Project/Area Number |
21K00357
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤野 功一 西南学院大学, 外国語学部, 教授 (40321294)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 不定形の行動主体 / 不定形な働き / ウィリアム・フォークナー / 『寓話』 / スノープス / 機械 / 動物 / 対話 / 文学読解 / 都市 / 連帯 / アメリカン ・モダニズム / 大衆文化 / ニューヨーク / 孤立と連帯 / 個人的民主主義 / 小説 / 不定形な行動主体 / 少数派 / 他者 |
Outline of Research at the Start |
民主主義のアップデートに文学研究は貢献できるだろうか。資本主義に基づく近代世界システムが限界を迎えつつある現在、人々はより民主的で、より平等主義的なシステムへ移行する具体的な方策を探る時期に来ている。しかし、これまでの多数決による民主的制度では、少数者の自由は必ずしも尊重されてこなかった。ウィリアム・フォークナーの後期作品群は、先駆的に少数者の自由の拡大を描き、常識では受け入れがたい「不定形な行動主体」として出現する少数者が、同時に、自由を補強し、より民主的な社会への契機になるこ とが描かれる。この研究では、フォークナーの後期作品が、いかに民主主義のアップデートの可能性を示したかを論証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度の実績としては主に四つ挙げられる。[1]中央大学の「英国モダニズム文学・文化史研究」チームによる人文科学研究所公開研究会に招聘され、「ウィリアム・フォークナーの『寓話』における不定形の働き:快楽と平和の追求」の題名にて講演を行なった。[2]フォークナー の後期作品を中心として研究する論集の出版を目指して、現在のフォークナー研究者が集う「スノープス研究会」の第一回研究会にて「貯水タンクと野良犬:フォークナー の『町』と『館』における粗野な快楽の勝利」の題名のもと発表を行い、フォークナーの『町』と『館』において登場人物が機械や動物とどのような関連を持ち、それはどのような不定形の働きを示しているかに焦点を当てて論じた。[3]中央大学での招聘発表を発展させたものを論文にまとめ、『西南学院大学外国語学論集』(第4巻)にて「快楽と平和の追求―ウィリアム・フォークナーの『寓話』における不定形な働き」の題名のもとに発表した。フォークナーの『寓話』のなかで、近現代の戦争に対抗して、人間と機械と動物の作り出す形なき個人的関係はどのように抵抗できるかを考察した。[4]九州アメリカ文学会がDuquesne大学のグレッグ・バーンヒゼル先生を招いて講演会とワークショップを開催する企画に参加し、ワークショップにて “‘A Line of Birds on a Telephone Wire’: A Pursuit of Pleasure and Peace in William Faulkner’s A Fable” との題名のもと、英語による発表を行った。これら4つの発表及び論文を通じて、「不定形の行動主体」がどのようなものであるかについて細部にわたる検討が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は日本語による研究発表2回、英語による研究発表1回、研究発表に基づいた論文1篇を発表し、これらの実績のなかで「不定形の行動主体」についての概念をより明確化し、むしろ「不定形の働き(英語ではamorphous agency)」としてこの概念を表したほうが良いと言う方向性が明確となった。また、この概念についてのより詳細な記述を行うという目的については、当初期待した以上の実績を上げることができた。しかし、本来の研究対象であるウィリアム・フォークナーの後期作品について、「不定形の働き(amorphous agency)」概念を適用した具体的な英語による著作は未だ完成していない。今回の研究計画の成果を出版するにあたり、出版契約を結んだアメリカの出版社であるLexington Booksには、原稿完成の締め切りを正式に2026年の3月1日とした。この日までに、具体的な研究成果として単著として刊行するための出版原稿の完成を目指す。コロナ禍の影響により、本来であれば2021年3月31日から2022年3月31日まで行う予定であった在外研究が延期され、2024年3月31日から2025年3月31日に実施することとなった。この在外研究中に予定していた作品研究及びLexington Booksからの単行本刊行に向けて準備するが、当初の計画からは遅れている。そのため、本研究課題の客観的な進捗状況は「やや遅れている」としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法としては、2022年度に刊行した藤野功一編著による『都市と連帯―文学的ニューヨークの探究』の序文「序―他者の歴史化に向けて」において提示できた「他者の歴史化」の概念、および、論文「都市の渇き、あるいはラルフ・エリスンの『見えない人間』における不定形な働きについて」によってより明確に記述した「不定形な働き」の概念、さらに2024年度の発表3件と論文「快楽と平和の追求―ウィリアム・フォークナーの『寓話』における不定形な働き」によってより明確となった「不定形な働き(amorphous agency)」の記述を踏まえて、具体的なウィリアム・フォークナーの後期作品研究を完成させるべく、英文による単著Amorphous Agency in William Faulkner’s Later Novelsの執筆に取り組みたい。この単著の完成は、アメリカでの1年間の在外研究も必要であるため、コロナ禍のために延期となった在外研究を2024年3月31日から2025年3月31日に実施したのちに完成する予定である。また、現在、京都女子大学の金澤哲先生の主導のもとに進められている、ウィリアム・フォークナーのスノープス三部作を中心とした研究活動及び論集作成にも参加しているため、この活動における研究発表、および論文作成にも取り組み、さらに、2024年度7月には、ミシシッピ大学で行われる国際学会Faulkner and Yoknapatawpha Conferenceにおいて金澤哲先生および森有礼先生とともに英語によるパネル発表及びディスカッションを行う予定である。
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