Project/Area Number |
21K00166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
越川 倫明 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (60178259)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 西洋美術史 / イタリア・ルネサンス美術 / ヴェネツィア絵画 / ヴェネツィア素描 / キリスト教図像 / 美術史 / イタリア・ルネサンス / ティントレット |
Outline of Research at the Start |
本研究は、16世紀ヴェネツィア絵画を代表する画家ヤコポ・ティントレット(1518/19-94)の最も著名な作品群であるヴェネツィア、サン・ロッコ同信会館に描かれた旧約・新約聖書の物語絵画連作の分析を行なう。この絵画連作は、しばしばミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画と比較されるほど、ルネサンスの大規模な宗教絵画装飾を代表する作品であり、本研究を通じてイタリア絵画研究に新たな寄与を行ないたい。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度においては、ティントレットによるヴェネツィアのサン・ロッコ同信会館上階大広間の装飾プログラムについての検討を継続し、特に、連作絵画の制作時期に大きな社会的不安をもたらした疫病の流行との関連を、同時代の史料に基づいて時系列で整理し、連作の主題選択と社会状況との符合について精査した。この考察の結果は、年度末に紀要論文として公刊した。関連して、当初予定していた北方マニエリスム版画との関連についても検討を重ねたが、公刊論文とするに足るだけの結論は得られず、継続課題とした。 同じく、サン・ロッコ同信会館の地上階広間に描かれた「聖母マリア伝」に関する考察を開始し、近年の研究成果を詳しくチェックした。連作のいくつかの作品につき、新たにデューラーの版画連作から着想の発端を得ている可能性に思いいたり、ティントレットが独自の絵画構想を練り上げていくプロセスについて考察を進めた。宗教図像の正統性と地域的アイデンティティの表現に関わるこの問題については、令和6年度のうちに公刊論文として発表したいと考えている。 関連する素描作品の検討については、ティントレット後期の素描群全体に関する再検討を、先行研究を批判的に参照しつつ実施した。この成果は来年度以降にまとめて公刊する予定であるが、当面の副産物として、過去にティントレット作品とされてきた個人コレクション所蔵の2点の作品を、帰属を修正して同時代の画家パルマ・ジョーヴァネの作とする短い論考を英文で公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の実施事項のひとつ、すなわちサン・ロッコ同信会館の絵画連作のプログラムおよび着想源の問題については、令和5年度に刊行した上階大広間に関する上記の紀要論文でひとつの成果をだすことができた(所属大学のリポジトリで公開)。また、地上階広間の連作の問題についても検討を進めており、令和6年度中に論文として公刊する目途をたてることができた。 もうひとつの実施事項である関連素描の整理と検討については、すでに4年度に一定の成果を発表しているが、令和5年度中に調査範囲をさらに大幅に拡大し、現在、ティントレット後期の素描の全体像を論じるより規模の大きい論考の準備を進めている。ただし、扱う情報量の多さから、この成果の公刊は来年度以降になる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は研究計画の最終年度にあたるので、まず、令和5年度に準備を進めた地上階広間の「聖母マリア伝」に関する論考を最終的に公刊したい。この論文の考察を通じて、画家ティントレットが標準的なキリスト教図像を出発点としながら、異なった、主にヴェネツィア社会特有の視覚表現のイディオムを援用しつつ、独自の作品を考案していくプロセスを明らかにすることを試みる。 また、関連素描の検討をより拡大して対象を広げ、ティントレット後期素描の包括的再検討として作業を進める予定である。すでに令和5年度に整理を始めているが、令和6年度中に執筆を継続する(ただし同年度中に公刊まで実現することは難しいと予想しており、令和7年度の公刊を目指したい)。 当初からの課題である16世紀後期における予型論図像の問題については、興味深い比較材料としてすでにいくつかの版画作品を特定しているが、関連する先行研究の情報の乏しさから、現在も継続課題としている。
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