Project/Area Number |
21K00362
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
園井 千音 大分大学, 理工学部, 教授 (70295286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 耕一 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20274558)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | イギリス文学 / 国民意識 / 自由 / 寛容 / ミルトン / コーラム / 奴隷貿易 / 共和主義思想 |
Outline of Research at the Start |
本研究課題の中心的課題はイギリス国民意識の特質とは何か、という問いを文学と国民意識形成との影響関係において社会的思想的に検証することである。 イギリス国民意識の自由の追求、宗教的寛容等の精神的基盤が16世紀後半(シェイクスピアおよびサー・フィリップ・シドニー等の文学的主題を中心に)に形成され始め、その要素が共和制樹立を経て反動的王政復古を経験する17世紀ミルトン、マーヴェル文学において、より明確になり、ヨーロッパ啓蒙主義の影響と人間の自由と社会的権利確立が中心的興味となる18世紀においてイギリス国民意識の特質として確立した過程をロマン派文学とミルトン文学の思想的関係において検証する。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は16世紀後半~18世紀イギリス文学と国民意識の関係について寛容精神の形成を中心に分析した。具体的には、研究代表者は寛容精神の形成過程分析を中心に16世紀後半から18世紀イギリス文学の道徳的主題との関連について検証した。本研究ではイギリス国民意識の特質は寛容的思想であると仮定し研究を進めている。この特質は17世紀内戦時にその基盤が明確になりそれが現在のイギリス国民性の基本的性質として形成されたことを文学、思想、政治的資料を考察することで分析を進めた。特に内戦時における国教会、長老派、独立派の分派間の宗教的軋轢が政治的権力闘争とほぼ同義であったこと、宗教改革を前進させようとする力とそれに抵抗する勢力の葛藤、分派間における信仰の自由と寛容に関する認識の相違などについてジョン・ミルトンの『離婚論』、『アレオパジティカ』、『イングランド宗教改革論』、『第一弁護書』を中心に分析した。ミルトンの宗教改革に関する認識と16世紀におけるコモンウェルス観の関連を寛容と自由という観点において考証した。 また王政復古後の寛容政策の失敗と名誉革命の必然的関係を社会的思想的に分析した。同時にミルトンと同様に国民生活における寛容の重要性について関心があったマーヴェルの政治的散文及び詩と国民意識形成との関連を検証した。イギリスにおける政治的寛容政策とミルトンやマーヴェルが追求した寛容の精神との乖離をイギリス社会の変化とともに検証し、現在も継続中である。 研究分担者及び研究協力者との検証において、以下の点について分析した。①シェイクスピア史劇における君主像についての思想的政治的分析。②アンドルー・マーヴェルの政治的社会的思想の分析。③17世紀科学者とイギリス社会の関係について検証。④18世紀イギリスの経済問題と道徳的学との関係を分析。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は自由と寛容の精神とイギリス国民意識形成との関連を中心に17世紀の社会と文学を中心に分析した。①ジョン・ミルトンの1650年代~1660年代の政治的文学的作品と共和主義思想構築の関係を検証した。ミルトンの人間の自由の維持と社会の関係に対する関心はイギリス国家が向かうべき方向を示す信念を反映した。それは彼の自由と理性を重視する芸術的姿勢と呼応し、この時代の政治的文学的主題として伝えられた。『イングランド宗教改革論』、『第一弁護書』、『失楽園』において寛容に存する道徳的価値を示した。国家的動乱の時代におけるミルトンの主張は常に緊急性を持ち、人間の生き方と社会のかかわりに対する真摯なメッセージとして表現された。 ②共和政府時代の寛容政策がイギリス国民性の基盤的性質と密接に関連することを検証した。16世紀の宗教改革以来、国教会とカソリック教会、国教会と長老派、長老派とピューリタンなどの分派の間の葛藤は複雑化し、徐々に宗教的政策は政治的性質を強く示した。このことは王政復古後の寛容政策の失敗が名誉革命を結果的に引き起こしたことが示す。この状況においてクロムウェル政権の寛容政策は特異性をもつ。共和政府においては宗教的寛容政策を中心的に論じた。寛容に関する問題は時代を経ると二次的な問題として論じられることになるが、17世紀共和政府時代は寛容について国家組織で議論した唯一の時代であるといえる。寛容主義を実現しようとしたクロムウェルの政策は議員間の思想的政治的思惑によりとん挫し、これが結局、政府の崩壊の大きな要因となった。しかしながら、自由についての真摯な姿勢はイギリス国民意識の基盤として強く意識されるものとなった。 以上の点について研究分担者及び研究協力者と計3回開催した研究会において16世紀から18世紀イギリス社会における寛容と自由の精神と国民意識形成との関連についての検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は研究最終年度であり、研究成果を書籍としてまとめるために論考する。研究代表者は研究の総括と研究分担者及び研究協力者とともに次の課題について検証とまとめをおこなう。①16世紀後半から18世紀のイギリス社会における寛容精神と自由の思想が国民意識の特性として形成された過程についてまとめる。具体的には①17世紀内戦時から18世紀までのイギリス社会と国民意識の特質形成における文学の道徳的主題の寄与について分析結果を整理する。特にイギリス国民意識の自由と寛容の思想がその基盤として明確になった過程について17世紀の寛容の精神と社会の関係を中心に、トマス・ホッブズ、ジョン・ロックの思想との関連を分析しながら研究結果をまとめる。16世紀後半から17世紀にかけての宗教改革の性質の変化を文学、政治、社会の関係における検証する。16世紀演劇の主題と社会的政治的状況との関係、王権神授説の解釈と暴君廃止論の表出の分析、16世紀~17世紀社会契約説とコモンウェルスの概念の検証についてまとめ、イギリス国民性の思想的特徴を証明する。②16世紀後半から17世紀前半までのイギリス社会における科学思想の発展と国民意識形成の関連分析をまとめる。出版物の主題と国民生活の特徴について整理し、宗教改革、内戦の影響を分析する。③18世紀のイギリス社会改革運動と道徳的哲学の関係を検証する。 以上の研究結果を計4回程度の研究地合わせ及び研究会においてまとめ、検証結果について検討し、論文及び書籍として公表する。
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