A phenomenological approaches to the study of Shakespeare performances: nontraditional casting and an audience's "lived experience"
Project/Area Number |
21K00401
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
阪本 久美子 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50319240)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | シェイクスピア上演 / 現象学 / ジェンダー / フェミニズム / 観客研究 / 異性配役 / 受容理論 / 配役 / ダブリング |
Outline of Research at the Start |
本研究では、上演における身体、上演のメカニズムや登場人物、役者、観客の関係を探る上で、特にメルロ=ポンティの現象学に理論的支柱を求める。上演における物質的な環境での瞬時の知覚を理解するために、伝統的なミメシスの概念に則った表象の研究方法とは異なった、上演の現象学的方法論を用いた検証を行う。その際に、異性配役などの「特殊な」配役(特殊な身体)を含む上演やダブリング(身体の共有)を検証することにより、現象学で言われる「生きられた経験」としての観劇のメカニズムを解明したい。同時に、現象学的方法論のシェイクスピア上演研究への有用性を探る。
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Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目を迎えて、現象学的アプローチをシェイクスピアの上演研究に利用するための方法論の確立および実際の検証を進めることを目指した。国内外での上演および上演録画や海外の上演のストリーミング映像の視聴をさらに実施した。 特殊な配役への現象学的アプローチは、日本英文学会第94回全国大会シンポジア「シェイクスピアとフェミニズム的受容」の登壇者として「ブルータスは高潔の士か?オールフィメイル上演とエンパワーメント」と題した口頭発表に生かされた。 研究初年度より継続していた日本文学者との共同執筆作業のおかげで、日本の文化、歴史、文学と、現代日本におけるシェイクスピア上演について、サブカルチャーの影響を踏まえた上で、現象学の理論を利用した検証への礎が築けた。成果として、集英社インターナショナル新書『異性装:歴史の中の性の越境者たち』では、「シェイクスピアのオールメイル上演の愉しみ方」と題した一章を執筆した。一般書であるため、現象学という名称や専門用語を用いずに、現象学的な上演の受容を論じた。 2月にはイギリスのロンドンおよびストラットフォード・オン・エイボンにおいて上演視察を行った。特に近年、性別や人種のみでなく、障害の有無についても制限を設けない「特殊な配役」の宝庫となったイギリスでの上演を実際に視察できたことは大きな成果であった。 その他の研究活動では、国際プロジェクトAsian Shakespeare Intercultural Archive (A|S|I|A)ジェンダー・エディッションのリード・エディターとして、劇団スタジオライフによる『十二夜』の注釈入れ作業を、他の2名のエディター(イギリス人およびシンガポール人)と共に実施しているが、ここでも現象学的なアプローチからの議論を行った。また、スタジオライフの脚本家兼演出家である倉田淳氏へのインタビューを実現させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目である令和4年度には、下記の通り、研究成果を公表することができた。 1)5月21日に実施された日本英文学会第94回全国大会シンポジア「シェイクスピアとフェミニズム的受容」において、「ブルータスは高潔の士か?オールフィメイル上演とエンパワーメント」と題した口頭発表を行ったが、この中で女性の役者が男性の役を演じることにより、現象学的なエンパシーによりエンパワーメントを得ることになることを論じた。 2)集英社インターナショナル新書『異性装:歴史の中の性の越境者たち』の一章である、「シェイクスピアのオールメイル上演の愉しみ方」と題した論考では、シェイクスピア劇の中でもジェンダーという面で問題が多い『じゃじゃ馬馴らし』という芝居を、オールメイル上演することにより生じる受容の変化を検証した。 また、海外出張が可能となった本年中には、イギリスのロンドンおよびストラットフォードに出張し、劇場での視察およびアーカイブでの上演資料閲覧を行うことができた。 以上の通り、研究初年度には行えなかったイギリスへの出張が実施できたこと、および現象学的な方法論を用いた論文を発表(口頭発表および出版)できたことから、当該研究はおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度前半は、以下の2つの論文を完成させる。①国際プロジェクトAsian Shakespeare Intercultural Archive (A|S|I|A)ジェンダー・エディッションに含まれる、劇団スタジオライフ の『十二夜』のcritical introductionの執筆。②7月末にリバプール大学にて開催されるイギリスのBritish Shakespeare Associationの本年度学会にて、特殊配役を含んだ上演を日英上演の比較という視点から現象学的に分析する研究発表を行う。 渡英の際には、夏のみに上演を行うShakespeare’s Globe におけるシェイクスピア作品の上演や、ロンドンにおける主要上演を視察、また近年の上演作品の記録映像を劇場アーカイブなどで視聴する。 9月には、毎年女子学生のみによるシェイクスピア上演を行っている、清泉女子大学文学部英語英文学科にて、オールフィメイル上演の意義に関する講演を依頼されているが、男性登場人物役を演じる女子学生に対して、特殊な配役を演じる体験についてアンケートやインタビュー調査を実施する予定だ。 年度後半には、予定通り、日本文化を反映した上演環境について、イギリスにおける上演との比較を現象学的に行う。検証の結果を、口頭発表および論文執筆に繋げる予定である。そのために、年度中を通して、日本の伝統芸能とサブカルチャーの特に視覚的な側面に注目した調査を行い、そこから日本独特の上演環境によって影響を受けた観客の受容に考察を向けたい。 昨今の燃料サーチャージの高騰により、年度末に国際学会などに参加することは難しそうであるが、オンライン開催の学会も増えているため、研究成果の発表に利用したいと考えている。
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Report
(2 results)
Research Products
(7 results)