Project/Area Number |
21H04988
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Review Section |
Broad Section B
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 博 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (40201991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80323525)
宮本 辰也 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (40755724)
木村 健太 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70586817)
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Project Period (FY) |
2021-07-05 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥182,780,000 (Direct Cost: ¥140,600,000、Indirect Cost: ¥42,180,000)
Fiscal Year 2024: ¥25,740,000 (Direct Cost: ¥19,800,000、Indirect Cost: ¥5,940,000)
Fiscal Year 2023: ¥30,420,000 (Direct Cost: ¥23,400,000、Indirect Cost: ¥7,020,000)
Fiscal Year 2022: ¥81,770,000 (Direct Cost: ¥62,900,000、Indirect Cost: ¥18,870,000)
Fiscal Year 2021: ¥18,070,000 (Direct Cost: ¥13,900,000、Indirect Cost: ¥4,170,000)
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Keywords | 光誘起相転移 / テラヘルツパルス / 中赤外パルス / 強相関系 / 非線形光学 / テラヘルツ光 / 中赤外光 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、電磁場に対する高い応答性が期待される強相関物質(遷移金属化合物や有機分子性物質)に対し、それらの透明領域において大きな電場および磁場振幅を持つ赤外(テラヘルツ)領域の光パルスを照射し、量子トンネル過程による絶縁体-金属転移や、分極や磁化の高速・高効率制御を実現する。励起に用いる光パルスの電磁場の波形に沿った物質の応答を、その周期より短い時間幅を持つ別のパルス光によって検出する手法を確立し、分極や磁化の変化、電磁場誘起相転移の物理的機構を解明する。結果をもとに、高速高効率の相転移を示す物質を開発するとともに、その物質設計指針を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に、一次元モット絶縁体ET-F2TCNQにおいて、テラヘルツ電場による金属化に成功した。2022年度は、テラヘルツパルスの透過率の電場振幅依存性を測定し、エネルギ損失とキャリア生成量を比較することにより、金属化のエネルギー効率を見積もった。その結果、近赤外光励起に比べ、テラヘルツ電場による金属化の効率は5倍程度高いことがわかった。また、当初計画に従って時間幅が35 fsのレーザーシステムを導入し、それを用いてテラヘルツパルスの電場振幅を5.6 MV/cmまで増強することに成功した。電場誘起相転移探索の新規対象としては、励起子絶縁体Ta2NiSe5に注目した。この物質の電場応答を調べる上での予備研究として、光励起による金属化の挙動を詳細に調べた。 電子誘電体については、TTF-CAの強誘電相に低温で電場パルスを照射し、電場の向きに依存する分極変化を調べた。その結果、分極は、それに平行な電場を印加するとその増大が飽和するのに対し、反平行な電場を印加すると非線形に減少することがわかった。2.2 MV/cm以上の電場パルスを照射すると、強誘電状態の一部が常誘電状態に転移することもわかった。 マルチフェロイクス系については、ビスマス銅酸化物の反強磁性相において、方向二色性の変化をテラヘルツパルスとプローブパルスの入射方向を変えて測定することにより、電場と磁場の両者の作用によって過渡的な反強磁性秩序の制御が可能であることを実証した。 中赤外パルスによる分極制御については、プローブ光に用いる時間幅11 fsの近赤外極短パルスの発生に成功した。このパルスをプローブ光にし、クロコン酸において、水素結合を構成するプロトンの振動を励起することによる分極変化を調べた。その結果、プローブ光により発生する第二高調波が、中赤外パルスの電場波形にそって変化する挙動を検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
測定系開発については、テラヘルツパルスの高強度化が最重要課題であったが、新しいレーザーシステムの導入によって、電場振幅の5.6 MV/cmまでの増強に成功した。これによって、電場誘起相転移の探索が各段に進むものと期待される。テラヘルツ電場を使った相転移探索の対象としては、励起子絶縁体Ta2NiSe5を新たな対象として設定した。この物質の電場応答を調べる上での予備研究として、光励起による金属化の挙動を詳細に調べ、金属化による広帯域のスペクトル変化を測定するとともに、そのダイナミクスを明らかにした。その結果は論文に公表した。この研究を基盤として、2023年度に、電場誘起金属化の研究を進める計画である。 電子誘電体については、分子性結晶TTF-CAの強誘電相における電場応答の研究が進み、強電場を印加したときに、強誘電分極の一部が過渡的に常誘電状態に転移すること(電場誘起強誘電-常誘電転移)を明らかにした。これは、テラヘルツパルスによる強誘電体の新しい制御法として期待される。 位相固定中赤外パルス励起による電子状態変化をサブサイクルで測定することも、本研究の重要課題である。これまでは、そのプローブ光は可視領域に限られていたが、2022年度に、時間幅が11 fsの近赤外域の極短パルスの発生に成功した。これを用いた、中赤外ポンプ-近赤外サブサイクルプローブ分光の測定系開発についても、当初計画を前倒しにして行った。中赤外パルスによる電子状態制御に関しては、フォノン励起によるフロッケ状態生成を介したスピンパイエルス相融解の研究や一次元モット絶縁体における励起子フロッケ状態の観測の研究も進展した。また、新たな展開として、モット絶縁体の三次非線形光学効果を用いた新規テラヘルツパルス発生法と位相制御法に関する研究も進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までに構築した低温におけるテラヘルツパルスポンプ-広帯域プローブ分光測定系を用いて、励起子絶縁体Ta2NiSe5におけるテラヘルツ電場誘起金属化を試みる。中赤外領域の反射率変化スペクトルを解析し、金属化の可能性を吟味するとともに、電場による電子状態変化の機構を明らかにする。 2022年度に引き続き、有機分子性物質TTF-CAの強誘電イオン性相において、テラヘルツ電場に対する応答を過渡反射率変化および第二高調波の変化によって調べ、分極変化のダイナミクスをより詳細に解明する。特に、信号に重畳する振動構造を解析することによって、電場による分極変化に伴う分子振動のダイナミクスを明らかにすることを目指す。そのためには、テラヘルツ領域の反射スペクトルを低温で精密に測定する必要がある。その手法の開発も行う。 2022年度末に行った予備的な測定によって、高い電場応答性を示すことが明らかとなったフェロアキシャル物質について、良質な単結晶作製と基礎物性測定を進めるとともに、テラヘルツ電場パルスによる新しい非線形光学応答を検出する。具体的には、電子系の励起やフォノンの励起による異方性の変化を、カー回転の手法を用いて検出する。励起に用いるテラヘルツパルスの帯域を変化させ、カー回転の信号の変化を測定する。それらの結果から、テラヘルツ電場による異方性の変化の起源を抽出する手法を開発するとともに、非線形応答の起源を解明する。 中赤外パルス励起による電子状態制御に関しては、一次元モット絶縁体の励起子フロッケ状態の解析手法に関する論文をわかりやすい形で公表する。スピンパイエルス系物質における中赤外パルスによるフォノン励起を介した電子状態制御については、フォノンドレスト状態からスピンパイエルス相融解に至る機構を詳細に解明し、論文にまとめ投稿する。
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Assessment Rating |
Interim Assessment Comments (Rating)
A: In light of the aim of introducing the research area into the research categories, the expected progress has been made in research.
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