Area Number |
21H04987
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section B
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20303894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪野 隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 講師 (10301722)
奥 隆之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, リーダー (10301748)
大河原 学 東北大学, 金属材料研究所, 技術一般職員 (10750713)
金子 耕士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30370381)
森 道康 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (30396519)
池田 陽一 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40581773)
河村 聖子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (70360518)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2024)
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Budget Amount *help |
¥189,540,000 (Direct Cost: ¥145,800,000、Indirect Cost: ¥43,740,000)
Fiscal Year 2024: ¥23,920,000 (Direct Cost: ¥18,400,000、Indirect Cost: ¥5,520,000)
Fiscal Year 2023: ¥23,790,000 (Direct Cost: ¥18,300,000、Indirect Cost: ¥5,490,000)
Fiscal Year 2022: ¥75,140,000 (Direct Cost: ¥57,800,000、Indirect Cost: ¥17,340,000)
Fiscal Year 2021: ¥47,580,000 (Direct Cost: ¥36,600,000、Indirect Cost: ¥10,980,000)
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Keywords | 偏極中性子散乱 / 高温超伝導 / スピントロニクス / スピンダイナミクス |
Outline of Research at the Start |
本研究では、日本の中性子科学技術が誇る,高エネルギー中性子に対するスピン偏極技術と試料環境技術(温度・磁場・圧力・電場)を融合することで,物質内のスピン情報を詳細に取得可能とする新しい測定手法(共鳴スピン分解法)を構築する.この測定手法を活用して、高温超伝導体およびスピントロニクス基盤物質のスピンダイナミクスの全貌を明らかにするとともに,物性発現の要となるスピンダイナミクスを抽出する.機能発現のメカニズムを微視的に解明することから,将来のエネルギー利用における課題解決に貢献する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スピン交換光ポンピング(SEOP)法を活用した中性子偏極デバイスを高エネルギー分光器に導入し、多重外場環境(温度・磁場・圧力・電場)と共存させた実験手法の実現とその有用性を示すことを目標としている。このために、(1) SEOP法によるスピン偏極技術の確立とコンパクト化したデバイスの常時実装、(2) ビームラインにおいて多重外場環境と共存するスピン偏極計測環境の構築、(3) 超伝導体などの複合電子自由度励起のスピン成分分離と微視的状態の解明の三項目進めている。2023年度には、(1)について、独自開発した3He用ガラスセルを内包するコンパクトSEOPシステムの開発、および、このSEOPシステムを大強度加速器研究施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)の中性子回折装置に実装することに成功した。これにより、一般利用者の実験に供することができるスピン偏極ビームの生成にも至っている。(2)に関しては、圧力デバイスを開発し、研究用原子炉JRR-3の三軸分光器において銅酸化物高温超伝導体の磁気秩序に対する圧力下中性子散乱実験を進めた。バックグラウンドを下げるなど、改善の余地があるものの非整合ピークの観測には成功している。また、(1)の成功を踏まえて、JRR-3炉室の三軸分光器に新たにSEOPを導入し、偏極中性子ビームの生成と評価を行った。これらのことは、日本における偏極ビーム実験のプラットフォーム構築が進んだことを意味する。また、(3)に関しては、ガーネット系のエネルギー関連物質について偏極非弾性散乱実験を国内、海外施設で実施し、磁場下での振る舞いについても重要な知見を得ることもできた。昨年度、新たな研究対象として見出したT*構造銅酸化物高温超伝導体についても、軟X線を用いた共鳴X線散乱実験を行い、電荷と格子の自由度に関する複合励起の新たな情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度までのフェーズ1で実施するべき事がほぼ達成できたことを踏まえ、フェーズ2である2023年度には、研究目的の達成に必要な三項目について、下記の様に研究を遂行することができた。 (1) 「小型SEOPシステムの実機の開発・導入」 2022年度までの成果を踏襲し、日常的にSEOPシステムをMLFのビームラインで実験に供することができている。現在、SEOP利用の効率化(on-line SEOPの新開発)にも取り組んでいる。実験には分担者の奥グループの協力のもと、本研究で雇用した高田が主導的な役割を果たしている。日本における偏極中性子技術の継承において、本研究が大きく貢献していると言える。 (2)「外場発生装置と偏極度解析システムの開発」 圧力デバイスの開発、および、(1)の成功に基づいた新たな方針として、試料環境の自由度が高いJRR-3の三軸分光器へSEOPシステムを導入した。広いエネルギー帯域で、実際に偏極ビームを生成することができ、その評価も行った。JRR-3へのSEOPシステムの導入は、世界における三軸分光器の付加価値を高めるものであり、この点においても高田をはじめとする分担者が貢献している。 一方、物価高騰の煽りで低温環境の構築の構築に時間を要しているが、他プロジェクトと冷凍機を共有することの交渉などを進めた。 (3) 「広Q-ω領域測定」 今年度も主たる研究対象物質である銅酸化物高温超伝導体とガーネット系エネルギー変換物質について、偏極実験、圧力印可、磁場印可、広温度範囲での磁気励起測定を行うことができた。特に分担者が管理するJRR-3の分光器を活用して偏極実験を遂行することができ、今後の方針を得ることができた。また、分担者が実施する磁性体の研究について、本研究で提案する共鳴スピン分解法の適応を深く議論できた。 この様に実験面、人材育成面で成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までにJ-PARCの中性子回折・散乱装置でのSEOPシステムの動作確認ができ、実験も遂行できたことを受け、今年度は利用者からの要望が高い偏極実験を複数のビームラインで実施する。実験効率向上のために、SEOP法の要となる3Heガスのスピン偏極をビームライン上で行うon-beam SEOPの導入を進める。また、前年度からSEOPの導入をJ-PARCのみならず研究用原子炉JRR-3に展開しているが、JRR-3が安定稼働しているこの機会に活動を活発化し、日本における偏極中性子利用プラットフォームの構築を確実に進める。これまでに開発したSEOPシステムと共存可能な磁場発生システム(超伝導磁石)をもとにし、多重外場環境とSEOPを組み合わせた実験環境の構築を進める。物価高騰により冷凍機の設置が遅れていたが、既存の冷凍機を本プロジェクト様に改良するなどの措置を施し、偏極非弾性散乱条件下での低温測定環境を実現する。 また、研究対象のひとつであるスピン流・熱電変換物質については、昨年度までにマグノン極性の分離に成功したので、同様な測定がJ-PARCやJRR-3で実施できる環境を整える。フォノンホール効果を示すエネルギー関連材料についても、昨年度にJRR-3の三軸分光器で行った磁場中偏極非弾性散乱実験をさらに進め、多電子自由度の結合に関する微視的描像を得ることを目指す。銅酸化物における複合ダイナミクスの狙い所は、昨年度までの研究で掴めているため、偏極実験が可能になり次第実施する。プロジェクトの遂行を強力に後押しし、スピン偏極物性科学の開拓を進めるために、今年度の10月頃に、海外から専門家を招聘して国際ワークショップを開催する。世界における最先端の技術とサイエンスを共有する。このワークショップは金属材料研究所と共催して、多数の参加者を呼び込んだ偏極中性子に関する一大イベントとする。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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