Project/Area Number |
21K00198
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 01070:Theory of art practice-related
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
菅 俊一 多摩美術大学, 美術学部, 准教授 (30740716)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 表現方法論 / メディアデザイン / コグニティブデザイン / イメージ生成 / アニメーション / 時間補完 |
Outline of Research at the Start |
本研究は従来の仮現運動を基にしたアニメーションに変わり、静止画及びアニメーション時間軸を切断することによって鑑賞者の頭の中に動きのイメージを生成させる新しい動的イメージ表現手法を開発するというものであり、以下の3つの特色をもつ。1.発達心理学・知覚研究の知見に基づいているため、体験者の文化や言語に依存しない。2.静止画など時間軸を持たない情報によって動きを示すため、映像分野以外の多くの表現制作者が現在有する技術を使用して、新たに動きのイメージをデザインすることが可能。3.鑑賞者の想像力を用いて動きのイメージを作り出すため、作品鑑賞体験自体が人間の想像力を訓練・拡張する機能を担うことが可能。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人間の持つ補完という認知現象の中でも、遮蔽された部分を補うアモーダル補完のような造形的な補完ではなく、時間方向にはたらく補完の可能性を探求している。具体的には、単一の静止画の提示だけで動きイメージを作り出す手法や、動きを途中で切断することによってその後の動きを想像させるといった、従来の仮現運動を基にしたアニメーション表現とは異なるアプローチで鑑賞者の頭の中に動きのイメージを作り出すための表現手法を開発し、物語をはじめとした意味伝達の領域にまで応用していくことを目的としている。 研究の2年目である2022年度は、動きを示すための手がかりのアプローチとして、動きの痕跡を示すなど過去を記述する「トレース」、これから動いていく軌跡として未来を示す「方向づけ」、動きプロセス全体の可能性を示す「キーフレーム」という3つの表記概念への整理を行い、時間変化を圧縮・記述するための方法を実制作を行いながら検討した。具体的には、昨年度に開発した印刷物の上に立体物を置く2.5D的な手法を採用し、動く主体を立体物、痕跡や軌跡を印刷した線で表現することで、同じ立体物に対して異なる表記概念・動きを適用して比較検討が可能な方法を設計し試作を高速、大量に作ることで検討を行った。 静止した情報に対してどのような整理によって変化する動きイメージを想起できるかという点が本研究の重要な要素であるが、個々の単純化された動きを定義するアプローチについて整理ができたことは重要な成果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は表現研究という形式をとっているため、どのように動きのイメージが生まれるかを実際に膨大な数の試作検証を繰り返すことで確認しながら、手法を確立していくプロセスを経ることが重要となる。2022年度は、昨年度検討していた動きイメージを想起させるためのトリガーについて、既に動いた後として見るか、これから動く先を見るかといったように、どのような時間方向の定義が可能かどうかを検討している。一見些細な問題に思えるこの定義は、本研究が最終的に物語などの何らかの意味伝達を行うというものであることから、過去と未来の事象を区別することが重要な意義があると考えている。 しかし、実際に物語などの意味を構成する手法として確立するためには、移動や変形など物理的な変化から想起された単純な動きイメージから、どのように意味を発生させることができるのか、意味の紡ぎ方に関して実例を提示する必要がある。このことは、昨年度も課題として挙げていたが、確実な突破口がまだ見出せず、物語の基盤となる時間軸の設計を整理することから手がかりを探っている段階である。 その手がかりの一つとして、単一オブジェクトだけによる単純な動き要素を逐次的に配置していくのではなく、複数のオブジェクト同士が相互に作用する動き要素の繋がり自体を作り出すことで意味を発生させるというアプローチを考えている。このアプローチはまだ検証がされていない段階なので、「やや遅れている」と状況を自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題における研究の推進方策は、昨年度までに整理した動きイメージを想起するアプローチを用いながら、物語などの意味を表現するために以下の2点についての検証を実践していくことを考えている。 まず一つ目は、複数のオブジェクト同士が相互に作用する動き要素の繋がり自体を作り出すことで、意味を発生させるというアプローチについての検証を行う。これは、Heider and Simmel (1944) のような複数のプリミティブなオブジェクトが相互に関連した動きの要素だけで物語を想起させる事例を参照し、オブジェクトと動きを表す線のみで実践が可能か検証するところからはじめていく。この検証から、複数のオブジェクトの動きが混在した場合や、それぞれの動きを示す線が長くなった時に見失わずに辿り切るパターンに関しての制作手法を整理する予定である。 二つ目は、複数のフィールドを用いてシーンを構成することで意味や物語を記述する独自の表現手法の構築を行う。こちらは映像のカットの概念を導入し、オブジェクトとその動きを示す線を描くことで設定された短い動作のシーンの置かれた平面フィールドを、漫画のコマのように複数配置することで、順に物語的展開を示す方法について実践する予定である。 これら二つの検証を進めながら、研究の最終年度である2023年は実際の作品制作を行うことによって、研究目的の根幹にある手法を確立させることが目標となる。
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