The Latinity of Reginald Pecock (c. 1395-c. 1461)
Project/Area Number |
21K00369
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井口 篤 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 准教授 (80647983)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
|
Keywords | レジナルド・ピーコック / 中世後期イングランドの宗教文化 / 理性と信仰 / スコラ神学 / スコラ哲学 / 無限 / 中世イングランド思想史 / 中世イングランド宗教文化 / スコラ神学の俗語での受容 / ロラード派異端 |
Outline of Research at the Start |
15世紀の神学者レジナルド・ピーコックは、カトリック教会の司教という正統信仰を擁護する立場から、多くの英語著作を記すことによって、14世紀末からカトリック教会を悩ませてきたウィクリフ派異端者たちを説得しようと試みた。しかし、さまざまな理由によりピーコック自身が教会により異端の宣告を受けることになる。本研究においては、このピーコックの英語神学書が、語彙や文体のみならず、テーマの選択や論じ方に至るまで、ラテン語神学から多大な影響を受けており、ピーコックが先行するスコラ神学者たちの救済論や神の存在証明の手法を次世代に受け渡そうとした教育者であることを明らかにすることをめざす。
|
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度においては、2022年度に引き続き、神学者レジナルド・ピーコックの神学体系について、彼の先駆者であるスコラ哲学者の影響の観点から研究した。2023年8月15日から26日にかけて、イギリスのケンブリッジ大学図書館とロンドン大英図書館で資料収集をおこなった。このことにより、日本では入手できない一次資料と二次資料を参照することができたので、現在の研究プロジェクトを推し進めるにあたって非常に有益であった。 目下とくに注目しているのは、ピーコックがいくつかの著作で強調している「ありそうな」(probable, likely) 証拠、「ありそうな」信仰という考え方である。「理性の判断」(doom of reason) を重んじるピーコックは、いわゆる三段論法 (syllogism) を徹頭徹尾行使することによって、神に関する事柄や信仰の諸問題について「確実な」(certain, demonstrative) やり方で考察を進めようとする。ピーコックは、「前提1と前提2があり、これらは確実である。それゆえ、この二つの前提から結論が帰結する」という論証のスタイルを常にとる。 しかし実際には前提が望むような確実さでは得られないことも多い。ピーコックもこのことに気づいており、『聖職者への過度の非難に反論して』や『信仰の書』などの著作を注意深く読むと、ピーコックは三段論法をかなりの大らかさで使用していることがわかる。2022年に日本中世英語英文学会で行った発表において、ピーコックは人間に与えられた理性を使って神の理解に至ることができると説いていることについて扱った。この点はピーコックがトマス・アクィナスなどの先駆者から引き継いた議論手法である。2023年度はこれをさらに発展させ、ピーコックは理性によってどの程度の理解まで「ありそうだ」と考えていたのかについて明らかにすることを試みた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度に日本中世英語英文学会で発表した内容を推敲し、学術誌に研究成果を発表する予定であったが、推敲中にさらにいくつかの大きな問題に遭遇して扱うテーマが増えたため、口頭発表内容を論文の形にまとめることができていない。このため、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。 もっとも、ピーコックの神学がいかに先行するラテン語神学・哲学に負うところが大きいかという本プロジェクトの主題に具体例で肉付けをするという作業はゆっくりとではあるが進んでいる。ピーコックが理性や信仰、また神の恩寵や自由意志などについて論じている箇所は膨大であり、これらを一貫した枠組みのもとに考察してまとめ上げることは多大な時間を必要とする。ピーコックの神学体系について予定通り効率的に探求できていないのもこのためである。 また、2022年度から2023年度にかけて取り組んだ「ピーコック神学におけるありそうな神」というテーマについては、プロジェクト開始時には重要であると認識していなかったために、当初は脱線であるかと思われた。しかし実は、このテーマはピーコックの神学を理解する上で不可欠であることが徐々に分かってきた。このような、プロジェクト考案時に想定もしていなかった副産物のテーマを発見して掘り下げることができたことは、2022年度と2023年度の研究において肯定的に評価できる点であると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度以降の研究の進め方については、2022年度から2023年度にかけて取り組んできた、「ピーコック神学におけるありそうな神」というテーマに一つの区切りをつけることをまず第一の目標としたい。その意味で、2022年度に日本中世英語英文学会での発表 (‘Reginald Pecock’s Probable and Likely God’) や、2024年度に日本英文学会でおこなった発表 (「神学者レジナルド・ピーコックと語りの可能性」) などを、学術誌に発表することが喫緊の課題であるといえよう。 また、この「ありそうな神」という概念を中心の一つとするピーコックの神学を、同時代のヨーロッパの文化潮流の中に位置付けることも忘れないようにしたい。ピーコックは人間の理性によって理解可能な神の概念を提示するにあたって、人間という有限な存在と神という無限な存在が実は段階的に繋がっている可能性を示唆している。このことは、ほぼ同じ時期に活躍したドイツの神学者ニコラス・クザーヌスが『学識ある無知について』などで展開した神の概念に近い。しかし、クザーヌスがイエスという神であり人である「中間者」を有限者と無限者の間に置いたのに対し、ピーコック神学はそのような人間でありながら人間を超えた中間項の存在を必要としていない。ピーコックはより「近代的」なのだろうか?この点については、今後さらに掘り下げる必要があるだろう。 以上のような研究を進めると同時に、ピーコックについてのモノグラフも準備していきたい。ピーコックについての著作はこれまでのところ日本語では出版されていないので、2025年度末にプロジェクトが終了するまでには、プロジェクト期間中に研究した内容についてまとめたモノグラフを脱稿したいと考えている。
|
Report
(3 results)
Research Products
(3 results)