蕉風復興運動の総合的研究-天明期・化政期における尾張俳壇の資料集成をもとに
Project/Area Number |
21K00295
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
寺島 徹 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (30410880)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 暁台 / 桂葉 / 秋田千句 / 月渓 / 蕉風復興運動 / 中興期俳諧 / 蕪村 / 尾張俳壇 |
Outline of Research at the Start |
これまで、蕉風復興運動は、天明期俳諧を蕪村時代、化政期俳諧を一茶時代として画然と区切られ、通史的な分析が十分になされていない。本研究では、蕪村の盟友であった暁台、一茶と交流の深い士朗という師弟関係にある二人の尾張俳人に着眼し、その天明期から化政期にわたる俳諧資料を連続したものと捉え、諸地域に点在する資料を調査・集成し、精確なテキストを構築する。くわえて、天明期、化政期の発句・連句のメカニズムを問い直し、近世の共時的な視点から蕉風復興運動の発生要因の一因を明らかにする。江戸時代の生の芭蕉理解の事例を通し、俳諧指導の方法論を検証し、生涯教育、国語教育分野のメソッドとして活かし発信することも目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中興期俳諧、化政期俳諧における蕉風復興運動の展開に関する調査、分析と、中興期の秋田俳壇を相対化するために重要な初期俳諧の秋田俳書の調査、分析を行った。仙台、秋田、上方への出張による書誌的な調査研究をもとに、蕪村、几董、月渓、暁台の新たな書簡、句幅、および延宝期の新出俳書(秋田千句)の書誌調査、翻刻などを進めることができた。蕪村、几董、月渓の天明2年における書簡については、秋の俳文学会全国大会のシンポジウム「俳諧資料の保存と活用」(10月23日)において、パネラーとして、発表、紹介した。また、福島の松江が、士朗の序を利用して『鹿島詣』を喧伝しようとした可能性を指摘し、芭蕉顕彰運動の伝播の力の一端を明らかにした。とくに、松江に唆されただけでなく、遺物に突き動かされて、日向の無名といってよい俳人が『ひとつ合器』という50丁にもわたる俳書を作る過程などを調査・分析した。 『秋田千句』は、寛文から元禄期にかけ秋田俳壇を牽引した平賀桂葉の撰となる、新出と思われる版本『秋田千句』(延宝八年刊)である。季吟と桂葉、里鶯の関係性を新たな視点から指摘することができた。ツレとなる発句撰集『八束穂集』との関係も明らかにすることができ、内容についても、『秋田千句』と『阿蘭陀丸二番船』の和歌の会釈のしかたの比較を通して、同書が、貞門の色彩を残しながらも、談林調も摂取していたことを明らかにした。この時代の地方俳書の一側面を指摘するとともに、秋田俳壇と中央俳壇とのつながりの一部を明らかにすることができたと考えられる。 なお、国語教育への応用という面でも、伝統的文化教材のICT教育への導入を検証し、現場の教員と連携して、学術論文に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
芭蕉百回忌以後、芭蕉を顕彰する活動が盛んになったが、その芭蕉への崇敬の念、憧憬の念、遺物とされる物への思いは、当時の俳人たちが活動を続ける上での原動力となっていた。俳文学会でのシンポジウムを見すえた調査において、真彦編・松江序『ひとつ合器』、後半で、春坡編『小艸』という二つの芭蕉顕彰に関わる俳書の生成事例を明らかにしようと、東北地方に赴き、調査、分析を行った。また、仙台市の旧家の方ならびに、仙台市の元博物館長より、道彦の供養碑、遺品の硯等のヒアリング調査も行い、今後の、仙台地方に関する調査について、暁台撰『みちのく』等の所蔵の可能性のある新たな文庫の調査も検討することとなった。夏には、秋田の調査も進め、明徳館において、秋田の五明関係の自筆資料の調査を行い、『秋田千句』について、二次資料の収集も行っている。『秋田千句』のテキストの翻刻を進め、語彙体系化のマクロを構築し、付合語彙の紐付け作業・分析も進めた。期間中に、クエリの改良も行い、今後の継続的な付合語彙の解析が重点的に行えるように改善し調査の体制を整えている。
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Strategy for Future Research Activity |
江戸中期の俳諧調査にあたっては、中興期の俳人の真蹟、稿本、書簡などの典籍の一次資料を収集し、翻刻(解読)することが必要である。2022年度までの仙台の調査で得た、几董、月渓、暁台関係の資料の翻刻、作品分析を通して、研究会、全国大会で順次発表を行い、論文、資料集として公表していく予定である。『秋田千句』の下巻の翻刻も行う予定である。また、マクロのソフト改良をもとに、暁台連句、連句評点集などを順次語彙分析できるよう紐付け作業を進めてゆきたい。暁台の連句における式目重視のあり方についても調査・分析を進めていきたい。 国語教育への応用的な調査も継続してゆきたい。天明、化政期の俳諧は、蕪村、一茶に比較し、その周辺の俳人たちの発句、連句は、過去の研究者たちによって、版本の個人句集、各種七部集・類題発句集などのアンソロジーから恣意的に数句拾い出され、解釈本に紹介されることが多くみられた。資料整理を進める中で、従来、見過ごされた俳人たちの佳句を拾い出すことが可能になると考えられる。基礎研究の中から抽出した佳句を、地域教育や国語教育の場へわかりやすい形で提供していきたい。とともに、教育、地域活動の面でも新素材として活かす取り組みを検証してゆきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(8 results)