Project/Area Number |
21K00454
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02050:Literature in general-related
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北田 信 大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (60508513)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2021: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
|
Keywords | ウルドゥー語 / デカン / ビージャープル / マスナヴィー / スーフィー物語 / ダカニー・ウルドゥー語 / インド細密画 / ダカニー・ウルドゥー / アワド / スーフィー / 新期インド・アーリア語 / アワディー語 / 彩色挿絵写本 / 詩人とパトロン / 文芸論 / ムスリム文化 / ヌスラティー |
Outline of Research at the Start |
ウルドゥー語は、南アジア地域に暮らすムスリムの代表的文化語である。世界的大言語・ウルドゥー語による言語文化・文学は、中央デリーに先んじて周縁部デカン地方のムスリム諸王朝で始まり、15世紀中頃から17世紀末まで約250年もの長い前史を持つ。本研究では、従来のウルドゥー文学史研究が軽視してきたデカンのウルドゥー語文学を扱い、ウルドゥー文学史初期の空白を埋めることを目的とする。
|
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、ダカニー・ウルドゥー語詩人ヌスラティーの物語詩(マスナヴィー)『愛の花園』Gulshan-e-'Ishqの解読・英訳作業を、研究協力者Richard Williams博士(英国SOAS講師)と共同で行った。2023年4月にWilliams博士を日本に招聘し、研究打ち合わせと研究発表を行った。12月にシカゴ大学教授Thibaut d'Hubert博士とZoe High (M.A.)を阪大に招聘し、ビージャープル新芸術流派の創始者Ibrahim 'Adil Shah IIの著作『新奇の書あるいは九つの美的情感の書』Kitab-e-Naurasに関する研究発表をして頂いた。2024年2月にダカニー・ウルドゥー語文学の拠点の一つで、詩人スィラージュの故郷オウランガーバードで現地調査を行った。 ダカニー・ウルドゥー語文学の研究は従来なおざりにされてきたが、ここ数年俄かに欧米の研究者の間で関心が高まりつつある。その多くはデカンで制作された豪華な彩色写本を調査する美術史家であるが、ダカニー・ウルドゥー語で書かれた原文テキストを読み文献学的に研究しようとする若手研究者も現れ始めた。そのようなパイオニア的研究に携わる研究者達と交流・意見交換を行った。 本研究ではフィラデルフィア美術館およびフィラデルフィア自由図書館所蔵の二写本を用いている。両者は共に細密挿絵を多数含み、その美術的価値は非常に高いが、従来の研究は、ダカニー・ウルドゥー語原文テキストではなく、詩人マンジャンが同じ物語の粗筋を扱って東部ヒンディー語(アワディー語)で著した別の作品『マドゥマーラティー』に基づいて行われていた。本研究では、インド美術史に詳しいWilliams博士の協力を得て、細密挿絵についても、より詳細な分析を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
毎週Richard Williams博士とオンラインで研究会を実施し、『愛の花園』の翻訳作業は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
『愛の花園』の英訳作業およびテキスト分析を続行する。研究していく中で、ビージャープル王アリー一世(ヌスラティーの庇護者アリー二世の祖父)が著した百科全書的占星術書『諸学の星々』Nujum-e-'Ulumと『愛の花園』との内容に共通点が見られることが判明した。さらにイスラーム圏に広く見られる博学的旅行記・冒険記ジャンル(Aja'ib文学)が『愛の花園』の記述に影響を及ぼしている可能性も出てきた。先述のとおり従来、『愛の花園』写本の挿絵群の研究は、美術史家達が、ダカニー語原文テキストを用いることなく行っていた。この点についても、テキストに基づいて、より詳細な図像学的分析をすることができそうである。 『愛の花園』という架空の恋愛冒険物語の他に、ヌスラティーは『アリー王記』'Alinamahという戦記を表しており、両作品の性格は対照的であり、同じ一人の詩人の二つの相反する側面が観察できる。またヌスラティーの庇護者であったアリー・アーディル・シャー二世は自身も優れたダカニー語詩人であり、詩集を著している。詩人と王には親しい交友があり、両者の語彙・文体を比較することには一定の意義があろう。またヌスラティーは同時代の詩人ガッヴァースィーに言及し、自らのライヴァルと見なしていたようである。ガッヴァースィーと比較して、ヌスラティーがダカニー語詩にどのような革新を加えたかも興味深いテーマである。このようにヌスラティーを周辺の詩人達の作品との比較し、彼を取り巻く時代・社会の大きな流れの中に位置づけることを目指す。
|