戦間期英国小説におけるセクシュアリティ表象と「クローゼット」の力学を読み解く
Project/Area Number |
21K00399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
長島 佐恵子 中央大学, 法学部, 教授 (90439555)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 戦間期英国小説 / クィア・リーディング / レズビアン / バイセクシュアリティ表象 / セクシュアリティ / クローゼット / レズビアン文学 / シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー / 英国小説 / ジェンダー / クィア・スタディーズ / 戦間期 / 同性愛 / クィア批評 |
Outline of Research at the Start |
英国で同性愛者の権利獲得運動が本格化したのは1950年代だが、そこに至る前に、20世紀初頭の「無知と恐怖」から戦間期にかけての「熟知と軽蔑」へ(E.M.フォースター)という変容があった。本研究は、イヴ・セジウィックが世紀転換期の小説を分析して提起した「クローゼットの問題系」、つまり文学作品と社会規範が同性愛をめぐる知・無知の権力構造において共犯関係にあったという指摘に基づき、「熟知と軽蔑」の時代にかかる戦間期小説ではセクシュアリティ表象がいかなるクローゼットを形作り、それが戦後の運動とどのように重なり・ずれるのかを読み解く。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、イギリスの戦間期小説におけるバイセクシュアリティ表象の読解とクローゼット概念の関連および、20世紀後半以降のセクシュアリティの理論化におけるレズビアニズムやバイセクシュアリティの可視・不可視という問題について、国内での資料収集および文献の読解を継続した。
具体的な進捗としては、まず前者については、レズビアン研究およびバイセクシュアリティに関する理論的研究を踏まえて、エリザベス・ボウエンの初期短編小説の読解を進めた。クローズドな研究会に参加して具体的な作品を紹介し、文学や映画研究、歴史研究およびクィア・スタディーズを専門としている他の研究者から、さまざまなコメントをもらうことができた。年度内に正式な成果発表につなげるところまでは至らなかったが、次年度の国際学会での発表に向けた準備ができた。後者については、当初の研究計画からは修正となるが、2000年代のクィア批評における重要文献の一つであるAnn CvetkovichのAn Archive of Feelingsの翻訳に携わった。従来見過ごされがちであったレズビアンの公的文化に焦点を当てて文化表象の政治性を読み解く本書は、セジウィックのクローゼット論への応答といえる部分もあり、公的/私的領域と可視/不可視の問題から文化表象に取り組むという点で、戦間期小説の批評的読解にも資する文献である。共訳者との議論からも、今後の文献収集とそれを踏まえた作品読解についての示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本務校のキャンパス移転により教務等の業務量が著しく増加し、2023年度も英国に渡航して歴史史料の調査をすることが叶わなかったため、すでに理論的研究の方に方向性をシフトし始めていたが、その方向で研究を継続することとした。それに従って、文学テクストの読解においても批評的枠組みを修正する必要があり、また新しい理論的文献にも取り組むことになったため、年度内での研究成果発表まで至らず、進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2023年度までの研究期間を予定していたが、一年間延期して2024年度までの実施とした。2024年度は、前年度に進めた研究の成果発表をしていく予定である。具体的には、エリザベス・ボウエンの作品をバイセクシュアル・ナラティブとして読み、それをクローゼット概念と照らす批評実践を、IASIL Conference 2024において発表する。また、批評理論の文献翻訳や、理論的文献から照らした20世紀前半の文学テクストにおけるバイセクシュアリティの批評的読解を、他領域の研究者とも意見交換をする形で学会発表することを目指す。
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Report
(3 results)
Research Products
(2 results)