清朝康乾年間における、地方文献編纂と詩会活動を背景とした杭州詩人達の葛藤と文学
Project/Area Number |
21K00337
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Fukuyama Heisei University |
Principal Investigator |
市瀬 信子 福山平成大学, 経営学部, 教授 (50176294)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
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Keywords | 杭州 / 詩 / 陳章 / 地方 / 中国文学 / 地域 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、清代前半期、各地の詩会で活躍した杭州詩人が地方文献編纂に貢献した実態を明らかにするとともに、詩の文学性を低く評価されることとなった杭州詩人の葛藤とそこから生まれた新たな文学に迫るものである。 清代は地方文献の時代であり、地方誌・地域詩総集等が盛んに編纂された。杭州詩人は他郷で詩会を通じて地方文献に多くの詩を残したが、詩人として評価されたとは言い難い。彼らが他郷に移動した理由、他郷での実態を調査し、地方文献の時代に消費されたかのような杭州詩人の実像に迫る。更に杭州詩人袁枚を、反格調派としてではなく、杭州詩壇の在り方への反発という視点で見なおし、清代詩の新しい側面を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、杭州詩人陳章に焦点をあて、その活動と作品及び作品に対する評価について研究を進め、その結果を「詩人陳章の活動とその評価」(『経営研究』第19号)に発表した。陳章は科挙に参加せず、生活が困窮するなかで、弟とともに天津・揚州に居を移し、パトロンのもとで詩作活動を行った。そこで、まず活動の実態として、長く居住した揚州と、地元杭州での活動についてそれぞれ調査を実施した。陳章が天津や揚州に移動したきっかけは、まず杭州で詩名があり、その後揚州などの塩商から求められ、収入に繋がるものとして移動したことに始まる。塩商に求められたのは彼らが開催した詩会の目玉としたためであり、陳章は詩人としえ詩作にはげむ。その結果、生前に刊行された詩は、詩会の詩集と地方文献に掲載された詩、寺誌に残る詩がほとんどで、個人の感情や境遇を反映するものではない。ところが、彼の詩に対する身近な人々の評価は、孤独と貧困が詩に見えることを彼の詩の最も優れた点だとする。唯一死後に刊行された詩集には、そういった評価に値する詩が見えるが、実際に多くの人に認識された陳章は、職業詩人として地方誌などに作品が載るローカルな詩人といに留まってしまったきらいがある。詩会の詩人が、名を挙げるたびに、本来の詩人らしさが隠されていってしまったという状況が、一時期地方詩会で活躍した杭州詩人たちにあったことを明らかにした。 また、詩会という点で、清代の「集選詩」という詩体が、宮中あるいは地方の詩会で用いられ、盛んになった状況を「清代「集選詩」に見る文選の受容」にまとめた。その中で、江浙地域の詩会の中で、文選の句を集めた集選詩を含む集句詩が作られていたが、多くは高い評価を受けず作品が残らなかったことを明らかにした。これは陳章と同時代のことで、地方詩会隆盛の時、知識や形を重視し、詩人本人を映さない詩作が行われていたという背景を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、陳章・陳皐兄弟の詩人としての活動とそれに対する評価を調べ、そこから彼らが詩人としてどういう存在であったかを明らかにすることを目標としていた。 本年度も、新型コロナの影響で、中華人民共和国及び中華民国への入国がスムーズでなく、外国出張が適わなかった。そのために、直接見る予定であった文献を見ることができなかった。具体的には陳章のしかし、在外の研究者の協力を得て、コピーなどである程度の資料を入手することができた。また、国内外の図書館でデジタルアーカイブの公開が進み、一部の書籍を除き、必要資料を調査することができたことは大きく、計画はほぼ順調に進めることができた。直接確認が必要な資料については、京都大学人文科学研究所に赴き、調査することができた。 陳章の活動を調査する上で、揚州市図書館所蔵の陳章文集を直接確認する予定であったが、そこだけはできなかった。しかし、収録されている内容が、直接活動に関わるものではないことを、幾つかの論文から確認しており、今回は周辺の詩人商人たちの資料から調査を進めることとした。 清代の文献については、清代詩文彙編第二輯のデータベースが販売され、データの検索が容易になったことで、その後の調査が楽になったが、続編の販売は次年度以降に持ち越されており、入手までは直接文献にあたって調査する以外ないという状況である。 また次年度に向けて袁枚の文献調査にもすでに取り組み始めており、今後の研究成果に向けては、ほぼ順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、杭州詩会全盛期の詩人たちについて考察してきたが、今後は詩会がピークを過ぎたころに活躍した袁枚という同郷の詩人を取りあげ、彼からみた杭州詩壇についての記述を調査する。その中で、性情を詩に求める袁枚の主張が、格調派への反発というのみならず、故郷の詩人たちの作詩活動をも背景にしていたのではないか、という点に迫ってみる。そのために、昨年前見られなかった資料を見ることで、杭州詩人の活動についてのこれまでの研究成果を補足する。これらの調査を踏まえて、清代において地方詩壇の詩会活動に従事した地方詩人たちの活動実態と、詩人本人が望んだ姿とは異なった形で評価されることとなった詩会の詩人たちの葛藤に踏み込んでゆきたいと考えている。 これらの研究を推進するためと、新型コロナでみられなかった資料を調査するために、今年度は中国もしくは台湾の図書館に直接赴き、これまで確認できなかった資料を確認する。具体的には、杭州詩人と、その周辺資料を、中国及び台湾に所蔵される書籍の中で確認する。とくに蔵書場所が限られている清代書籍の調査を最優先して進めることとする。 また国内研究所・図書館に赴き、とくに清代地方資料についての調査を進める。更に近年公開があいついでいるデジタルアーカイブは、多くの文献を居ながらにして見ることを可能してくれているため、極力これらを利用することとする。また、随時作業が進んでいるデータベースを大いに活用し、作業の効率化に努めることとする。 これらの成果については、学会で発表し、また論文の形にまとめて公表することとする。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)