Project/Area Number |
21K00069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01030:Religious studies-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横田 理博 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (10251703)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 鈴木大拙 / 『大乗仏教概論』 / 西田幾多郎 / マックス・ウェーバー / エーリッヒ・フロム / ポール・ケイラス / アメリカ / 法身 / アルトゥーア・ショーペンハウアー / 釈宗演 / ウィリアム・ジェイムズ / ショーペンハウアー / 釈宋演 / 『大乗起信論』 |
Outline of Research at the Start |
鈴木大拙は1907(明治40)年にユニークな着想に満ちたOutlines of Mahayana Buddhism(『大乗仏教概論』)という英文著作を世界に向けて発信した。その思想内容について分析を進めるとともに、その思想形成に影響を及ぼした諸契機――『大乗起信論』の英訳、釈宗演とポール・ケイラスという近辺の人々からの影響、ウィリアム・ジェイムズ、ショーペンハウアー、スウェーデンボルクといった思想への共鳴など――について考察し、東洋思想と西洋思想とを接合して『大乗仏教概論』が結実する姿を明らかにする。その思想を鈴木がその後どのように展開していくのかについても考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
1. 鈴木大拙の著作『華厳の研究』(英文1934年、邦訳1955年)、『臨済の基本思想』(1949年)、『東洋的な見方』(1963年)などを読み、鈴木の生涯にわたる思想展開の概略の把握を目指した。 2. 鈴木大拙の青年期アメリカ滞在の集大成と言える『大乗仏教概論』に示された思想について、その後の鈴木の思想展開で何が一貫し、何が変化していくのかを探った。「愛と知」の相即という主張が生涯を通じて一貫する一方で、「法身」が万物に顕現するという“本体/現象”図式(「汎神論」)は消失し、むしろ「汎神論ではない」ことをしばしば主張することになる。全体として見ると、ケイラスから継承した新しい仏教の構想よりも、仏教思想の多面的な掘り起こしへ向かったと概括できる。 3. 鈴木大拙と西田幾多郎の二人の間には若い頃からの深い交流があった。思想内容において何が共有されていたのかを探るべく、鈴木の『大乗仏教概論』(1907年)と西田の『善の研究』(1911年)とを比較してみた。両テキストには、その「汎神論」的構造などにおいて共通するところがある。 4. マックス・ウェーバーの比較宗教社会学の全体像を視野に入れつつ、とくに、「禁欲/神秘主義」という図式――この枠組みのもとでウェーバーは鈴木大拙の『大乗仏教概論』の涅槃論に「世俗内的神秘主義」を見出す――のいくつかのバージョンを比較して、ウェーバーにおいてこの図式がどのように成立していったのかを探った。 5. 鈴木は“仏教はニヒリズムではない”と主張する。当時の西洋では仏教をニヒリズムと見る傾向が強かったと鈴木は言う。ショーペンハウアーからニーチェへの思想の流れにおいて仏教ないしニヒリズムはどのような位置を占めているのか。このような問題を意識しながら、ニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』などを再考した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いまだに不十分な点はあるが、「鈴木大拙の『大乗仏教概論』についての考察」と題する、九州大学大学院人文科学研究院編『哲學年報』への五回にわたる連載を終えた。本年度は、本研究課題についての現時点での総括として次のような二つの講演をおこなった。「鈴木大拙の『大乗仏教概論』をめぐって」(令和5年度大拙松ヶ岡仏教講座、2023年10月6日、松ケ岡文庫(鎌倉市))、「鈴木大拙、青年期のアメリカでの思想形成」(九州大学文学部提携講座「世界の宗教と言語から考える哲学・倫理思想」、2023年10月21日、朝日カルチャーセンター福岡教室、オンライン)。また、鈴木の『大乗仏教概論』についての概説として、「鈴木大拙の『大乗仏教概論』をめぐって」と題する論考を『松ヶ岡文庫研究年報』に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 松ヶ岡文庫とモリス図書館でのさらなる資料調査については今後の課題としたい。 2. 『大乗仏教概論』に示された思想について、その後の鈴木の思想展開で何が一貫し、何が変化していくのかを探る試みは、結局、鈴木の全思想を把握しないと解決しない問題なので、まだ途上にある。鈴木の80歳代のアメリカ滞在時の、老荘思想への関心、エックハルトへの関心、フロムとの交流、『禅と日本文化』改訂などに着目し、鈴木の思想の変化を追いたいと考えている。 3. 釈宗演の思想、ポール・ケイラスの思想、彼らと鈴木との思想の共鳴関係についても、さらなる考察を要している。
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