Project/Area Number |
21K00038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01010:Philosophy and ethics-related
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
齋藤 直樹 盛岡大学, 文学部, 教授 (90513664)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 自然主義 / アドルノ / ハーバーマス / ホネット / フランクフルト学派 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、まず第一に、フランクフルト学派の諸思想が前提としている「自然」概念の多義性を分析し、この学派による「史的唯物論」の現代的な展開の全体を、ある種の「自然主義」として体系的に再構築することを目指す。 また第二に、伝統的な自然主義と歴史主義の対立、あるいは、現代における自然主義と反自然主義との対立を視野に入れつつ、フランクフルト学派独自の「自然主義」が持つ思想的ポテンシャルを、より広範な哲学的文脈の中で評価することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、前年度に論究したハーバーマスの「自然主義」的議論に対する代表的な批判を検討した。具体的には、ハーバーマスの「討議理論」が示す理性主義的な傾向を批判し、自然的/身体的情動性に根ざした他者への「共感」あるいはその「承認」のあり方を、新たなコミュニケーションパラダイムとして導入する必要性を説くホネットの議論の内実と意義を、主著『承認をめぐる闘争』の詳細な分析を通じて明らかにした。こうした論究の一定の成果として、本研究が重要視してきたアドルノの「自然」ないしは「自然史」概念が、ハーバーマスの理性主義的な議論をいわば否定的媒介としたうえで、現代のフランクフルト学派における「自然主義」的な議論を形づくる重要な契機となっているという観点を形成するに至った。 さらに、これまでに論究したフランクフルト学派の「自然主義」的議論を、現代の自然主義の展開の中に適切に位置づけていくために、自然主義をめぐる現代的な議論の包括的な検討に着手した。具体的には、ハットフィールドによる近現代ドイツにおける自然主義の展開に関する系譜学的研究(Gary Hatfield, The Natural and the Normative, The MIT Press, 1990.)や、英語圏の分析哲学における自然主義の復権に関するキッチャーの歴史的研究(Philip Kitcher, The Naturalists Return, in: The Philosophical Review, Vol.101, No1, 1992.)等を手掛かりとしながら、現代における自然主義の展開に関する総合的な論究を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画にしたがって、アドルノに端を発するフランクフルト学派における「自然主義」的な議論を、ホネットに代表されるいわゆる第三世代の思想圏にまで及んで論究することはできたものの、当初予定していたゼールの「自然美学」に関する研究、ならびに、現代における自然主義の総合的な論究については必ずしも十分に展開することができず、これらについては研究期間を延長したうえで次年度に取り組む課題となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでに取り組んできたフランクフルト学派の第一世代から第三世代にいたる「自然主義」的議論に関する論究を集約し、当の議論において用いられている「自然」概念の多義性を整理しながら、フランクフルト学派における「史的唯物論」の現代的な展開の全体を、ある種の「自然主義」として体系的に再構築することを目指す。そのうえで、伝統的な自然主義と歴史主義との対立、あるいは、二〇世紀後半以降、哲学的言説の全体を新たな仕方で構造化している自然主義と反自然主義との対立を視野に入れながら、フランクフルト学派独自の「自然主義」が持つ思想的ポテンシャルを、より広範な哲学的文脈の中で評価することを試みる。
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