The problem of Legislator in French Enlightenment : foundation of political autonomy in respect to society, religion and history
Project/Area Number |
21K00083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01040:History of thought-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
王寺 賢太 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (90402809)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | フランス啓蒙 / 政治思想 / モンテスキュー / ルソー / 立法者 / 政治 / 歴史 / ディドロ / 歴史叙述 / 社会 / 宗教 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、フランス啓蒙期の政治思想史を、モンテスキュー、ルソー、ディドロにおける「立法者」問題に焦点を当てて描き出す。「立法者」問題とは、理想的な政治体の「(再)創設」という政治的行為の問題であり、三人の思想家において、その政治的行為の理想は、社会のあり方や政治体構成員の意志に基づく、自律的=再帰的な統治の回路を創出することに置かれた。まただからこそ、「立法者」は、成功の暁には自ら消滅すべき逆説的存在とされる。この逆説が示唆するのは、政治的自律の理想の実現の困難であり、その困難こそが、ルソーの「公民宗教」問題や、ディドロの「革命の連続」としての「歴史」の概念には見てとれるのである。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究第二年度の本年度には、①モンテスキューとルソー立法者論を中心とする啓蒙期の政治理論と歴史認識の関係についての研究を『消え去る立法者ーフランス啓蒙における政治と歴史』(名古屋大学出版会、2023年3月)として刊行した。②レナル/ディドロ『両インド史』第18篇の批評校訂に携わり、批評校訂版共同編集者として『両インド史』批評校訂版第4巻 (Fernay-Voltaire, Centre international de l'etude du XVIIIe siecle、2023年1月)を刊行した。 ①では、モンテスキュー『法の精神』においては、水平的=社会的関係から出発する、社会関係の自己統御の機制として「法律」や「統治」が捉えられること、そこで「立法者」には、歴史的変動の中で、既存の社会関係を尊重しながら、その都度の社会関係の綻びを法律によって弥縫し、結果的に新たな社会関係を生み出すことが望まれることを示した。 これに対しルソーは『不平等起源論』で、社会関係以前・歴史過程以前の「純粋自然状態」に遡行するところから始める。社会関係を前提とし、歴史的因果関係に従って統治を考える限り、社会状態における不平等はそ必然化されることを指弾するためである。その上で、ルソーが「正統な国制」を示そうとしたのが『政治経済論』であり、そこで提起された「人民主権」の根拠を法律の存立条件に遡って問うたのが『社会契約論』だった。『社会契約論』において、「権利上」のものとして置かれる「社会契約」と「立法」は、法律に服従する人民においてこそ「主権」が存在すること、したがって人民の政府に対する反乱や政治体の解体こそ、「主権」の正当な行使であることを主張する。ルソーにおいては、歴史過程以前に置かれた「権利上」の「契約」と「立法」こそが、現存の歴史を超えた新たな政治体の構成、新たな歴史の可能性を開くのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度刊行された『消え去る立法者』は、本研究課題が対象とする3人の啓蒙期の哲学者のうち、モンテスキューとルソーの両名の主著を取り上げ、それを政治(政治的行為・政治的主体の意志)と歴史(因果性)の関係についてのフランス啓蒙に一貫する問題設定のもとで統一的な思想史的展望を示す業績である。ディドロについては、『百科全書』の項目「自然法」と、『両インド史』のパラグアイ布教区叙述に即した文明化論についての考察を扱うにとどまっているが、すでに『消え去る立法者』のなかで、ディドロについて続編が予告されており、政治を歴史的因果性の中で考えるモンテスキューと、政治的正統性を歴史的因果性との断絶において基礎づけようとするルソーのあいだで、ディドロがあらためて政治と歴史の関係をいかに考察したかを具体的なテクストに即して示すことが残された課題である。長年の研究の成果とはいえ、この『消え去る立法者』の刊行によって、本研究の所期の目的はすでに十分に果たされたものと考えられる。 また、残された課題であるディドロについて、最晩年の立法者論として最も注目に値する「アメリカの革命」をめぐる考察について、レナル『両インド史』第18篇の批評校訂(及び序論執筆)というかたちで、研究成果をまとめることができた。ディドロについては、現在刊行が待たれる、エルマン社版全集のロシア関係の著作の巻の刊行をうけ、『百科全書』期以来の政治思想の変遷を一望のもとに収めた上で、『消え去る立法者』続編の執筆にかかる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関わる限り、残された課題は、『消え去る立法者』にまとめられたモンテスキュー=ルソー論を踏まえ、ディドロの立法者論(政治と歴史の関係についての考察)を検討することのみである。この点については、①『百科全書』期から1772年の『政治的断章』までの政治的著作の検討、②1770年代中葉の『哲学・歴史等雑考』、『訓令についての考察』を筆頭とするロシア関係著作(ロシアの文明化論)、③「アメリカの革命」とヨーロッパにおける「腐敗」の問題を中心とする『両インド史』の政治的・歴史的考察を三つの軸として、ディドロの政治的著作をモンテスキュー、ルソー後の政治と歴史についての独自の考察として位置づけることが課題となるであろう。研究最終年度には、この『消え去る立法者』続編の刊行に向けて、とりわけ①の『百科全書』期の著作を中心に研究を進めたい。また②については、今年六月にエルマン社版全集のロシア関係著作の巻の刊行が待たれており、この刊行を待って、テクストと先行研究の網羅的検討を進める予定である。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)