電子音響音楽における多層的音色構成の思想と伝統器楽由来構造の分析・修復の研究
Project/Area Number |
21K00112
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01050:Aesthetics and art studies-related
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
水野 みか子 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 教授 (50295622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 電子音響音楽 / ヤニス・クセナキス / メタ・クセナキス / 音楽と建築の空間 / 音色 / 電子音響音楽アーカイブ / 笙 / シェフェール / サイモン・エマーソン / 時間軸と音色 / サウンド・プログラミング / ピエール・シェフェール / 音色構成 / 音楽構造の修復 / 音楽構造の分析 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、電子音響音楽を対象に、伝統継承されてきた美的価値を音色表現と音楽構築の二方向から検証し、今日の技術変革によって機能不全に瀕する作品上演の技術修復と再創造を行うものである。研究方法は、音楽学、分析理論、音楽情報処理の三つの学問分野を横断する。具体的には、 第一に、 1960年代の音響思想と、現代に至るまでのその受容的発展を音色理論と器楽音楽との照合において解釈・整理し、第二に、技術変化によって再演不可能となった電子音響音楽作品のソフトウェアプログラムを修復または技術移植する。成果公表は論文・学会発表のほか、約300作品に関するアーカイブと修復作品のオンライン公開上演を含む。
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Outline of Annual Research Achievements |
電子音響音楽の根幹をなす「音色・音響の思想」に着目し、Helga de la Motte-Haber hrsg.Klangkunstによる「音色」記述や、Denis Smalleyによる、聞く人の選択的聴取に基づく音色・音響の多層性の理論をもとに、論考「音楽に感じる空間」を執筆し、現在、出版準備中である。このテキストでは、音楽と建築空間に関わる問題をプラトン、アリストテレスにおいて確認するとともに、Ernst Kurth とGisela Nauckの音楽空間論を論じ、テレマティック音楽の仮想的現実空間に関する特性研究を明示した。 国際研究会議Meta-Xenakisの主催メンバーとして、フランスのルーアン大学クセナキス・センターと協働し、オンライン会議ホスト、研究発表、論文集編集に携わった。Meta-Xenakis日本チームを主導し、日本国内での研究打ち合わせや研究発表を行い、日本音楽学会第73回全国大会でのラウンドテーブルと東京芸術大学でのクセナキス・シンポジウムでの研究報告を実施した。1970年大阪万博のために日本の技術者・音楽家チームとヤニス・クセナキスが推進した共同作業とクセナキスの作品《ヒビキ・ハナ・マ》について、会議議事録、作曲家のメモ・草稿、公表された作業履歴などの一時資料を統合的に考察した。Meta-Xenakisのフランス・チームが開発した一般向けアプリケーション Upisketchを使って高校生向けのワークショップを開催し、コンピュータ音楽を社会に広める機会を設けた。 日本の伝統楽器である笙の音色や奏法に関する現代音楽の使用例を考察し、フランス国立音響音楽研究所IRCAMのセミナーにて講演を行なった。またカナダの学術雑誌Circuitに論文が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、音楽学、分析理論、音楽情報処理の三つの学問分野にわたって横断的方法で進めている。このうち、音楽学的方法として、1960年代の音響思想と、現代に至るまでのその受容的発展を音色理論と器楽音楽との照合において解釈・整理するという研究は初年度までに基盤を作成した。第2年度には、ヤニス・クセナキスの電子音響音楽に関する音楽学研究の近年の動向に鑑みて、日仏に散逸した一次資料を統合的に考察してコラボレーションの経緯を辿り、1970年大阪万博での音響制御技術と作曲家の音楽コンセプトとの一致・不一致を検討し、国際会議等で公開した。また、6年間の国際共同プロジェクト「笙Sheng l’orgue a bouche」に対して、笙演奏家真鍋尚之の技法とパフォーマンスについてフランスIRCAM(Institution de recheche et coordinationacoustique-musique)でのセミナーに寄与し、当該講演はYouTubeで動画配信されている。また、日本の電子音響音楽アーカイブ研究の成果を、ドイツの国際学会AREM(Archiving and Re-Performing Electroacoustic Music)にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方向性として、まず第一に、日本の電子音響音楽における音色創出の分析を行い、本の電子音響音楽に関して「作曲プロセス」と「上演時の器楽書法との関連」という二面性を明確に記録するアーカイブを拡充する。特に愛知、岐阜、三重の中部地区での電子音響音楽の歴史を記録し、再演可能な形にデジタイズし、その成果をシンポジウムとコンサートの形で公開する。また、作成したアーカイブを、国際電子音響音楽研究会の関連データベースにリンクする。第二に、シェフェールの音響思想が日本の電子音響音楽の音色思想に与えた影響について、作品分析と理論的言説の両面から検証し、1960年代と2000年代の相違を比較する。その際、黛敏郎、丹波明、柴田南雄らによるシェフェール解釈を明らかにした後、2000年以降顕著に活発化した日本の電子音響音楽に関して「作曲プロセス」と「上演時の器楽書法との関連」という二面で分析する。 第二として、技術変化によって再演不可能となった電子音響音楽作品のソフトウェアプログラムを修復する作業は、研究協力者を得て実践的に進行中である。日本の電子音響音楽作品データベースの作業は、フランスのTPMC、国際組織ICMA、ニューヨークを拠点とする民間研究団体MYCEMF、ドイツのベルリン芸術大学の研究者との間で協力体制が確立できている。
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Report
(2 results)
Research Products
(20 results)