日本と台湾における都市からみる「故郷」の表象とその比較-1930年代を中心に
Project/Area Number |
21K00170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01060:History of arts-related
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
児島 薫 実践女子大学, 文学部, 教授 (40195714)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 官展 / 顔娟英氏レクチャー / 藤島武二 / 台湾美術展覧会 / 結城素明 / 常岡文亀 / 山口蓬春 / 陳進 / 故郷 / 原住民 / アイデンティティ |
Outline of Research at the Start |
1920年代から30年代に台湾から東京に留学した画家たちは、台湾を離れることで自分自身のアイデンティティと繋がる「故郷」としての「台湾」を発見した。 一方この時代、日本の画家たちも西欧に外遊することで日本に「故郷」を見いだし、また台湾を訪れるなかで歴史を意識した。画家たちは都市と田舎を往き来するなかで「ふるさと」を美化し、また都会での生活にアイデンティティを確認し、作品に表した。このような「故郷」という視点を導入することで、台湾美術展覧会の台湾の作品と同時代の官展の作品、さらには「新古典主義」と呼ばれた作品などとの相互作用を考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
①本研究の出発点となった2021年3月14日に国立台湾美術館で開催されたシンポジウムで発表した内容に基づく論文が出版された。児島薫「台展、府展時代の日本の官展における日本画の新傾向について-「故郷」の視点からの考察」『共構記憶 臺府展中的臺灣美術史建構』(臺灣藝術論叢3)、国立臺灣美術館、芸術家出版社、2022年11月、p. 284-309(中文),p. 310-337(日本語). ②福岡市アジア美術館で研究協力者とともに館蔵品の調査をおこなった。対象は矢崎千代二のように日本から台湾に行って描いた日本人作家の作品と楊三郎による風景画について、描いた場所について検討した。作者不明在台日本人によるとみられる作品についても討議したが、作者を特定することはまだできていない。 ③2023年3月18日、実践女子大学と臺灣中央研究院を結んで、顔娟英氏(台湾中央研究院歴史語言研究所兼任研究員)によるオンライン講演会「台湾美術史研究-その逆境と近年の進展」を開催した。台湾近代美術史を築いてきた顔氏によるこれまでの調査・研究を自らふりかえり、近年の成果である「不朽的青春」展(2019年)とそれにもとづいて編纂した二冊本の『臺灣美術両百年 不朽的青春』の出版に至るご苦労についてうかがった。若手研究者が臺灣でも育っており、今回日本側からも若手研究者を集めたことで次世代に向けて研究のバトンを渡すための機会を提供できた。 ④2019年12月6日に臺灣中央研究員、福禄文化財団主催のシンポジウム「近現代東亜美術史的新資料與新研究」(台北、北投文物館)でおこなった口頭発表を元に大幅に改稿した内容を出版した。児島薫「藤島武二が構想した「東アジア的」な女性像について」実践女子大学文学部『紀要』第65集、2023年3月、p.51-62.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で考えていた台湾での調査が未着手であり、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で見学を希望した展覧会を見ることができなかった。そのかわりにこれまで口頭発表をしたままであった藤島武二、菊池契月、土田麦僊、松岡映丘、といった画家たちにおける1930年代頃の作品に関する研究をまとめることができた。これまで日本画家たちが、1930年頃に過去の美術作品を研究したり参照したりした状況に関しては「新古典主義」の呼称が用いられてきたが、これについて「古典」のような美学的な規範を求めるというよりは、より画家個人の心情的なものが作用していると考え、それについて「台展、府展時代の日本の官展における日本画の新傾向について-「故郷」の視点からの考察」および「藤島武二が構想した「東アジア的」な女性像について」の論文で述べた。今後引き続き考察を続ける。 顔娟英氏のオンラインレクチャーを開催し、台湾の近代美術史構築の歩みについてお話いただいた。また黄土水の作品の発見など、近年の研究事情について知ることができた。研究協力者とともに国内の比較的若手の研究者たちに声がけを行った。研究目的に含まれていた、台湾の研究者との新たな連携の可能性を開くということの端緒を作ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年2月から3月の間に台湾を訪問し、台北市美術館、国立台湾美術館、台南美術館で作品調査をおこなう。楊三郎美術館など個人の画家の美術館で資料調査をおこなう。画家たちが描いた場所についてまた未解決のままである福岡市アジア美術館所蔵の台湾原住民を描いた作品の作者探索を継続する。藤島武二をはじめとする日本の画家たちが、台湾に台湾美術展覧会、台湾総督府美術展覧会の審査に赴いた経験を通して、どのように自己の「日本人」としてのアイデンティティを意識したのかについて考察を深める。また彼らが台湾出身の画家たちとどのように交流したのかについて引き続き文献や資料調査により探求する。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)