Project/Area Number |
21K00346
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
亀澤 美由紀 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (60279635)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | トマス・ハーディ / 男性性 / 物質主義 / モノ理論 / アレゴリー / もの理論 / Thomas Hardy / ジェンダー / Thing Theory |
Outline of Research at the Start |
トマス・ハーディの特に後期小説における男性性の揺らぎを、女性の経済力獲得に帰するのではなく、19世紀に大きく発展した資本主義経済・信用経済のあらわれとしてみる。労働と性の問題に特化したマルクス主義フェミニズムではなく、高度資本主義とその社会――そのなかには労働のみならず大量生産されるモノも含まれる――に照準を合わせたThing Theoryを用いることによって、ハーディ後期小説におけるジェンダー支配の揺らぎと経済の関係、さらには「ひと」の解体の様子を析出する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではトマス・ハーディの後期文学に焦点をあて、19世紀における経済や社会の急激な変化が男性性および人間主体の表象にどのように反映されているかを分析している。特に、19世紀半ばから急速に一般大衆に広まった信用経済(株や債券による経済活動)とそれに刺激されて急成長した消費文化・大量生産による物質主義が、人間主体の内面世界にいかなる影響を与えているかを探っている。このテーマはハーディの男性性の表象をイヴ・コゾフスキー・セジウィックの『男同士の絆』および「ホモソーシャル連続体」の概念によって分析しようとするところに端を発している。研究が進むにつれ、世紀末の経済的大変動により男性主体というよりも人間主体そのものが解体されていっていることが明らかとなり、「もの」と「ひと」との主客逆転の様相がますます顕著なかたちで析出されるようになった。2023年度は、「ひと」の客体化がもっとも明確に表れている作品『日陰者ジュード』を特にとりあげた。具体的には、リトル・ファーザー・タイムをアレゴリーとしてとらえ、彼を19世紀末の物質文明がもつ抽象化の力の具現化として論じた。その結果、見えてきたのはこの脇役的登場人物が、ハーディの詩劇『覇王たち』につながる特徴を備えているという点である。リトル・ファーザー・タイムはハーディの(後期)小説群と『覇王たち』を代表とする詩・詩劇との中継点である。そのことを議論した論考「小説から詩へ、『日陰者ジュード』論考――アレゴリーとしてのリトル・ファーザー・タイム」を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来は『ジュード』論をまとめたのち、これまでの研究の全体を俯瞰する作業をする予定だったが、『ジュード』論の研究成果をまとめる作業に時間がかかり、俯瞰作業に着手できなかった。その理由はハーディ文学の抽象性を論ずるうえでシュミラークルの概念に触れることの重要性をあらためて認識し、この分野の研究書を調査していたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
シュミラークル概念をもっと研究の中心に位置づけながら、これまで行ってきたハーディ研究の全体をまとめる作業を行う予定である。
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