Project/Area Number |
21K00015
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
|
Research Institution | Chuogakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 英明 中央学院大学, 商学部, 教授 (70192599)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 自動運転 / 社会受容 / 利益と負担 / 自律型機械 / 道徳的行為者 / 責任 / 応用倫理学 / モビリティ |
Outline of Research at the Start |
多くの期待が寄せられる自動運転技術は、大きな社会変革をもたらすため、検討すべき課題も多い。倫理との関係については、トロリー問題と関連づけて論じられることが多いが、問題はそれだけではなく、倫理学的な観点から検討が必要な課題は数多く存在する。自動運転の具体的あり方についてはさまざまなルールの設定が必要であり、倫理学的観点からの検討は不可欠である。本研究では、自動運転に関わる倫理的課題を検討し、自動運転に関するルールの設定に盛り込むべき倫理的要素を明らかにする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
論文「自動運転車の社会受容」では、自動運転技術の社会受容性向上の議論の前提として、「社会的受容」という語の用法について考察した。技術の社会受容については、事実としての「社会的受容」と対象技術の導入に伴って生じる問題を考慮にいれたときの「受容可能性」を区別する必要がある。配分的正義のような規範的要因の受容性に対する影響が実証的に研究される場合、対象とされるのは受容という事実である。それに対し、新技術がもたらす利益や負担がどのように受容されるべきかが問題となるときに問われるのは受容可能性である。配分的正義に配慮し利益と負担の均衡をはかることによって、受容性を高めることができる場合もあるが、自動車については、これまで利益を得る者が負担を負わなかったことが受容性を高めてきたことも指摘されている。自動運転実現のための法整備は、法的受容可能性の向上をもたらすが、その議論においては「社会的受容」や「利益と負担」といった用語について、その意味を明確にしておかなければならない。 論文「忘却と祈り」では、「科学技術・イノベーション基本計画」にみられるバックキャスト的アプローチとフォーキャスト的なアプローチの総合による政策の体系化について考察するための前提として、未来に関する言明について考察した。未来についての言明は、現在は真でも偽でもなく、それを正しく知ることはできない。しかし、未来の出来事に対する意志は現在のものである。そして、それをもたらすのは過去の痕跡や記憶を未来に延長することで獲得される「ある程度筋の通った信念」である。記憶や記録が消滅すれば、過去が変わり、過去を未来に延長した予測も変わる。その結果、現在の意志も変わることになる。それゆえ、重要なのは記憶や記録の消失に抗うことである。未来の社会については、過去のさまざまな記録やデータをもとに、問題への対応方法を考えていくしかない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、自律型機械としての自動運転車の責任問題に関する資料を検討し、その成果を論文「道徳的行為者としての自動運転車」としてまとめた。 2022年度は、そうした責任論とも密接に関係するといわれる「社会受容性」の問題に取り組んだ。自動運転の社会実装のための法整備は、法的受容可能性の向上をもたらすが、その議論においては「社会的受容」や「利益と負担」といった用語の意味を明確にしておく必要がある。論文「自動運転車の社会受容」では、そうした考察の成果をまとめた。 今後の自動運転技術の社会実装には「科学技術・イノベーション基本計画」のような政策が密接に関係するが、そこには、バックキャスト的アプローチとフォーキャスト的なアプローチの総合が重要な方策として示されている。論文「忘却と祈り」では、そうしたアプローチの意味を明確にするための前提として、未来に関する言明について考察した。 今後は、以上の成果を踏まえて、科学技術基本計画におけるイノベーション概念や科学技術と社会の関係に対する考え方に関して、これまでの変遷を検討し、自動運転技術に関する今後の倫理的課題の考察に結びつける。また、AIの責任問題を検討するために、概念工学的な観点からなされている議論にも目を向けつつ、責任概念ついてさらに詳細な考察をおこなう。 具体的問題の検討に入る前に、社会受容など科学技術政策における概念の考察をおこなったため、課題の検討については、やや遅れ気味である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に検討した責任に関する議論、2022年度に検討した社会受容性の問題に関する分析にもとづき、今後は、科学技術・イノベーション基本計画における政策を踏まえて自動運転技術の社会実装について検討し、AIに関する責任問題という観点からも自動運転技術の考察をおこなう。それによって、自動運転に関するルールの設定に際し倫理学的な視点から検討が必要な課題をより具体的に明らかにしてゆく。 2020年の「科学技術・イノベーション基本法」改正は、日本の科学技術政策における大きな転換であり、それは今後の「科学技術・イノベーション基本計画」にも反映されることになる。法改正のポイントは、振興の対象に「イノベーションの創出」が追加されたことと、法の対象から除外されていた「人文科学のみに係る科学技術」が「科学技術」に含められたことである。これにより、自動運転技術も社会の変革を目指すイノベーション政策のうちに位置づけられることになり、人文科学を含む「総合知」の検討対象とされる。 自動運転技術の社会実装を考えるとき、そうした科学技術政策との関連を無視することはできない。これまでの科学技術政策におけるイノベーション概念の変遷、それにともなう科学技術と社会の関係に対する考え方の変化を踏まえて、今後の技術の社会実装における倫理的・法的・社会的課題(ELSI)を考察していく必要がある。ChatGPTなどAI技術の利用拡大が急速に進むなかで、AIに関する責任問題の考察を進めるには、技術と社会の変化を見据えつつ両者の関係について考察をすすめる必要がある。今後は、そうした変化に関する国内外の最新の資料・情報を収集しつつ、問題点の原理的検討をおこなう。
|
Report
(2 results)
Research Products
(3 results)