産科疾患発症における胎盤由来エクソソームの役割とバイオマーカーの可能性の検討
Project/Area Number |
21J12533
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Review Section |
Basic Section 56040:Obstetrics and gynecology-related
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 彩子 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2022: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2021: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
|
Keywords | exosome / extracellular vesicle / 妊娠高血圧症候群 / 胎盤由来エクソソーム / 産科合併症 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、胎盤由来エクソソームがpreeclampsia(PE)において母体に与える影響を解明すること、および血漿中エクソソームでPEをはじめとする産科疾患を予測できるか検討することを目的とする。 胎盤由来エクソソームが母体臓器に及ぼす影響を血液・尿の生化学的変化や病理学的変化、遺伝子発現変化などに注目し検討し、更にはその変化をもたらす機能分子が何であるかを同定することを目指す。また、前方視的に回収した妊婦血漿由来のエクソソームに含まれるたんぱく質をプロテオミクス解析し、血漿由来エクソソームがPEなどの産科疾患の発症予測バイオマーカーとなりうるかを検討する。
|
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧症候群は周産期の医療現場において、母児死亡の主要な原因となる重要な疾患であり、未だに治療法は存在しない。近年になり、胎盤形成不全とそれによる胎盤から分泌される抗血管新生因子が全身性の血管内皮障害を引き起こすことが病態の一因であることが証明され(Karumanchi et al. Endocrinology 2004)、この分野の研究において大きな進展となった。しかしながらこの機序で妊娠高血圧症候群において母体に起こる症状の一部は説明されるものの、なぜ多彩な臓器障害が起こるのか、など不明な部分が多く残されている。 当該研究は、エクソソームはある細胞から放出された後に全身を循環して、別の臓器を疾患特異的な状態に変えてしまうという特性に着目し、胎盤由来エクソソームが妊娠高血圧症候群における多彩な臓器障害を説明できるのではないかという仮説のもとに、①胎盤由来エクソソームが産科疾患において母体に与える影響を解明すること、および②血漿中エクソソームで産科疾患を予測できるか検討することを目的としている。 令和3年度の研究成果では、妊娠高血圧症候群と正常妊娠の胎盤由来エクソソームをそれぞれ抽出し妊娠マウスに投与すると、母体臓器に取り込まれ、さらに妊娠高血圧症候群の胎盤由来エクソソームを投与した群では妊娠高血圧症候群の症状の一つを呈することが確認された。つまり、胎盤由来エクソソームは母体臓器に影響を与えることが発見された。また、正常妊娠の女性と妊娠高血圧症候群の女性の血漿から分離したエクソソームの数・サイズ・タンパク質の組成などを比較した。すると、正常妊娠と妊娠高血圧症候群では血漿中のエクソソームの特徴に違いがあることが確認された。つまり血漿中のエクソソームが妊娠高血圧症候群のバイオマーカーとして有用である可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の①について、令和3年度において、妊娠高血圧症候群10症例、正常妊娠10症例の胎盤由来エクソソームをそれぞれ妊娠マウスに投与し、母体臓器の機能(血圧、生化学的変化、臓器の病理学的変化)が変化するかを検証した。さらに、臓器におけるRNAシークエンスを行い遺伝子発現の変化を調べた。これに加え、形質変化に重要な働きをするタンパク質の同定をすべく、胎盤由来エクソソームをプロテオミクス解析で網羅的に解析し、いくつかの機能分子の候補を抽出した。現在、これらの分子の中和抗体を準備し機能的実験を行う方針となっている。 また、②については令和3年度において、妊婦の血漿を前向きに300症例回収し、産科合併症をもつ群における血漿中エクソソームの変化(数・サイズ・タンパク量)を検証した。現在、その半数以上の解析を完了した。順次エクソソームを血漿から分離し、エクソソームのサブポピュレーションにおける違いまでを含め検証を進めている。さらにプロテオミクス解析を行い質的な違いについても検証を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述①について、今後、プロテオミクス解析から同定した機能分子の候補に対するタンパク質に対する中和抗体を用いて阻害実験をin vivoおよびin vitroで行い表現型を確認していく。具体的には、妊娠高血圧症候群と正常妊娠の胎盤由来エクソソームをこの中和抗体で処理して、それぞれ妊娠マウスに投与し、母体臓器機能の変化がなくなるかを検証し、機能分子の同定を目指す。 ②については、数・サイズ・タンパク量だけでなく、正常妊娠と妊娠高血圧症候群の血漿由来エクソソームのタンパク質の違いをプロテオミクス解析で同定する。違いのある分子が同定された場合、前向きに収集した妊婦血漿から分離したエクソソームを用いて、ELISAやターゲットプロテオミクス解析を行い、バリデーション実験を行う予定である。
|
Report
(1 results)
Research Products
(7 results)