Project/Area Number |
21K00385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
金井 嘉彦 一橋大学, 大学院法学研究科, 特任教授 (60169539)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 宗教モダニズム / ジェイムズ・ジョイス / 『若き日の芸術家の肖像』 / トマス・アクィナス / ネオトーミズム / ジョージ・ティレル / シュトラウス / ルナン / イエス伝 / イエス小説 / ラショナリズム / 聖書解釈学 / モダニズム / 聖職者小説 / ジョージ・ムア |
Outline of Research at the Start |
20世紀初頭の文学におけるモダニズムは有名だが、モダニズム研究者でもその直前に起こった、同じモダニズムの名で呼ばれる、宗教界を揺るがした革命的な運動にまで踏み込む者は多くない。宗教モダニズムと呼ばれるこの運動は、19世紀の間に蓄積された知の集積のもとにキリスト教、とりわけカトリックのあり方に大きな変容を迫った。それは聖書のあり方、教会のあり方に根本から疑義を提示し、従来と全く異なった教会の有り様を提案した。本研究はこれまで焦点の当てられることのなかった宗教モダニズムと文学モダニズムの関係を考察し、宗教モダニズムが文学モダニズムに流れ込む様をジョイスの作品を中心として明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
19世紀を通じて科学・哲学・歴史学、文献学の発展により、世界の見え方が大きく変化していったのに対して、キリスト教、とりわけカトリックは、伝統に固執し、それらの変化への対応が遅れていた。それは19世紀末には看過できない相克へと発展し、宗教モダニズムと呼ばれる改革運動を生んだ。 時を同じくして活躍したのが、アイルランドの作家ジェイムス・ジョイスである。1882年にカトリックの家に生まれ、イエズス会運営の初等・中等・高等教育機関で教育を受けた彼であったが、彼がそこで身につけたのは、教会への反発であった。 2022年度は、教会に対し「公然と戦い」を挑んだ彼のその宗教的反発が、どのように宗教モダニズムと関わるかを検討した。作品としては、彼の半生を描いた自伝的小説『若き日の芸術家の肖像』を中心にとりあげた。具体的には、教会からの離反、小説家としての独り立ち、ジョイスの美学論が有名な同作品におけるトマス・アクィナスの位置づけに注目をした。というのも、アクィナスは教皇レオ13世によってカトリック教会が依拠すべき神学者と称揚された人物で、そのアクィナスをジョイスが美学論に〈応用〉する身振りが、彼の教会への態度と不整合を来す矛盾があるからである。当時のモダニズトの著作を調べてみて判明したことは、確かに教皇はアクィナスを教会公式の神学者としたが、イエズス会内ではその体制を換骨奪胎しようする動きがあったことであり、またアクィナスが中世において現代のモダニズトと同じ役割を果たしていたと見る見方を、当時のモダニストが提示していたことである。これをもってジョイスはアクィナスを批判の刃を突き付ける道具として用いていたこと、その権威を用いて自身の美学論を展開していたことを「アクィナスに刃を仕込む〈応用〉」『ガラス越しに見るジョイス』(言叢社、2022)、19-41頁において論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクィナスがローマ教会御用達の神学者であることはよく知られたことであるが、そのような理解の下で、ジョイスが『若き日の芸術家の肖像』の美学論に「〈応用〉アクィナス学」と称してアクィナスを用いていたことを考えるならば、ジョイスの宗教的態度と合わない矛盾が浮上してくるが、そこに宗教モダニズムという歴史的観点を入れることによって、ジョイスがそのような仕掛けを施したことの意味が鮮明になった意義は大きい。 また20世紀を代表する作家ジェイムズ・ジョイスのモダニズムが、宗教モダニズムと重なる地平を示し得た意義は、モダニズムと宗教モダニズムとの関係からしても大きい。 この知見を「アクィナスに刃を仕込む〈応用〉」『ガラス越しに見るジョイス』(言叢社、2022)19-41頁にまとめることができた。またこの間に得られた知見を活かし、ジョイス作品とイエズス会士の関係を扱ったMichael Mayo, James Joyce and the Jesuits (Cambridge UP, 2020)の書評を、日本ジェイムズ・ジョイス協会学会誌Joycean Japan, No.33, pp.56-57に掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
宗教モダニズムという、キリスト教の根幹をゆさぶる意味を持った運動は、当時の人々の宗教観のみならず、その上に立つ世界観にも大きな影響を与えたと考えられる。今後の研究としては宗教モダニズムという形で提起された問題が、文学・芸術の分野とどのように関わり・呼応するのかを、範囲をより広げて見ていきたい。具体的には2023年度は、検討対象をジョイス以外の、いわゆるマイナーな作品にまで広げ、宗教モダニズムと文学との関係をより深く、広く見ていきたい。
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Report
(2 results)
Research Products
(4 results)